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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico11ザンクト・ヒルデ魔法学院~School tour~

†††Sideはやて†††

「トリシュちゃん。ホンマにルシル君のこと、好きなん・・・?」

ルシル君との婚約権を賭けた争奪戦なんてとんでもない状況になってしもうた。その原因は、トリシュちゃんがルシル君にプロポーズしたから。そんで今、わたしはリインとユニゾンして新しく出来てしもうた恋のライバル、トリシュちゃんと対峙中や。

「一目惚れです。以前からルシル様のことを慕っていたイリスとハヤテには申し訳ないですけど・・・」

トリシュちゃんが大きな弓、“イゾルデ”をわたしに向けて魔力矢を魔力弦に番えて、「私も参戦させていただきます」サファイアブルーに光り輝く魔力矢の矢羽根から指を放した。

――とぐろ巻く夢幻の拘束蛇――

「速――っ!」

放たれた矢は床をスレスレで飛んで、わたしがどうこうする前にその矢が螺旋を描きながらわたしの周りをグルグル回って、「ぅぐ・・・!」わたしを拘束した。すぐさま「リイン! バインドの解析!」をお願いする。

『はいです、マイスターはやて! 少し待ってくださいです!』

トリシュちゃんは追撃せずに待ってくれてる。きっとこれは「まずは挨拶です、ハヤテ」やって思うたわ。初撃から攻撃魔法やったら負けてた。バインド解析、そんで解除、それが終わるまで戦術を考える。

(実力では圧倒的に負けてるんは解ってる。それをどうやってひっくり返すか・・・)

弓使いイコール弓技だけやない。固有の武器らしない突飛な技を使われることを警戒する。ルシル君の教えや。弓技ももちろん警戒や。突飛な技を使われる前に、トリシュちゃんを討つ。

『これは・・・! マイスターはやて! バインドではないです! これは・・・幻術です!』

「幻術!?・・・ってことは、幻なんか、これ・・・!」

リインからの報告に驚く。わたしを拘束してるバインドが、実態のあらへん幻やなんて。トリシュちゃんを見ると、「お気づきです? そうです、幻術ですよ、そのバインド。動こうと思えば、動けますよ」そう言って微笑んだ。リインも『はいです。動けないのは精神的な問題ですから』そう言うた。

「(幻、これは幻・・・幻なんや)うあああああああ!」

声を上げて体に力を込める。すると思ったより簡単に体の自由を取り戻せた。すると「さすがは夜天の主。正直、もうちょっと苦労すると思ったんですけど」トリシュちゃんが目を丸くした。あれ、ホンマに驚かれてる。ひょっとして結構な幻術やったんやろか。とにかく「リイン、反撃や!」“夜天の書”を開いて、“シュベルトクロイツ”をトリシュちゃんに向ける。

『はいです! サポートは任せてください、しっかりお支えします!』

「任せるよ! ブリューナク!」

短剣状の速射系射撃魔法を連射。直線軌道やなくて僅かな曲線軌道でトリシュちゃんに殺到する。続けて「バルムンク!」剣状射撃魔法を、ブリューナクの着弾時に巻き起こった爆発を包囲する形で展開、そんですぐさま発射する。立ち上る煙へとバルムンクが突入した瞬間・・・

『上です!』

「うんっ!」

トリシュちゃんが直上に跳んだ。その体勢はすでに魔力矢の発射態勢。高低差を利用されたら勝てるもんも勝てへん。攻撃される前に空へ上がるために飛行魔法準備。そんで膝を曲げたとほぼ同時、「行ってください!」トリシュちゃんが矢を射って、わたしが跳び上がった直後に地面に着弾。

――突き上がる狂乱の山脈――

直径20mほどのベルカ魔法陣が広がったと思えば、そっからドリル状の岩石による剣山が発生した。1つの岩石がわたしの居る高度にまで到達。それをバレルロールで回避した時、『マイスターはやて! トリシュが矢の発射態勢に入りましたです!』リインから警告。剣山の先端高度から脱出。と、トリシュちゃんがある1本の岩山の先端に立って、わたしに向けて弓を構えてた。

