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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―二年生、開始―

 
前書き
ずいぶん遅れてしまいました、すいません。 

 
 結局、この前の中等部入学試験では、どうやら試験中に既に見つかっていたようで、去ろうとしたところでレイに捕縛された。

 そのまま家にお持ち帰りされたり、デュエル・アカデミアに帰った時は明日香に問いつめられたりしたが……まあいいか。

 ところで、デュエルアカデミアの新学期が始まり、数時間がたった。

 昨年度の開始する時の挨拶では、鮫島校長が演説じゃないかと錯覚するような長い挨拶をしてきたので、若干身構えていたのだが……その鮫島校長は不在だった。
なんでも、私用があるのだとか……このデュエル・アカデミアの校長として、私用で学園を開けて良いのだろうか……とは考えたものの、別にどうでも良かったので、すぐ考えるのを止めた。

 不在の鮫島校長の代わりに、校長としてこの学園にいるのは、なんとクロノス教諭。
なんと、とは言ったものの、クロノス教諭の他に適任者はいないだろう。
『校長代理』と書いてある胸のプレートに、マジックペンで『代理』の文字を消しているのがクロノス教諭らしい。

 そして、その補佐にいるのが初見で絶対に忘れない見た目である、ナポレオン教頭。
クロノス教諭……いや、クロノス校長代理も大概だと思ったが、上には上がいたということだろうか。
一年間の学園生活では見なかったので、他のデュエル・アカデミアにでも出向していたのかもしれない。

 今回は早く挨拶が終わりそうだ……と思っていた時期が俺にもありました。
挨拶が二人ぶんになったぶん長く、その上、元々の話の長さも鮫島校長以上。

 新学期始めの始業式から、新入生や在校生の気力を根こそぎ奪ったのであった……


「……はあ」

 始業式も終わり、新入生歓迎会の為にオベリスク・ブルーの寮に戻る途中、ついついため息を漏らした。

「あれは、確かに長かったな」

 横で共に歩く三沢も、苦笑混じりの声だ。

「それにしても、新入生歓迎会なんてやったな……」

 その時は、俺も三沢もラー・イエローだったが。
しかし、オベリスク・ブルーの新入生となると、中等部からのエリート組。
みんな万丈目のような奴らなのかと思うと、若干嫌になってくる。
付き合ってみれば、悪い奴らでは無いのだが……

「まあ、頑張ってくれ。俺はナポレオン教頭とクロノス教諭……おっと、クロノス校長代理に呼ばれてるからな」

 何の用があるのかは知らないが、三沢はクロノス校長代理とナポレオン教頭に、校長室に来るように呼ばれていた。
今年の二年生の首席として、何か用事でもあるのだろうか。

「ああ。じゃ、後で何があったか聞かせてくれよな」

 三沢に手を振って別れ、オベリスク・ブルーの寮に向かわず、どこかで時間でもつぶしたいなあ……などと考えていると。

「黒崎先輩」

 ……背後から、声がかかった。
反射的に振り向くと、そこには見たことのない、日本人離れした男子生徒が立っていた。

 そもそもデュエル・アカデミアの服ではなく、スーツのような白い服に、同じく白色に近い髪。
先輩と呼んだことと、その服装から相手は一年生だと当たりをつける。

「……誰だ、お前?」

「おっと、申し遅れました。僕は今年、ラー・イエローに入学した、エドと言います」

 日本人離れした外見を裏切らない、《エド》と名乗った男子生徒が小さく微笑みながら、挨拶をしてくる。
新入生でラー・イエローということは、そこそこ~上位ぐらいの実力の持ち主ということだろう。

