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俺の名はシャルル・フェニックス

作者:南の星
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不束者と不死鳥

――数日後。

授業が終わると真っ先に人気の洋菓子屋で一番人気のシュークリームを8つ買って帰宅。

シュークリームを冷蔵庫へ入れ、教材の入ったバックを部屋に放り投げて、ちゃちゃっとシャワーを浴びて身を清め、スーツへと着替える。

スーツではなく、制服や燕尾服やタキシードといった服にするという手段もあったのだが……

制服は学生の正装だが、あくまでも"学生の"だ。

今から話にいく内容は誠菜の今後の事――重く言ってしまえば、命――がかかっているため、学生の領分を越えているから、没。

タキシードや燕尾服は貴族の社交界用にサーゼクスさんに買わされたのだが、堅苦しすぎて先方が引きかねないため却下。

それに俺自身スーツを着馴れてるってのもある。

最近とか前世とかでな。

なので、スーツということになった。

身嗜みを整えて、準備完了。

暫し待っていると、タクシーが到着した。

年齢制限で車には乗れないし、自転車で行くのも格好悪いし、歩きで行くのも嫌だ。

だからといって、家で唯一車の免許を持ってる黒歌に送ってもらうわけにはいかない。

だって女の家に大切な話をしに行くのに自分の女に送ってもらうって、おかしな話だろ?

送ってもらう黒歌も先方もいい気分にはならない。

いくら何股もかけてるからといっても、そこら辺の礼儀は弁えていたいしな。

さて、今回の兵藤家への訪問。

何の為に行くかと言うと、誠菜を悪魔に転生させる赦しを得るためである。

誠菜も、俺も未成年。

つまりは親に庇護されている年齢だ。

誠菜は両親に、俺と俺の眷属の場合――黒歌は成年しているため除外――はサーゼクスさんになる。

要するに、本当に転生させて良いのか訊きに行くというわけだ。

悪魔等の裏の世界を教えることとなるが、仕方がないだろう。

何も知らずに娘が命の駆け引きをしてるかもしれないより増しだろうしな。

さて、どうなることやら……














結論から言うと、許可された。


顔に3発殴られたけど……

「ご、ごめ、んなさいっ!と父さんが!」

隣で歩く誠菜が謝ってくる。

現在、転生も兵藤両親の前で済ませ、神器を制御できるようにするための合宿のために俺の家へと歩いて帰ってる途中だ。

気がえ等の荷物はしっかりと俺が重いから誠菜の代わりに持ってる。

「謝る必要はねぇよ。
親として、娘を奪ってく悪い男をぶん殴っても当たり前何だろう。
いい親じゃないか、ちゃんとお前のこと思ってくれてんだしさ」

苦笑いしつつ、少し顔を俯かせている誠菜の頭を撫でる。

「……で……でも…………」

「ま、世間一般、というか普通に考えたら俺は悪い男だぜ?
何人も女を侍らす屑野郎だ」

それに最近ヒモになりつつあるしな。

束の。

つーか、領地経営自体も他人任せの時点でヒモか。

俺が働いて稼いだ金なんて一円足りともないな。

で、でもちゃんと仕事してるんだからなっ!?

はぐれ悪魔討伐やら、はぐれ悪魔祓い狩りやら、はぐれ魔法使い狩りやら。

この前は呪われた古代遺跡探索をしたしな。

あ、いや、これは仕事じゃねぇや。

理子と束と黒歌に拉致られて無理矢理連れてかれたんだった……

ヒッデェよな。朝起きたらよくわからん遺跡の真ん前だったんだぜ?

夜中のうちに黒歌の仙術と妖術、束の薬(と書いて毒薬と読む)でちょっとやそっとじゃ起きねぇようにさせられて連れていかれたんだぜ?

しかも不死鳥の不死性を利用した罠避けとして。

お前ら主をなんだと思ってんだっての。

まぁ、眷属であるだけまだ良いか。

本来なら誰かの下につくような奴じゃねぇしな。

束とか束とか束とか。

黒歌や理子だって自由気ままな自由人気質だしなぁ……?

一ヶ所にいるような奴等じゃねぇよ。

って考えると色んな義理を盾に押さえつけてるってことになるのか?

俺って。

流石にネガティブすぎるか……

ああ、クソ。

今の俺絶対おかしい……

「……せん……ぱい……?」

ほら、誠菜も心配そうにこっちをみてるじゃねぇか。

「いや、まぁ……な。
親って格好いいんだなって思ってな」

悪魔の、不死鳥の力を見せた後で誠菜の父親は俺をぶん殴ってきたんだ。

今までの常識外の力を持つ俺を。

娘のために。

そう考えるとさ。

偉大だなって思うんだ。

「俺、親と不仲だからさ。
叱られたことすらないくらいな」

殺意を向けられたことはあるんだけどなぁ……

俺としては聞き流してもらえばよかったんだが、心優しい誠菜がそんなこと出きるはずもなく、悲しそうに俯いてしまった。

ああ、もう!
本当に今の俺はどうかしてる。

少し考えりゃあ分かるじゃねぇか!

いつも通りにいかないことに苛ついて頭をガシガシと掻く。

「ああ、すまん。ほんと。
無神経だった。
まぁ、アレだ。親父さんとお袋さん大切にしろよ?
良い人たちなんだからさ」

「は、はい。私の……大切な……家族、ですから」

照れながらもはっきりと言う。

そんな誠菜を見てて俺は今の不調の原因が少しだけ分かったかもしれない。

羨ましかったんだ。

俺が手に入れられなかったモノを持ってるから。

本当に俺はどうしようもねぇ男だよなぁ。

こんな歳になってまだ親離れができてないんだから。

「んじゃ、増えるな。家族。
形式的にとか対外的には眷属だけど、俺にとっちゃあ家族みたいなモンだしな」

異端者たちが集まってるようなモンだけどな。

「か、かぞ、かか家族!?」

ぷしゅーっと湯気が出てきそうなほど顔を真っ赤にする誠菜。

ったく、何を想像したんだか。

恥ずかしがり屋の癖にムッツリだからなぁ。

本当に加虐心がそそられるというかなんというか。

まぁ、今は大概にしとくけどさ。

野外だからな。

誠菜の可愛い状態が他の男に見られるのはちょっと嫌だ。

俺は見せびらかすより独占したいからな。

「ほら、赤くなってないで、我が家だぞ。
っても、何回か遊びに来てるから分かるか」

「はは、ははい!」

話ながらも随分と歩いたので、到着だ。

庭を抜け、玄関の前で一度立ち止まる。

「一応言っとくけど死ぬなよ?」

「…………え?」

一応注意はしておき、ドアを開けると同時に誠菜が俺の前に来るように立ち位置をかえる。

さあ、今回はどんなことが起きるのか……?

ちょっとワクワクしてきたぜ。


 
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