「クラウ・・・!」

――翔け抜けし勇猛なる光条――

「ソラス!」

咄嗟に放つんは砲撃クラウ・ソラス。トリシュちゃんも矢を射るとソレは砲撃となって、わたしの砲撃と真っ向から激突。爆発が起きる。狙い撃ちされへんようにすぐにその場から離れる。

――群れ成す煌きの啄み――

直後、煙の向こう側から光の矢が38本と突き抜けて来た。誘導操作系やないおかげで、その脅威をまともに受けずに済んだ。

「リイン!」

『はいです!』

――ハウリングスフィア――

魔力球6基(ユニゾン中やから出来る数や)を配置。晴れ始めた煙の中にトリシュちゃんの姿を確認した。トリシュちゃんもわたしに気付いたようで、わたしに向けて弓を構えて、魔力矢を創り出して弦に構えようとした。
それこそわたしの狙ってたチャンスや。矢を創って弦に番えるまでの短い間、攻撃は出来ひんし防御も即座に発動できひんはず。回避の可能性もあるけど、それを妨げるための多弾砲撃や。届け、わたしの一撃。

「『ナイトメアハウルッ!!』」

“シュベルトクロイツ”からの1本、トリシュちゃんを包囲するハウリングスフィア6基から6本、計7本の砲撃がトリシュちゃんに向かう。決まった、って思うた。そやけど≪Explosion≫“イゾルデ”の握りと胴の付け根が上下にスライドして、カートリッジシステムが露わになった。そんで2発のカートリッジをロード。

「中伝・紫電一閃!」

「『炎熱付加!?』」

“イゾルデ”の剣のような胴部分が蒼炎に包まれて、わたしとリインの砲撃が全弾斬り裂かれて対処されてしもうた。今の魔法は間違いなく、シグナムの紫電一閃や。トリシュちゃんは続けて「中伝・二剣飛翔刃!」“イゾルデ”が2本の双剣に分離。刃部分に魔力付加した状態で投げ飛ばしてきた。

『マイスターはやて!』

「っ・・・!」

ブーメランのように向かって来る双剣。警戒はしてた。弓使いらしくない技。“イゾルデ”の形状から、剣への変形、斬撃攻撃、それくらいはしてくるって思うてた。そやけどブーメランのように剣を飛ばして来るなんてさすがに想定外や。

(フェイトちゃんのハーケンセイバーみたいなこの感じ・・・!)

おそらくやけど防御系じゃ突破される。それほどのプレッシャーが発せられてる。そやから回避を取るんやけど、「追いつかれる・・・!?」わたしの移動速度より速い双剣が、「しまっ・・・!」“シュベルトクロイツ”と“夜天の書” が弾き飛ばされてもうた。

――中伝・フィアーテ――

「ごめんなさい、ハヤテ。私の・・・勝ちです」

ヴィータの高速移動魔法を使ってわたしの懐にまで入り込んで来たトリシュちゃん。いやや。負けたない。双剣がトリシュちゃんの手元に戻って、カートリッジがロード。刃に付加されるんは蒼い光と炎。

『マイス――はやてちゃん!』

――パンツァーシルト――

「中伝・紫電十字閃!」

炎を纏う方が縦一線に振り下ろされて、リインの張ってくれたシールドは真っ二つにされてもうた。そんで続けて光を纏う方がわたしに向かって振り下ろされて・・・

「負けたない!!・・・って、あれ・・・?」

手を伸ばした先、そこはベッドの天蓋の内側。そうか、「夢、か・・・」って気付く。伸ばして手を曲げて自分の目を隠す。そんで溜息1回。負けた。完璧に、圧倒的に、どうしようもないほどに。婚約権についてはルシル君が一喝することで白紙に戻った。そやけどもし、もし・・・

