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転生赤龍帝のマフィアな生活

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三十八話:夏だ!海だ!水着だ!

 
前書き
皆さん、あけましておめでとうございます(^^)
ちょっと更新の間が空いてしまいましたがすみません。
その代わりお年玉をあげますんで許してください。
お年玉は勿論女の子の―――おっとこれはネタバレだな。

それではどうぞ。 

 

Sideバジル

始まりはいつも突然です。
突如、決定し。突如始まります。

「夏と言えば、海よ!」

「海か……はっ、いいだろう。丁度暑くなってきたんだ。プライベートビーチに連れて行ってやる。感謝しな」

拙者は親方様と一誠殿の心が珍しく一致したかと思っていただけでした。
そうだというのにあれよあれよという間に話は進んで行きました。
そして、拙者が我に返った時には話し合いは終わっており。
親方様に引きずられて水着を買いに行っている真っ最中でした。

本当に始まりはいつも突然です……。

そして、気づけば日付は変わっており。
目の前に広がっる光景は白い砂浜、青い海、青い空。
そして、水着を身に着けずに全裸で海に飛び込もうとするヴァーリ殿とブルーベル殿。
それを笑顔で封殺する、朱乃殿とユニ殿…………。

「今日も、いい天気ですね。祐斗殿」

「バジル君、気持ちは分かるけど現実逃避はよくないよ」

苦笑しながらも、拙者の逃げ道をしっかりと塞いでくる祐斗殿。
その様子に拙者の味方はどうやらいないようだと悟り、心の中で溜息をつきます。
最近自分の中の常識が色々と崩れて来た気がします。
一体何が原因なのでしょうか?

一誠殿の護衛で大分慣れたと思っていたのですが、最近の常識の崩壊にはついて行けません。
まるで、シリアスがどこかに旅立ってしまったかのような……何を言っているんですかね?
拙者は……。

とにかく、水着に着替えてきましょう……はあ。





水着に着替え女性陣が着替え終わるのを祐斗殿と一誠殿と一緒に砂浜で待ちます。
因みに拙者達の水着は特に代わり映えの無い普通の物です。
祐斗殿が『ブーメランは……勝負用に取っておかないとね』
と言っていたのは全力で無視しました。

そして、一誠殿が座っているパラソルの下にある椅子が玉座になっているのは
ツッコまないでおきました。

「そう言えば、ヴァーリさんやレイヴェルさんそれにブルーベルさんは一誠君が呼んだのかい?」

日陰の下で今にもひと眠りしそうな雰囲気の一誠殿にそう問いかけます。
確かに親方様が呼んだわけではないので必然的に一誠殿が呼んだことになります。
因みに、小猫殿の姉君である黒歌殿は親方様が呼びました。

「……俺があいつらを呼ぶと思うか? いつの間にか居たんだよ……もう考えたら負けなような気がし始めたから、理由は知らねえ」

酷く遠い眼をしながら答える一誠殿に思わず、同情の念が湧き上がってしまいます。
一体何が一誠殿をここまで………。

「バジル、祐斗、待たせたわね」

この声は親方様ですね。
そう思い、振り返ると親方様、朱乃殿、小猫殿が水着姿で立っていました。

「その……ど、どうかしら?」

赤色のビキニを身に着けた親方様が
少し、自信なさげに聞いてきますが似合っていないかと言われれば全くそんなことは無く。むしろ、どんな言葉を使って褒めればいいのか迷うほどの美しさでした。

「その……大変美しいですよ。親方様」
「そ、そう? ありがとう。あなたにそう言われると私も嬉しいわ」

ほんのりと頬を染めて嬉しそうに笑ってくださる親方様に思わずドキリとしてしまいます。

「あらあら、部長だけでなく私も褒めてくださると嬉しいですわ」
「朱乃殿もよく似合っておられます」
「ふふふ、ありがとうございます」

純白のかなり際どいビキニを身に着けた朱乃殿をそう言って褒めるます。
するといつも以上に笑って頂けたような気がするので、言葉は間違えていない様ですね。残りは小猫殿ですね。

「小猫殿は可愛らしいですね」
「……ありがとうございます」
「それにしても……どうしてその水着を?」
「……肌を余り出したくありません」

そういう事ですか……だからスクール水着を着ているのですね。
それにしても、なぜ胸の所にひらがなで『しろね』と書いているのでしょうか?
もしかして、小学校の時に使っていたのでしょうか?