「で、そのエドが俺に何の用だ?」

「ええ……少し、僕とデュエルをしてほしくて」

 そう言いながら、デュエルディスクを一つ俺に放り投げ、自身の腕にも一つとり付ける。
そして、胸ポケットから一つのデッキを取りだした。

「僕もファンデッキ使いでしてね。デュエル・アカデミア最強のファンデッキ使いと名高い、黒崎先輩に少し、御教授願いたいんですよ」

 そんな呼び名がついていること自体始めて聞いたが、意外と名誉ありそうな名前で良かった。
ファンデッキの御教授、ね……

「遊矢で良い。俺は名前の方が好きなんだ。……それと、デュエルの件」

 先程投げられたデュエルディスクを腕に装着し、更に【機械戦士】デッキをデュエルディスクに装着する。

「別に、断る理由は見つからない」

「そうですか! それはありがとうございます」

 礼儀正しく一礼した後、エドは少し離れてデュエルの態勢をとる。
俺も合わせて少し距離をとり、デュエルの準備が完了する。
オベリスク・ブルー寮へ向かう途中の道だが、辺りに人は見られない。
みんな、新入生歓迎会の準備をしているのだろうか。

 まあ、そんなことはより、今は目の前のデュエルに集中すべきだ。

「「デュエル!!」」

遊矢LP4000

エドLP4000

 俺のデュエルディスクに、『後攻』と表示される。
……別に、「先攻は譲る」的なことを言った覚えは無いのだが……

「僕の先攻、ドロー!」

 さて、ファンデッキと言っていたが……どんなデッキだ?

「僕は、永続魔法《未来融合―フューチャー・フュージョン》を発動。エクストラデッキにある、《アクア・ドラゴン》を指定することで、融合素材である《フェアリー・ドラゴン》、《海原の女戦士》、《ゾーン・イーター》を墓地に送ります」

 正直、数回転けそうになった。
まず最初に転けそうになったのは、未来融合―フューチャー・フュージョン。
言わずもがな亮が愛用しているカードであり、結構な値を張るレアカードだ。……まあ、サイバー流の方は普通に貰えたそうだが。

 そして、アクア・ドラゴン。
デュエルモンスターズ最初期のモンスターで、あの青眼の究極竜と同じく三体融合モンスターであるものの、効果はなく、攻撃力・融合素材も貧弱……という、最初期に良く見られる融合モンスターだ。

「更に僕は、《共鳴虫》を守備表示で召喚」

共鳴虫
ATK1200
DEF1300

 次に現れたのは、昆虫族のリクルーター。
もはや、ファンデッキがどうとかではなく、デッキ構成が分からない。
好きなカードでデッキを組んだのだろうか?

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「楽しんで勝たせてもらうぜ! ドロー!」

 相手が何であれ、俺は楽しんで勝たせてもらうだけ。
そんなわけで、まずは頼むぜアタッカー!

「俺は、《マックス・ウォリアー》を召喚!」

マックス・ウォリアー
ATK1800
DEF800

 相変わらず、機械戦士たちのアタッカーを務めてくれる三つ叉の機械戦士が、エドの昆虫に狙いをつける。

「バトル! マックス・ウォリアーで、共鳴虫に攻撃! スイフト・ラッシュ!」

 出来れば効果破壊したかったが、そんなに上手くはいかなかった。
易々とマックス・ウォリアーは共鳴虫を貫いたが、それこそが共鳴虫の仕事。

「共鳴虫の効果! このカードが戦闘破壊された時、デッキから攻撃力1500以下の昆虫族モンスター……《プチモス》を特殊召喚!」

プチモス
ATK300
DEF200

 プチモス……だと……!?
共鳴虫からリクルートされて現れたのは、ある有名なモンスター召喚の為に使う、これまた貧弱なモンスター、プチモス。

 このプチモスによって、更に目の前の後輩、エドがファンデッキ使いであるということが分かったが……何か、おかしい。

「……ターンエンドだ」

「僕のターン、ドロー!」

 わざわざプチモスを出してきたのだ。
手札には、もちろんあのカードがある筈。

「手札から、《進化の繭》をプチモスに装備させます」

プチモス
ATK300→0
DEF200→2000

 ただの幼虫だったプチモスが繭に包まれ、さなぎとなってフィールドに根を張った。
このまま放置すれば、虫の進化の手順をたどり、いずれ成虫となってフィールドにでる……が、進化に使う時間が必要以上に遅い。
更に、そのステータスも攻撃力が上がるマックス・ウォリアーに戦闘破壊される程度だ。

「カードを二枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 ならば当然、あの三枚のリバースカードは進化の繭を守るカードではあるだろう。
だが、攻めなければ何も解決しない。