「アカンな、弱気になってしもてる」

わたしの両脇で眠ってるアインスとリインを起こさへんように気を付けながらベッド脇の車椅子へ。そんで用意された客室をこっそりと出る。そんで向かうのは「ルシル君・・・」に用意された客室や、だって今すぐ会いたいから。
時刻は午前6時ちょっと前。たぶんルシル君も眠ってると思うから「お邪魔しま~す」小声で挨拶しながら、ルシル君の部屋に入る。静かな部屋。聞こえて来るんはルシル君の寝息だけ。音が立たんように気を付けながら車椅子を進ませて、ベッドのすぐ側へ。

(相変わらずかわい――もとい綺麗な寝顔やなぁ)

想いは留まらず。車椅子からベッドに上って、ルシル君の隣に横になろうとした時、「っ!?」わたしは気付いた。わたしが上った方とは反対側の床に「シャルちゃんとトリシュちゃん・・・!?」がバインドでぐるぐる巻き――蓑虫みたいにされて転がされてた。その姿に呆けてると、「俺のバインドを解いたか、どっちか!」ガバッとルシル君が跳ね起きた。

「きゃあ!?」

そんでわたしをベッドに押し倒して覆い被さってきた。ルシル君はすぐに「って、はやて!?」わたしに気付くと、慌ててわたしの上から退いた。体を起こしてルシル君と、床に転がされてるシャルちゃんとトリシュちゃんを見る。
すると「この2人はな――・・・」ルシル君が説明してくれた。最初はシャルちゃんが押し掛けて来て、勝手にベッドに入ろうとした。そやからバインドで拘束して放置。次にトリシュちゃんとパーシヴァルさんがやって来た。

「――で、パーシヴァルさんはトリシュだけを置いて部屋を出、トリシュひとり俺のベッドに潜り込んでこようとした。だから拘束して放置した」

「なるほどな~」

溜息吐いてるルシル君に苦笑。そんでルシル君は「ほら、もう戻るんだ。アインスとリインが心配するぞ」わたしをお姫玉抱っこして車椅子に戻してくれた。わたしは「2人はどないするん?」って訊ねる。

「・・・いや。それぞれの部屋に・・・って、トリシュの部屋がどこにあるか知らないから、シャルの部屋にでも戻すさ」

そう言うたルシル君が大人の姿へと変身して、シャルちゃんとトリシュちゃんを両肩に抱え上げて部屋を出た。わたしも車椅子を押して続くと、「はやて」ルシル君に呼ばれた。そやから「ん?」って振り向く。

「おやすみ。良い夢を」

「っ。・・・うん、おやすみ。その・・・ルシル君も、良い夢を♪」

ルシル君と笑顔で別れたわたしは部屋に戻って、ぐっすり眠ってるリインと、「おかえりなさい、主はやて」起きて待ってくれてたアインスに「ただいま♪」微笑んで、ぬくぬくなベッドに入った。ホンマに良い夢が見れそうや。

†††Sideはやて⇒ルシリオン†††

朝を迎え、俺たちは朝の身支度を整えて食堂へ。大きな長テーブルには既に人数分の朝食が用意されていた。そして「おはようございます、皆様」シュテルンベルク家のメイド長、ディナスが出迎えてくれた。アンナの子孫で、彼女の遺伝子が強いようで浅葱色の髪、灰色の瞳はそのままだ。

「「おはようございますっ!」」

そしてもう2人。1人は、モニカの子孫であるニミュエ・クラウジウス。スタイルは抜群。オレンジ色のウェーブがかった長髪をおさげにし、青い瞳は柔和。もう1人は、ルファの子孫であるヴィヴィアン・オートクレール。金髪はボブカット。少し鋭い紫色の瞳。彼女2人もまた、モニカとルファにそっくりだ。
ヴィヴィアンとニミュエに「おはようございます」と挨拶を返し、引いてもらった椅子に腰かける。そしてディナスに作ってもらった朝食を、はやてたち女子組の話をBGMして美味しく頂いた。

「イリスや八神家は今日、どう過ごす予定なんだい?」

食後の一服をしているそんな中で、パーシヴァルからそんな質問が。もちろん「う~ん、特に決めてないですね~」この家に泊まることすら決まっていなかったから、予定も何も無い。はやてのそんな返答に「それは良かった」パーシヴァルが嬉しそうに笑った。