「……姉様に書かれました」
「ああ、それで」

拙者の視線に気づいたのか、少し嫌そうな顔をして話してくださる小猫殿。
いたずらで書かれたのでしょうか? それとも無くさないようにでしょうか?
取りあえず、小猫殿にとっては不本意であることは間違いないでしょうが。

さて、後はクローム殿達を待つだけですね。





Sideoutバジル


「それにしても…クローム達がやけに遅くねえか? 碌でもねえことが起きる予感がするんだが……俺にとって」
「一誠、あなたって勘が鋭いわよね」
「リアス・グレモリー、その反応だと何かあるんだな? 俺にとって碌でもない何かがあるんだな?」

やばい……。
この前、大量に送られてきたから油断していたせいで今日は胃薬ひと箱しか持ってきてねえんだぞ。もし、予想外の行動で大量に消費する羽目になったらどうしてくれるんだ。

ただでさえ、今日は歴代赤龍帝(マゾヒスト・ヴァーサーカーズ)が海と言うことで活性化しまくってんだぞ?
これ以上の刺激を与えたら実体化しかねねえ……。

「まあ、碌でもないかどうかはあなたが判断することだと思うわ」
「どういう意味――「お兄ちゃん!」――あ? 何だクローム………………か?」

砂浜を駆けてくる俺の自慢の妹とその後に続くファミリーやその他の奴ら。
俺はその様子を見て固まってしまった、何も見とれてたわけじゃねえぞ?
確かに水着を見たことで放心したがそれとは意味合いが全く違う。

まあ、簡潔に言うとだ―――



((((スク水軍団、最高オオオオオオオッッ!!!))))



「何でてめえらは揃いも揃ってスクール水着を着てやがんだよおおおおおっ!!?」

全員がスクール水着を着てるとか意味が分からねえ!
ここは小学校や中学校じゃねえんだぞ!?
何だ!? そんなに集団の団結力を高めてえのか!!?

「うーん…きついなあ、脱いでいいかな?」
「ブルーベルも脱ぐ!」
「二人共。脱いだらダメですよ」
「「はーい」」

(ヴァ、ヴァーリたんのスク水……パツパツムチムチ……ゴフッ!)
(旧スクとは……分かってるじゃないか…グヒヒ)
(旧スクにニーソを組み合わせるとは……流石はご主人様の許嫁です。ユニ様)

待て! ヴァーリとブルーベルはともかくユニまでそんなことしてたのか!?
しかも他の奴らよりも張り切ってニーソまで履いているのか!?
というか無茶苦茶、似合っているところがかなり複雑だ。
そして顔を赤くし恥ずかしげに俯いているが時折俺の反応を見るためにチラチラと上目づかいで伺ってくる仕草は反則だ。

「わあ、皆さんとおそろいです!」

楽しげに笑うアーシアの無邪気さに癒される。
そして、ただ単に乗せられただけなんだろうと判断する。

「ふむ、これが日本を代表する水着か。しかし、胸の所が若干苦しいな……」

(ゼノヴィアたん! お胸と水着の間にどうか僕を挟んでください!!)

お前も、少しは疑いという物を覚えたらどうだ? ゼノヴィア。
そんなんだから、変態に狙われて俺の胃が大変なことになるんだよ。
それと、胸の所を余り弄るな。変態の抑えが効かなくなって来てやがる…っ!

「大丈夫ですわ。その内、その締め付けが快感になりますから。ね? お師匠様」

(その通りです。縛られることは何物にも変えられない快感を与えてくれます。まさに至高のお仕置き(ご褒美)……っ!)

(てめえらは、まず常識に縛られろ!!)

もう嫌だ、焼き鳥女が出て来たせいで一気に胃の痛みが増してきやがった。

「お兄ちゃん…どうかな?」
「悪い、似合ってはいるが余りの出来事に頭がついて行きそうにねえ」

(クロームたんも小さいけどイイッ!!)

そう言えば、入水自殺ってここなら簡単に出来るよな。

(相棒!? 正気に戻れ!!)

はっ!? あ、あぶねえ。
危うく現実逃避してそのままこの世とサヨナラするところだったぜ。
変態、恐るべしっ!

「イッセー君、胃のあたりを抑えてどうしたの!? 人工呼吸なら任せて!」
「心配してくれるのは嬉しいが、その治療法は絶対間違ってんだろ! イリナ」

そう言ってイリナの方を向くとそこには予想していたスクール水着姿のイリナはいなかった。代わりにいたのは―――

「てめえは競泳水着かよ!? いや、スクール水着よりはましだけどよ」
「だって、イッセー君を虜にするには他の子と一緒じゃ、ダメでしょ?」

そう言って、えへへと笑いながら俺の背中に密着してくるイリナ。
こいつ…わざと当ててきてやがるな。
だがこの程度で俺が動揺すると思うなよ?

(スク水には動揺しまくってたがな)
(むしろ、あのカオスに冷静に対処出来る奴がこの世に存在するか?)
(すまん、相棒の言う通りだった)

分かればいいんだよ。分かればな……何の解決にもならねえがな。
そろそろ、胃薬を飲まないとやばそうだな。
というか、そもそもなんでこいつらはこんなことをしてんだ?