「手札のこのカードは、攻撃力を1800にすることで妥協召喚が出来る! 来い、《ドドドウォリアー》!」

ドドドウォリアー
ATK2300→1800
DEF900

「更に、ドドドウォリアーに《ファイティング・スピリッツ》を装備させ、攻撃力を600ポイントアップさせる!」

ドドドウォリアー
ATK1800→2400

 妥協召喚された斧を持つ機械戦士に、ファイティング・スピリッツが流れ込む。
相手モンスターの数×300ポイントアップしたため、ドドドウォリアーも進化の繭の攻撃力を超える。

「バトル! マックス・ウォリアーで、進化の繭に……」

 その時、デュエルに似つかわしくない、軽快なメロディーがフィールドに流れた。
そう、あたかも携帯電話からの音のような……

「あ、ちょっとすいません。電話かかって来ました」

 エドがデュエルを中断し、携帯電話を取りだして電話し始めたからか、マックス・ウォリアーが空気を読んで止まる。
……凄いな、お前。
これも精霊の力というやつだろうか、などと考えていると、電話を終えたエドがこちらに少し頭を下げている。

「すいません、急ぎの用だったもので……」

「……気を取り直していくぞ。マックス・ウォリアーで、進化の繭に攻撃!」

 三つ叉の槍がを持った機械戦士が、進化の繭に向かう。
マックス・ウォリアーは、戦闘時に攻撃力が400ポイントアップするため、進化の繭は倒せる……!

「バトルの前に、伏せてあった速攻魔法を二枚発動! 《時の飛躍―ターン・ジャンプ》! 発動したターンのターンプレイヤーのターンで数えて3ターン後のバトルフェイズとなる! よって、六ターン後の遊矢先輩のバトルフェイズとなる!」

 エドのリバースカードから出て来た二個の時計が、急激に回転を始める。
そして、フィールドは未来に飛んだが、変わったことと言えば、進化の繭が巨大になっていることと、エドのフィールドに、水色のドラゴンが現れていることだった。

「《時の飛躍―ターン・ジャンプ》によりカウントが進んだ、《未来融合―フューチャー・フュージョン》の効果により、エクストラデッキから《アクア・ドラゴン》を融合召喚!」

アクア・ドラゴン
ATK2250
DEF1900

 進化の繭に、未来融合―フューチャー・フュージョン……二つのカウントが、ターン・ジャンプによって進んだ。
次のターンを迎えれば、まずいことになる……!

「再びマックス・ウォリアーで、進化の繭を攻撃! スイフト・ラッシュ!」

「最後のリバースカード、《和睦の使者》を発動。僕のモンスターは、戦闘では破壊されません」

 やはりと言うべきか、リバースカードは進化の繭を守るカードだった。
だが、手札に《シールドクラッシュ》のようなカードがあるわけでもない……

「ターンエンドだ」

「僕のターン、ドロー!」

 さて、手札にあのカードは……あるだろうな。
無かったら、あのタイミングでターン・ジャンプを使う意味がない。

「進化の繭を装備してから、自分のターンで数えて6ターンが経過した《プチモス》をリリースすることで、現れろ! 《究極完全態・グレート・モス》!」

究極完全態・グレート・モス
ATK3500
DEF3000

 進化の繭を突き破り、立派な成虫の姿をした、デュエルモンスターズ史上五本の指に入るであろう召喚条件の難しさを持つモンスターが、いとも簡単に現れた。
正直、始めて見た……!

「バトル! 究極完全態・グレート・モスで、ドドドウォリアーを攻撃! モス・パーフェクト・ストーム!」

 ドドドウォリアーの攻撃力は2400……1100のダメージを俺を襲った。

遊矢LP4000→2900

「ぐうっ……! だが、装備していたファイティング・スピリッツの効果を発動! このカードを墓地に送ることで、装備モンスターの破壊を免れる!」

 ドドドウォリアーから、目に見えてファイティング・スピリッツが消えて攻撃力が下がったものの、破壊はされずに究極完全態・グレート・モスの攻撃を耐えた。

「だが、まだモンスターはいる! アクア・ドラゴンで、ドドドウォリアーに攻撃! アクア・ブレス!」

 水流のブレス攻撃が、究極完全態・グレート・モスの攻撃を耐えきったドドドウォリアーに、息を付く暇もなく追撃をかけた。
ドドドウォリアーは斧で防ぐものの、そのまま流されてしまった。