「良かったらザンクト=オルフェンを案内しようと思ってね。寝る前に色々とルートを考えてみたんだ。有名な観光地に、地元民しか知らない場所、などなどだ」

「ああーー! それ、わたしがはやて達だけじゃなくてなのは達とも一緒にやろうって思ってたのにぃーーー! ダメダメ、はんたーい!」

テーブルにバンッと両手を叩きつけて立ち上がったシャルが不満を漏らす。と、「旦那様。そもそも今日のスケジュールに空きはありません」ディナスが、パーシヴァルのスケジュールが表示された縦に長いモニターを展開した。すると「なんたることだ!」大げさに落ち込むパーシヴァル。

「よしっ!・・・でも、今日はホントどうしようか・・・? はやて達は何かしたい事とか、行ってみたいところとかない?」

「う~ん。・・・みんなはなんかあるか? ザンクト=オルフェンの名所案内以外で」

はやてからそう訊かれた俺たちだったが急に思いつくわけもなく、少し唸り声が続いた。そんな時、「トリシュタンお嬢様。そろそろ御登校の御用意を」ヴィヴィアンがそう告げた。トリシュは胸ポケットに入れていた懐中時計を取り出し、「そうですね。手伝ってください、ヴィヴィアン」と席を立った。

「え? トリシュちゃん、今日学校なん?」

「あ、はい。ごめんなさい、皆様。今日は平日ですので、登校日なんです」

ミッドチルダと地球では時差の影響もあって休日がズレているからな。パーシヴァルとトリシュが居ないとなると、いよいよ今日の予定はどうなるかって考え始めた時、「わたし達も一緒に行こう!」シャルがそんなことを言い出した。意味が解っていないはやてやトリシュ達が「はい?」と小首を傾げた。

「トリシュの通ってるザンクト・ヒルデ魔法学院を見学しようよ!」

「それはいいですね! 皆様を、私の友人に紹介したいですし! イリス、早速!」

「ヤー♪ 母様伝手に学院長に連絡を取ってもらうよ! 見学していいか?って♪ やっほぉ~~い!!」

シャルは「あ、母様ー? イリスでーす! ちょっとお願いが――」母親に通信を繋げながらものすごい勢いで食堂を出て行った。そして「それでは私は♪」トリシュがニヤリと何かを企んでいる笑みを浮かべて、俺とはやてとヴィータを見る。あぁ、シャルと同じだ。あの笑み、絶対に良からぬ事を考えている。

「あの、トリシュちゃん? その笑みはなんやろうな~~?」

「イリスは皆様の学院見学の許可を確実に取るでしょうから、私は皆様の服をご用意させてもらいます。学院の敷地内に居てもおかしくない格好になっていただかないと。そういうわけで・・・、ヴィヴィアン、ニミュエ」

「「合点です!」」

トリシュがパチンと指を鳴らすと、ヴィヴィアンとニミュエがにじり寄って来た。嫌だ。俺は、俺は、「絶対に着ないぞぉぉーーー!」食堂から逃げ出すために踵を返し、足に力を込める。だがそれより早く「許可もらったよ❤」シャルが戻って来て、俺の逃げ道を塞いだ。

「それは何よりです。さすがはフライハイト家です。St.ヒルデ魔法学院の学院長は六家の一角、アルファリオ家の現当主ですから、フライハイト家の現当主であるイリスのお母様のお願いをちゃんと聞いてくれましたね」

アルファリオ家。元“星騎士シュテルンリッター”の第十騎士、花の姫君チェルシー・グリート・アルファリオの一族か。いや、そんなことより逃げなければ。絶対に女子の制服を着せられる。

「まあね。で? ルシルはどこへ行こうというのかな?」

「どけ、シャル。俺は嫌なんだ。女子の制服を着るなんて! トリシュは言った。学院敷地内に居てもおかしくない服装に着替えてもらう、と。現在、学院に通っているのはトリシュだけだ。なら在るのは女子の制服! つまり・・・!」