第一、クローム達はちゃんとした水着を持ってきてたはずだ。
間違ってもスクール水着なんざ持ってきてねえはずだ。
だとするとそれを用意した奴がいるはず―――

「イッセーちん。私の『スク水大好きなイッセーちんを喜ばせよう! 作戦』は気に入ってくれたかにゃ?」
「てめええええかああああああああっっ!!!」

最後の最後にニヤニヤしながら現れたカス猫のセリフに怒りが爆発する。

「人の家族に変なことを吹き込んでじゃねえよ!
 それと俺にはそんな趣味なんざねえ!! とんだ風評被害を出しやがって!!」
「にゃはははは! ちょっとしたジョークにゃ。その代わりお姉さんのスク水姿も見れるんだから機嫌を直すにゃ♪」

そう言って、わがままボディを堂々と俺の目の前にさらけ出して来るカス猫。
やめろ! そんなことをしたら絶対に―――


(ヒャッホオオオオッッ!! 大きなお胸で水着がパッツンパッツンになってはちきれそうになってる黒歌様が最高オオオオオオオ!! 出るとこが出て引っ込むところは引っ込んでいるボディラインがセクシィィィィィィッッ!!)


出やがった! 最近一番と言っていいほど活性化している変態が出やがった!!

(ここからは私のステージです! 誰にも邪魔はさせません!! さあ、一誠様。思う存分、黒歌様の誘惑を受けてください。そのための協力なら惜しみませんよ!!)

くそがっ! 俺まで巻き込む気満々じゃねえか!!
どうする? というかなんで俺はこんな苦労する羽目になったんだ?
………ああ、なんだ。答えならすぐ目の前にいるじゃねえか。


―――ジャキッ!

「い、イッセーちん?」
「何だ? カス猫」
「にゃ、にゃんで銃をこっちに向けてるのかなーって?」
「死ね」
「凄く、分かりやすい答え!?」

てめえのせいでこんな目にあってんだよ!
わびとして一回死んで来い!!

炎の鉄槌(マルテーロ・ディ・フィアンマ)!」
「にゃあああああ!! 殺す気!? 本当に殺す気かにゃ!!?」
「待ちやがれ! カス猫が!!」

攻撃は避けた物の俺の本気を感じ取ってすぐさまその場から逃げ出そうと駆け出すカス猫。
俺は逃げるカス猫を追ってすぐさま砂浜を駆けはじめる。
が、それが不味かった。

「砂浜で追いかけ合う男女……はっ! いけないわ!! イッセー君がまたフラグを立てようとしてる! こうなったら、私もイッセー君を追うんだから!!」
「待て! イリナ!! てめえは何でトンファーを持って俺を追ってんだ!?」
「ノリよ!」
「ノリで俺の方に鎖を伸ばしてきてんじゃねえよ!!」

俺がカス猫を攻撃し、イリナが俺を攻撃する。
立ち止まれば俺とカス猫に待ち受けるのは死だけだ。
そんなデスレースが今ここで始まった。

「………バジル、先に遊んでおきましょうか?」
「そうですね、親方様」
「あらあら、私もあちらに混ざってきましょうか?」
「「収集が付かなくなるからやめて(ください)!!」」





結局、デスレースはカス猫やクローム達が本来の水着に着替えてくるために終了した。
因みに、イリナは元々、競泳水着だったらしいので俺とイリナに関してはついさっきまで組手をしていた。
後、ブルーベルは面倒くさいと言う理由で着替えずにそのまま遊んでいる。
それと……組手の過程でイリナの水着がずれてかなり危うかったとだけは言っておこう。
どこがずれたかは俺の口からは言えねえ。

(イリナたんのお尻に水着が食い込んで……ブヒイイイッ!)

(あと少しで大事な所が――おっと、これ以上は失言でしたね)

まあ、あれだ……目のやり場に困ったな。
最近、イリナに関してはそういう事をされると反応に困るようになってきた……。
まさか、イリナの事を意識しているのか?

