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DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
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剛田武か、お前は!?

さて…
途中タイロンさんと別れ、発展途中の町を散策すること10分。
待望の『エコナバーグ劇場』へと辿り着く。
中にはいると無表情の受付嬢が、言葉だけ快く迎え入れてくれる。
「いらっしゃいませ!本日は超美形デュオ『カノーツ&エイカー』の歌謡ショウを行っております。存分にお楽しみ下さい!」
カノーツ&エイカーって誰?


更に入ると、そこにはステージがあり、既に2人組の男性が下手くそな歌を恥ずかし気も無く披露していた。
どうやら見た目重視のユニットらしく、80年代アイドルグループを彷彿させる。
しかしながらファン層は真逆で、無駄に広い客席の一番前に陣取っているおばさん連中が彼等の唯一のファンだろう。
人気無さ過ぎて、客席の何処に座ろうか迷っちゃう。
空席だらけなんだもん!

まぁ近くで見ればそれなりに楽しめるのかもしれないという訳で、取り敢えず最前列へ向かう私達。
近付いて見て分かったのだが、『超美形』とのキャッチフレーズも嘘っぱちの様子。
“まぁ美形?”って感じね………って、どっかで見たことある2人ねぇ?

何処でだったかしら…
私は一生懸命記憶の遺跡を発掘する。
サマンオサ…では居なかったわ…
ジパング…だったら目立つわよねぇ…
エジンベア…には入れないわよこんな田舎者!
じゃぁ…どこ?

そしてダーマが私の脳裏に蘇った!
思わずお母さんと顔を見合わせる。
そして、
「「「「あー!!何時ぞやのナンパ男!!」」」」
お母さんと共に叫んだ声は、何故だかアルルさんとハツキさんとも重なり合い、美しくないステレオ効果を醸し出した。

「な、何!?ビアンカ達のお知り合い?」
突然の大絶叫に唖然とする周囲…
ステージ上の2人も、かぶりつきで見ていたおばさん方も、私達を睨んで黙っちゃている。

「「ロマリアで、「「ダーマで、ナンパしてきた勘違いバカよ!」」」」
でもそんな事を気にしないのがリュカファミリー!
「何が『超美形デュオ』よ!大して美形じゃないじゃない!歌も下手だし!」
“ステキな思いでありがとう”とばかりに、彼等の評価をする私。
お母さん達も同意の様子。

「ちょっと!私達の『カノーツ&エイカー』ちゃんが、美形じゃないってどういう事よ!」
“私達の”って何だ!?
と言ってやりたいのだが、あまりの形相に怖くて言えない…
このお人の顔、何かに似てる…あぁ、人面蝶だ!モンスターの人面蝶だよ!
そう言ったら怒るだろうなぁ…

「美形じゃないわよ!この人の方が遙かに美形だし、歌だって超上手いのよ!」
私が『人面蝶に似てますね♥』って言おうか迷っていると、お母さんがお父さんを付きだし勝ち誇った様に言い放つ!

「くっ………た、確かに良い男だけど…う、歌は聴いてみないと分からないじゃないのよ!言うだけなら何とでも言えるわ!歌ってみなさいよ!」
「望む所よ!リュカ、アナタの歌声を披露してあげてよ!私、貴方の歌を聴きたいの♡」
ほっほっほっ、戦闘中(もしくはフィールド移動中)以外に歌うお父さんの歌は最高なんだからね!
傍迷惑というマイナス要因がなくなったその人の歌声は最高なんだからね!

流石に事態が飲み込まないお父さん…でもお母さんにオッパイ押し付けられ強請られれば直ぐ落ちる。
元々ノリの良い性格だし、歌い出したら止まらない!
飾りの様に置いてあったピアノまで使い、弾き語りで披露する私のイケメンパパ!
何でも有りな格好良さに、本気で惚れそうなんです~!
ごめんねウルフー…私のパパ格好良すぎー!!

気が付けば、人面蝶の仲間達もお父さんに惚れ惚れで、さっきの2人組のことなど遙か彼方に忘れ去っている。
ステージから下りるお父さんにまとわりつき、鱗粉を撒き散らしていますわ!
ちょ~不愉快!

しかし、私のお母さんがそんな勝手を許す訳なく、人面蝶を掻き分けてお父様に近付くと、
「流石、私の旦那様!最高のステージだったわよ!」
と、熱烈な口吻を披露する。
う~ん…見習わないとね。


「ピアノを弾けたの?…何でもアリなのね…か、格好いい…」
あまりにも格好良すぎなので、思わず言ってしまった台詞…
でも私の彼には嫉妬の火種!
「ズルイよリュカさんは!美人の奥さんに愛人も何人か居るのだから、マリーの心まで持って行くのは止めてよ!」
と嬉しいことを言ってくれる、可愛いボーヤよ。
う~ん、もう!
大丈夫よ…私は貴方の虜ですぅー!