女装、ということに。それに、何もここで着替えることもない。学院に到着後、男子の制服を貸してもらえることだって出来るはずだ。それを必死に訴える。すると「いやですよ、ルシル様。さすがに男の子に自分の制服を着せませんよ」顔を赤らめたトリシュがそう言って、俺に希望をくれた。

「万が一にも男の子に、ブラウスやスカートのサイズがスカスカなんて言われてしまうかと思ったら・・・私、恥ずかしさで死んでしまいます!」

「あー、それ、わたしも解るかも」

「う~ん、確かに男の子の、バスト・ウエスト・ヒップのどれか1つでも、これ、緩いんだけど、なんて言われた日には、言った奴を記憶無くすまでブチのめすかも」

「そうですよね。緩いということは、男の子より体が大きいということですから。それはつまり・・・」

「「「太っているという事!!」」」

はやてとシャルも同意したことで、彼女たちが俺に女装させた時の事を喋り始めた。はやてと俺が出会ってから初めての女装の時の話から始まり、シャルが自分の聖祥小の制服を俺に着せようと画策した事などなど。話を聴いていたトリシュは「まあ!」と驚きを見せていた。それはともかく。女装の危機は去ったことで、俺は笑顔を抑え切れない。

「ディナス。俺の制服は取って置いてあったっけ・・・?」

「おそらくですが。学院の生徒時の旦那様とルシリオン様の背丈も近しいと思いますので、きっと着られるかと」

「良し。ならば早速、ルシルに制服を」

「かしこまりました。ルシリオン様。こちらへどうぞ」

「あ、はい」

こうして俺たちは、St.ヒルデ魔法学院の制服を着たうえで、学院の見学へと向かうことになった。

†††Sideルシリオン⇒イリス†††

さぁ、やって参りました、我らが聖王教会の系列スクールの1つであるザンクト・ヒルデ魔法学院。わたしとはやては、トリシュと同じ女子の制服を着用中。わたし達と同じように登校途中の女子生徒から「ごきげんよう」挨拶されるからこちらも「ごきげんよう」挨拶返し。
そんで、ルシルは残念なことに男子の制服。絶対に女子の制服も似合うと思うのにさ。だけど、「女の子のなのに、どうして男子の制服を?」とか「男装女子。いいですね」とか「元の制服でも見てみたい」とか、ルシルを女子視する子らばっか。聖祥小のみんなは男の子って見分けてたのに。何が違うんだろ。

「ちくしょう。何がダメなんだよ・・・」

「ルシル君、心を強く持つんや」

「ルシル。その長い後ろ髪を切ってはどうだ?」

ガックリ肩を落とすルシルにフォローを入れるはやて、ルシルと同じ銀色に輝く長い後ろ髪を手に取って切る仕草をするアインス(外見からして制服は無理ってことで私服姿)。そしてリインは「わたしは、今の髪で良いと思うです」現状維持推し。

「ありがとう、リイン。でも切ろうかなぁ。これから暑くなってくるし」

「そうなると、ますますパーシヴァルやトリシュにそっくりになるね」

「どちらかと言いますと、私や兄様がルシル様に似ているんですよね。オーディン様の一族、セインテスト家の直系ですし」

トリシュが人差し指を顎に当てて苦笑する。なんて言うか「なんか不思議だよね~」わたしも苦笑。不思議な繋がりがあるよね、わたし達って。それからどこまでルシルの髪を切るのか話してると、「みなさんが見学の子たちですね。イリス」名前を呼ばれた。というか、この声は・・・

「おはようございます、イリス、トリシュタンさん。それと・・・そちらの4人ははじめましてですね。当学院にて講師を務めております、プラダマンテ・トラバントです」

「みんな、紹介するよ。プラダマンテは、聖王教会騎士団・銀薔薇騎士隊ズィルバーン・ローゼに所属する、剣騎士最強の称号シュベーアトパラディンを得てる騎士で隊長。そして教会シスターでもあるし、フライハイト家に連なる六家の一角、トラバント家の1人。さらにはわたしの剣の師匠なんだ」