遊矢LP2900→2450

「これで僕はターンエンドです」

「俺のターン、ドロー!」

 こいつ、変な奴かと思っていたが……強い。
デッキ構成はバラバラだが、カード一枚一枚を上手く使ってくる、と言った感じだろうか。

「俺は《ガントレット・ウォリアー》を守備表示で召喚!」

ガントレット・ウォリアー
ATK500
DEF1600

「更に、マックス・ウォリアーを守備表示にしてターンエンド」

 反撃と行きたいところだが、残念ながら手札にパーツが足りない。
ガントレット・ウォリアーとマックス・ウォリアーを守備表示にし、耐えしのぐしかない。

「僕のターン、ドロー!」

 究極完全態・グレート・モスの存在から、圧倒的に優位に立っているエドが、カードをドローした後、こちらに向かって不敵に笑いかける。


「どうしたんですか、遊矢先輩? ……シンクロ召喚とか、使って見せてくださいよ」

 わざわざ俺にデュエルを申し込んで来たのは、どうやらシンクロ召喚が見たかったかららしい。
残念だが、シンクロ召喚はいつでも出来るぐらい、便利すぎるわけじゃない。

「……まあいいか。通常魔法《浮上》を発動し、墓地から水族モンスターである《ゾーン・イーター》を特殊召喚」

ゾーン・イーター
ATK250
DEF200

「更にゾーン・イーターをリリースし、《ジョーズマン》をアトバンス召喚!」

ジョーズマン
ATK2600
DEF1600

 浮上してきた小さい魚のような謎の生物がリリースされ、そこから口がたくさんある鮫人間……とでも言えば良いのだろうか、モンスターが現れる。
水属性モンスターをリリースしなければアトバンス召喚が出来ないが、その攻撃力は、上級モンスターの基準値を超えている。
しかも、更に上がるのだ。

「ジョーズマンの効果! 僕のフィールドに水属性モンスター、アクア・ドラゴンがいるため、攻撃力が300ポイントアップする!」

ジョーズマン
ATK2600→2900

「バトル! アクア・ドラゴンで、ガントレット・ウォリアーに攻撃! アクア・ブレス!」

 再び流れ出す水流が、ガントレット・ウォリアーを飲み込んだ。
ドドドウォリアーと同じように、ガントレット・ウォリアーも流されていった。

「ジョーズマンで、マックス・ウォリアーに攻撃! シャーク・ストリーム!」

 続いて、ジョーズマンによりマックス・ウォリアーも破壊され、俺のフィールドはがら空きとなる。

「フィニッシュだ! 究極完全態・グレート・モスで、遊矢先輩にダイレクトアタック! モス・パーフェクト・ストーム!」

「リバースカード、オープン! 《ガード・ブロック》!」

 一ターン目から伏せられていたリバースカードがようやく日の目を見て、俺への戦闘ダメージを0にし、カードを一枚ドローする。

「くっ、ガード・ブロックだったか……だけど、次のターンで終わりですよ、遊矢先輩。ターンエンドです」

「俺のターン、ドロー!
……なあお前、そのデッキ好きじゃないだろう」

 先程から俺に違和感を与え続けていることを、気になったので面とむかって言ってみる。
何でだか分からないが、そういう感じがひしひしと伝わって来るのだ。

「何言ってるんですか遊矢先輩。せいぜいジョーズマン以外、好きじゃなきゃ使いませんよ」

「……じゃあ何で、お前は楽しそうじゃないんだ」

 ファンデッキとは、使い手が『好きなカードを使って楽しんで勝つ』ために、試行錯誤しながら作り上げるデッキ。
デッキを作り上げることに成功した時には、大なり小なり、達成感や喜びがあってしかるべきだろう。

なのにお前は、これっぽっちも楽しそうじゃない……

 自分勝手と言われるだろうが、使ってて楽しくないデッキなど、ファンデッキとは認められない。
いや、認めたくない……!