さて…いつの間にかステージに誰も居なくなった劇場…
居る意味が全くないので、出て行こうと思います。
何より人面蝶ズがウザイのよ!

「客として来たのに、歌って帰るってどういう事?」
「リュカ…格好良かったわ♡」
「ええ!凄く素敵でした♡」
あぁ…今夜は激しそうだぁ…

「お楽しみ頂きありがとうございます。本日の『カノーツ&エイカー 歌謡ショウ』の観賞料は50000ゴールドです。お支払いをお願いします」
出たぁぁぁぁ!
無表情の受付嬢…
全く楽しんでないのに、法外な金額請求!

「な!?か、金取るなら最初に言ってよね!何処にも何も書いて無いじゃない!」
アルルさん大激怒!
そりゃそうだ…前もって言えっての!

「書いて無くても決まりです。ショウを観たら、料金を払うのが当然でしょう!お支払い頂けないのであれば、此方としても実力行使に出ざるを得ませんが…」
すげー言い訳。
かなりの回数、同じ台詞を言ったんだな…
噛むことなくスラスラ言えてるもん。
もうこれはイオナズンでお仕置きね!
月に変わってお仕置きよ!って感じね♥

「あはははははは!払ってやろうよアルル。ただ見は良くない!正当な言い分だ!」
しかし、思いもよらない発言パパ!
「そちらの紳士様はご理解しておいでの様で…」
「リュ、リュカさん!?」
え、何!?何で払わにゃならないの?

「そう…ただ見はダメだ!僕も先程、ステージで歌を披露したんだよね…」
「は…はぁ…」
あぁ…そう言うこと…
「まぁ、3曲だけだから、オマケしても良いよ。…500000000ゴールドに!」
「ご、5億!!!?」
アレ?
何でだろう…さっき受付嬢が提示した金額が安く思えるよ?

「払えよ!あのチンケなショウに50000払ってやるから、僕の『超イケメン歌手 リュー君オンステージ』に500000000ゴールド!払わないと実力行使に出るぞ!」
「な、何をふざけた事を…勝手に歌っただけでしょう!」
「『ショウを観たら、料金を払うのが当然でしょう!』って事だよね。払えよコラ!」
わぁ凄い…ジャイアンが居るー!
何この子?
どんだけ身勝手なの?
何でボッタクリを行っている側が可哀想に思えるの?

「オ、オーナー!オーナー!!」
うん。対応としては正しいけど、オーナーにどうにか出来る相手じゃないわ…
地獄の帝王クラスを2.3人呼ばないと………
居る?知り合いに地獄の帝王が居る?

「おやおや…どうしましたか?トラブルのようですねぇ…」
見るからに小悪党…
一人じゃ町も歩けないのだろう…
貧相な出で立ちに、ゴツイ大男を4人も引き連れ現れた。
「そ、その…此方のお客様が…」


「非常識な…そんな子供の理屈が通じると思ってるのですか!?」
うん。私もそう思う。
身内の言うことだけど、私もそう思う。

「ゴチャゴチャうるせーな!さっさと実力行使に出れば良いだろ!」
しかもめんどくさくなったらしく、力業での解決を優先させた。
お父さんは体中に傷がある…だからそれを隠す様にマントを羽織っている。
初めてお父さんのことを見ると、細面であまり強そうには思えない。

4人の大男もそう思ったのだろう…
1人が凄い勢いでお父さんに突進してくる…が、軽く平手打ちしただけで劇場の外にまで吹っ飛ばされてしまった。
でも解ってない残り3人は、勝てると思い込んで一斉に襲いかかってきた。

「イオ」
ポピーお姉ちゃんに教わった、戦わずに相手の戦意をなくすワザ…
誰も居ない壁に向かい魔法を唱えて脅しをかける。
「お!マリー…手加減が上手くなったね!」
「日々精進してますから!それにこんな所でイオナズンを唱えたら、私まで怪我しちゃうし!」
そうよ…私はイオナズンだって唱えられる。
アンタ達に勝てる相手じゃないのよ!

「おいコラ!さっさと払え!今すぐ払え!全額揃えて払え!」
真っ青になり固まる小男。
流石に相手が悪いことに気が付いたのか、ぎこちないながらも笑顔を作り直し、揉み手摺り手で卑屈になる。
「た、大変申し訳ございませんでした。確かにお客様方に対しては、料金のご説明をしてませんでした。これは当方のミスでございます。従って今回は無料という事で…」

「え!?良いの?50000ゴールド払わなくて良いの?」
まぁ当然ね…
「はい!」
「アルル、良かったね…無料だってさ!」
お父さん満面の笑み…小男、安堵の笑み。

「じゃぁ、僕の歌を聴いた料金を払え!500000000ゴールドだ、払え!!」
えぇぇぇ!?
だって50000払わなくて良くなったのに!?