イリュリア戦争時、オーディンから返されたというフライハイト家の家宝、オリジナル・“キルシュブリューテ”に宿るシャルロッテ様(精霊って括りらしい。本物はわたしの魂にいらっしゃるから)からは剣技や魔法の術式を教わり、プラダマンテからは精霊シャルロッテ様から精神世界で教わった技術を完成させるための仮想敵として鍛えてもらってた。

「今度はこっちを紹介するね。車椅子に乗ってる子が、八神はやて。んで、側に浮いてるのが、はやての融合騎のリインフォース・ツヴァイ。リインって呼んであげて。車椅子を押しているのがリインフォース・アインス。こっちはアインスって呼ぶこと。で、女の子っぽいけど男の子なのが、ルシリオン・セインテスト。みんな、わたしの大切な友達♪」

シグナムとヴィータ、シャマルとザフィーラは残念ながら急な仕事が入って本局へと戻っちゃったからね。本当ならヴィータにも制服を着せたかったんだけど。むぅ、残念なのだ。

「「「「よろしくお願いします!」」」」

お互いの紹介も終わって、他にも本局で同じ部署に所属してることや古代ベルカ式の使い手であったり、ルシルがセインテスト家直系であることも話す。プラダマンテは「やはり・・・」って興味深そうにルシルを眺めたあと微笑んだ。
それからわたし達は初等部の校舎へ向かいながら、プラダマンテから見学の際の諸注意を受ける。大前提として授業中は騒がない。休憩時間は生徒たちと親交を深めてもいい。けど、授業に遅刻させるようなことはしちゃいけない。講師からの許可があった場合は授業に参加することも可能。

「一緒に授業受けてもいいんですか?」

「はい、構いませんよ。生徒の中には管理局に勤めたい、という子たちも居るので。実際に局員であるイリス達の話を聴いて、見聞を広めるのも授業です」

ほとんど制限の無い見学になりそう。聖祥小とはまた違うSt.魔法学院の空気にわくわくしていると、「それではトリシュタンさんは自分の教室へ。イリスとはやてさん達はこちらへ。学院を案内する者の元へとお連れします」プラダマンテがそう言って踵を返した。

「それでは皆様。また後ほど」

自分の教室へ向かうトリシュとエントランスで別れたわたし達は、プラダマンテに付いて廊下を歩く。そんな中で「そう言えば、セレネちゃんとエオスちゃんもこの学校の通うてるんやんな~」はやてがスクライア姉妹の話を切り出した。

「遺跡発掘も続けてるみたいだから、確実に居るってことはないと思うけど・・・」

「実際に会ったのは花見の時だけだからな。もうちょっと話してみたいよな」

ルシルが花見の時の事を話したから、わたしと・・・顔を真っ赤にしたはやては黙る。原因はわたしにあるってことは十分に反省してる。そう、みんなにお酒を飲ませて泥酔させちゃうなんて・・・。リンディ提督や、その話が家にまで伝わったことで久しぶりに母様と父様にお説教を食らっちゃったし。もうお酒なんて懲り懲りだよ。

「セレネとエオス、アリサに殺されかけたよな」

酔っ払ったセレネとエオスは、同じく酔っ払ったアリサとすずかにセクハラまがいのことをした。そして酔いが醒めた後、わたしとなのはとすずかとユーノとリインは記憶がぶっ飛んでたけど、アリサとフェイトとアリシア、セレネとエオス、そしてはやては記憶が残ってた。だからアリサはそのセクハラにプッツンして、動物形態の2人を棒に吊るしてこんがり丸焼きにしようとした。

(フェイトとアリシアは改めてハラオウン家の養子になることを伝えてハッピーエンドだったけど・・・)

「いくら見た目が動物でも、実際に焼いたら殺人事件だからね。私たちも必死に止めたな」

アインスが苦笑する。本当に大変だったもんね。そんな親友にガチで殺されかけたセレネとエオスは今日、学校に来ているのかなぁ。もし来ているんなら、PT事件からどれほど成長したのかを確認してみたいかも。

「スクライア姉妹なら登校していますよ。正門で挨拶したのを憶えています」

プラダマンテからそう聞いたわたし達の目標が決まった。トリシュと合流した後、セレネとエオスに逢いに行こう。

 
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