「だからそんなデッキに、俺は負けない! 力を貸してくれ、マイフェイバリットカード! 《スピード・ウォリアー》!」

『トアアアッ!』

スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400

「通常召喚に成功したため、更に《ワンショット・ブースター》を召喚!」

ワンショット・ブースター
ATK0
DEF0

 マイフェイバリットカードたるスピード・ウォリアーと、お馴染みの機械、ワンショット・ブースターがフィールドに揃う。

「ふふふ……そんな二体のモンスターで、どうやって究極完全態・グレート・モスを倒すって言うんですか?」

「悪いが、俺のスピード・ウォリアーに不可能はない! 通常魔法《ミニマム・ガッツ》を発動! 自分のモンスター一体をリリースすることで、相手モンスター一体の攻撃力を、エンドフェイズ時まで0にする! 俺はワンショット・ブースターをリリースすることで、究極完全態・グレート・モスの攻撃力を0にする!」

 ワンショット・ブースターが、究極完全態・グレート・モスの羽根にミサイルを放ち、究極完全態・グレート・モスの身動きをとれなくした。

究極完全態・グレート・モス
ATK3500→0

「なにっ!?」


「バトル! スピード・ウォリアーで、究極完全態・グレート・モスに攻撃! ソニック・エッジ!」

 地上から動けなくなった究極完全態・グレート・モスに対して回し蹴りを放ち、空中へ吹き飛ばす。

エドLP4000→3100

まだまだ、終わりじゃない。
いや、間違えたな。

――これで、終わりだ。

「ミニマム・ガッツの第二の効果! 攻撃力を0にされたモンスターが破壊された時、そのモンスターの、元々の攻撃力分のダメージを与える!」

 空中へ吹き飛ばした究極完全態・グレート・モスを追うように、スピード・ウォリアー自身も空中へ飛んだ。
そして、空中を漂う究極完全態・グレート・モスをキャッチし、ぐるぐると回って遠心力をつけながら――究極完全態・グレート・モスを、エドに投げつけた。

「うわあああっ!」

エドLP3100→0

 ワンショットキルを達成し、デュエルディスクによって映し出されていた、ソリッドビジョンの映像が消えた瞬間。

「よっしゃあああッ!」

 俺が勝利した時のお決まりのセリフを言ってる間に、倒れていたエドが立ち上がる。

「参りました……やっぱり、お強いんですね」

「……その演技、似合ってないぜ」

 不覚にも、その顔を思いだしたのはデュエル中だった。

 俺とて、プロリーグの特集雑誌ぐらいは読む。
友人である亮がプロリーグに行ってからは、むしろ愛読者だと言っていい。

 そして、俺の前にいるのは、少し前に雑誌で特集されていた最小年プロデュエリスト――

「――エド・フェニックス」

「……何だ、知ってたのか。噂には疎いと聞いていたから、知らないと思ったんだが」

 化けの皮が剥がれた、という言い方が相応しい豹変ぶりである。
似合わない演技とは言ったのは自分だが、これほどまでに性格が違うとは。

「で、何がしたかったんだ?」

「答える必要はない。……いや、あえて斎王みたいに言うならば、『運命に従えば、いずれは分かることだ』……かな」

 まったく要領を得ない答えが返ってくる。
だが、目の前のこいつが、俺に目的を話す気がないことだけは分かった。
こいつから借りたデュエルディスクを腕から外し、投げ返す。

「運命なんて、俺は信じてないな」

「たとえお前が信じていようがいまいが、またいずれ会う運命なんだとさ……まったく、迷惑にも程がある」

 そう最後に言い残すと、エドは歩いて去って行った。
船で来ているのだろう、恐らくは港の方向だ。

「……エド・フェニックス、か……」

 エドが見えなくなった後、俺は無意識に呟いていた…… 
 

 
後書き
今回のエドのデッキは、本当にただのネタデッキ。
原作アニメでは、適当にブースターを買っていましたが、グレート・モスを使わせたいという理由から、ああなりました。
しかし、《ラーバモス》よ、活躍させて上げられずすまない……

これからは、あの子安のせいで、デュエルだけやってればそれで良いわけじゃないのかも知れないと思う今日この頃。

それと、そろそろ学校のテストが始まるので、更新が遅れます。

では、感想・アドバイス待っています。 
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