「な、何を…当方は譲歩したではないですか!」
「それはそっちの勝手だろ!?こっちは請求を止める気は無い!払え!」
いや、そうだけど……でも酷くない?

「ぐっ…しょ、少々お待ち下さい」
困った小男、部下に合図し助っ人を呼びに行かせた。
でもね、誰が来たってムリよ…
地獄の帝王クラスを2.3人呼ばないと………
居る?知り合いに地獄の帝王が居る?




「一体何事や!急にウチを呼び付けて…」
しかしながらやって来たのはエコナ嬢。
流石に地獄の帝王に知己はなく、この町の最高権力者を呼ぶに終わる。
愛人に色仕掛けで迫られて、コロッと落ちる様ならグランバニアはお終いよ。

「お忙しいところ申し訳ございません!実はこの方達がとんでもない言い掛かりを付ける故、エコナ様のお力を頼らせてもらう次第です」
先に言い掛かりを付けたのはそっちじゃん!
「………何があったんや………?」
うわぁ…凄く嫌そうな感じのエコナさん…
私達に関わり合いたくないんだろうなぁ…

と、その間にも状況説明を受けている。
「な!?5億ゴールド!何考えてるんやリュカはんは!」
うん。私も思う。
身内だけど私もそう思う。

「だって…僕はステージに上がって歌を披露したんだよ!そっちのお嬢さんが言ってた!『ショウを観たら、料金を払うのが当然!』って…」
ジャイアニズムってこう言う事よね!
「そ、それはプロが正式にステージで歌を披露したからや!リュカはんはプロとちゃうやん!」
「僕プロだよ」
言い切ったぁー!
言い切りましたわよこの男。

「ふざけんなや!リュカはんの何処がプロやねん!」
「じゃぁ、アイツ等の何処がプロなんだよ!?この劇場で下手くそな歌を披露した、あの2人はどの辺がプロなんですか?」
おっと結構な正論…あのレベルでプロって…80年代の日本くらいよ許すのは!
「そ、それは…」
何も言えなくなってやんの!

「言った者勝ちじゃん!『私はプロですよ~!』って!」
「で、でも…金取るなんて知らんかったんや…後から言うなんてズルイやん!」
おいおい…後出しジャンケンそっちが先行。
「後から言って来たのはそっちだろが!帰り際になって『観賞料50000ゴールドです』って、先に吹っ掛けてきたのはそっちだ!」
「ご、50000ゴールド!?」
何この驚き様?
まさか知らなかったの?

「何だ…知らなかったのか…きっと今までボッタクってたんだよコイツ!」
えー…だってこの町の責任者でしょー?
この劇場を町民の反対を押し切って誘致したんでしょー!?
内情を知らないのって拙くない?
「何考えてんや…あの二人の出演料は1ステージで2000ゴールドやで!」
「すげ…客1人でお釣りがくるじゃん!…儲けは全部、其奴のポッケの中か?」

「し、しかし…エコナ様は私に一任してくれたではないですか!?」
一任って…任せすぎ!
「そりゃ劇場経営は任せたけど、50000ゴールドは非常識やろ!お客が来なくなるやん!」
実際に客は居なかったもんね…ガラガラだったし…

「何を甘い事を…どうせ直ぐにこの町は寂れるのです…今の内に取れるだけ取っておかねば…」
あら?
小男開き直ったわねぇ…
「………消えろ!お前はクビや!今すぐこの町から消えろ!」
「ふん!喜んで出て行きますよ…沈みかけた船に居着くほど酔狂では無いのでね…」
お前が言うな!
船底に穴を空けるネズミが!

「おい、待て!」
立ち去ろうとする小男共を呼び止めるお父さん。
もういいじゃん…そいつ等見ているだけで気分悪いんだけど…
「お前…声からしてムカつく!もう喋るな!!」
そう言うと小男の下顎を掴み、力任せに握り潰す!
「きゃがっっっがが!!」
ステキな悲鳴に濡らしてしまう私…

「ベホマ」
しかし次の瞬間、お父さんはベホマを唱え治療してしまう。
でも顎の語りは酷く歪。
「よし!これでお前のムカつく台詞を、二度と聞かずに済むね。………次は誰かな?」
私のパパはステキパパ!
爽やかな笑顔で残りの取り巻き共を見渡すパパ。

慌てて逃げ出すボッタクリ一味。
うん。気分爽快ですぅ!


「リュカはん…ありがとう。お陰で助かったわぁ…あんな最低な野郎だったなんて…」
「何甘い事ぬかしてんだバカ女が!」
うぉ!?
いきなり怒鳴られビックリ仰天!
「リュ、リュカはん…」

「エコナ…君は町造りを甘く見てないか!?ただ施設を建て、責任者を据えて任せれば良いと考えてないか!?」
確かに…何も把握して無さ過ぎだったわね。
「責任者を指名するのならば、能力と人となりを考慮に入れなければいけないんだ!」
「そないな事言うても、あないな人間とは思わなかったんや!」
誰だってそうだ!

「僕は人選ミスを責めてるのではない…エコナも人間なのだから、ミスをするだろうし、奴も本音を隠してエコナに接触して来たのだろうから、見抜く事は容易ではないだろう…だからこそ、任命した後も注意深く状況を把握する事が必要なんだ!君は任せっきりで、劇場の事を何も知らないのだろう!スパイを仕立て、客として劇場に向かわせれば、このボッタクリは直ぐに発覚したに違いない…」
ムリよ…今のエコナさんには、そんな人望無いもの。

「そ、そんな事言うたって…ウチかて忙しいのや…アレもコレも一片に出来へん!」
出た“忙しいからー”とかいう言い訳!
「だったら町造りを一時停止させ、時間を作れば良いだろ!まともに機能しない施設を作って、町を成長させてる気か!?笑わせるな!町も人も、少しずつ成長するものなんだ…焦ったって膿が広がるだけだ!さっきのオーナーみたいな膿が…」
エコナさん泣いちゃった…

お父さんに怒られるとは思ってなかったのね…
でも甘いわよ。
私のお父さんはね、叱る時はキッチリ叱る人なの。
だからこそ尊敬出来るんだよ。

「良く聞きなさい…人が居るから、町や国が必要になるんだ。逆はあり得ない…極論すれば、町や国が無くても人は生きて行ける…でも町や国は人無しでは存在できない!何故だか分かるかいマリー?」
うぉ!?い、いきなり話を振らないでよ…
「え、え~とですね…町や国は、人々が生き易い環境を整える為にだけ存在してるから…です!」
って事よね?
「その通り!其処に住む人々を犠牲にして町を大きくしても、規模が大きくなるだけで質は低下する!」
あー焦った…お父さんが真面目モードの時は気ー抜けないわね…

「エコナ、憶えてるかい?ロマリアで王位を断った時の僕等の会話を…」
「憶えてる…『権力には責任が付いて来るんだよ!権力が大きければ大きい程、責任も大きくなる』って言うてた」
へー、そんな格好いいこと言ったんだ!

「そう…町の長として、君は好き勝手に施設を建設させる事が出来る…でもそれには責任が付き纏うんだ!より良く町を成長させる責任が!君はそれを果たしてない………この町を見回ったけど、診療所が少なすぎる…商業施設や娯楽施設などの金儲けがし易い施設は多いけど、町民の為の福祉施設が極端に少ないよ!」

「それは…何れ作ろうと思うとったんや…今は手っ取り早く資金を稼がなあかんと思って…」
何れって何時よ!?
必要な物、先に造らないでそうするのよ!?
「君は本当にこの町を成長させたいの?…それとも、ただ権力を振りかざしたかっただけ?」
お父さんはエコナさんの顔を覗き込み、優しい口調で問いただす。

「ウチはこの町を、世界中に名を轟かせる町にしたいんや!世界最高のエコナバーグにしたいんや!」
「だったら町民とよく話し合い、町民の意見も尊重し、互いに理解し合いながら協力するべきだと思わないかい?」
うん。その意志があるのなら、きっとみんなも解ってくれる…
エコナさんは凄い人だし、町の人達と協力出来れば、世界最高の町を造れると思うわ。


お父さんはまだ涙の止まらないエコナさんの手を取り、早足で劇場を後にする。
「ど、何処に行くんや!?」
「決まってるだろ…君が町造りを決意したスタート位置に行くんだ…再スタートの為にね」
それって…何処?

そう思っていたら直ぐに目的地に着いた。
「此処は?」
タイロンさんが入っていった小さな道具屋…
エコナさんはタイロンさんが此処に住んでいることすら知らないんだわ…

「さ…此処が君の再スタートラインだ!ここから先は自身の力で進みなさい。この家の人が君を見捨てずに、最後まで協力してくれるから…」
そうお父さんに言われ、恐る恐るドアをノックする。
(コンコン)


もう私達の出番はお終いみたい…
そそくさと船まで戻り、次の目的地を目指します。
エコナバーグが立派になるのを願いつつ…



 
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