「イッセーさん!」
「アーシアか、今度はまともなやつを着てきたみてえだな」

アーシアの水着はピンクのセパレート型の水着だ。
下手な装飾が無い分、本人の元の良さが引き出されている。

「お兄ちゃん…これはどうかな?」
「ああ、悪くはねえな」

上目遣いでそう尋ねてくるクロームの姿は水色のビキニに
腰にはパレオを巻いた格好だった。
うん、俺の妹はやはり可愛い。

「一誠さん……その私はどうでしょか?」
「似合って―――ゴホッ! ……悪くはねえ」
「ふふふ、素直じゃないですね」
「るせえ……」

嬉しそうに笑うユニの顔がまともに見れずに顔を逸らす。
ユニの今の姿は綺麗な花柄が入った。ワンピースタイプの水着だった。
何故かしらねえが、ユニには花が合うな。

「じゃーん! お待ちかねの黒歌様の登場にゃ!」
「今すぐ、カッ消したくなる顔だな」
「せめて水着に触れて欲しいんだけど!?」

ニャー!ニャー! とうるせえ、カス猫の水着姿は意外というべきか
そこまで派手な物ではなく。
サイズの問題からか紐で留めるタイプのビキニで色は黒色だった。
ただ、元々のスタイルがいいので全く地味になると言うことはなく、結局のところ
何を着させても似合うだろうって所だな。
……口が裂けても言うつもりはねえがな。

(スク水はスク水でいいですが。ビキニも胸元が開かれていて、まるで一誠様を誘っているようで興奮しますね。それに上手くいけばポロリのチャンスも…っ!!)

取りあえず、変態は黙ってろ。
さて…のこりはゼノヴィアと……………ヴァーリと焼き鳥女か……嫌な予感しかしねえ。

「すまない、待たせたな」

この声はゼノヴィアか。なら安心だな。
そう思い、振り返る。



「紐だけで隠すのはかなり強くに締め付けないといけなくてな。だがこの締め付けを快感に変換できればイリナのお仕置きにも耐えられるようになると思ったんだ」



「そっち方向に覚醒して耐えようとすんじゃねえよ! 頼むからやめてくれ!!」

胸が押しつぶれんばかりに紐で固定し、さらに下は完全なTバック状態で尻が丸見えになっている姿で爆弾発言をするゼノヴィア。
変態に覚醒することは救いじゃねえからやめろ!
これ以上俺の周りから常識人を消さないでくれ!!

(ぜ、ゼノヴィアたん……お持ち帰りイイイイイイッッ!!!)

ああ、急激にカオスになってきやがった…っ!
しかもまだ全員が揃ってないとかどんないじめだよ!!

「イッセー君! 僕も着替え終わったよ!!」
「ああ、何だ。ただのマイクロビキニか。もう、お前は裸じゃねえなら何でもいい」

ヴァーリの恰好は極限まで布の面積を削ったと思われるほどのマイクロビキニだ。
しかしだ。この程度ではもう俺は動じない。
むしろ、いつもの裸ではなく水着を着ていてくれたことにホッとしているレベルだ。
………慣れってすげえな。

「一誠様、私の姿はどうでしょうか?」
「焼き鳥女の声が聞こえるがこれは幻聴だな」
(現実だ。だから早くその閉じた目を開けろ、相棒)

くそっ! 現実逃避もする暇がねえってのかよ!?
ああ! こうなりゃ、やけくそだ!
覚悟を決めてバッと目を開けるとそこには―――



(全裸に亀甲縛りとは考えましたね。レイヴェル)



「頭、とち狂ってんのか、てめえ!!?」
「そんな……そんなに罵倒されたら―――興奮してしまいますわ!」
「もう嫌だ、こいつ!!」

一回だ。一回しか説明しねえからな?
今の焼き鳥女の姿はエルシャが言った通りに全裸に亀甲縛りという状態だ。
しかし、どういう仕組かは知らねえがしっかりと乳首と大事な所は縄で隠してある。
もう、色々と訳が分からん。

そして、周りの目が何故か焼き鳥女ではなく俺に向いていて。
『そう言う趣味だったの?』的な目線になっているのが死ぬほどつらい。
それと、イリナは若干嬉しそうな顔をするな!
これは誤解だ! 俺は変態じゃねえ!!

「え、えっと…一誠さん」

ユニが何かを決心したように俺の前へと歩み出す。
違う、これは誤解だ! 俺にはそんな趣味なんかねえんだ!
だから俺の事を勘違いしないでくれ!!

そんな目線を必死に向けるがユニは構わず、俺の方に近づいて来てピタリと止まる。
そして、顔を真っ赤にしながら口を開く―――



「出来れば普通の方が良いですけど。……い、一誠さんが望むなら……私も頑張ります!」



「誤解だああああああああっ!!!」

俺の悲痛な叫びは青い空へと空しく響き渡って行った。





「泳ぎを教えて欲しいだと?」
「そうにゃ、私と白音は猫又だから泳げないんだにゃ」
「……お願いします」

一回も泳いでもいないのにも関わらず、疲れ切って日陰で寝ていた俺。
そんなところに頼んできたカス猫と塔城小猫。因みに疲れた原因は誤解を解くためだ。
もう、思い出したくもねえ……。
まあ、それはいいとしてだ。

「なぜ、俺なんだ? バジルにでも頼めばいいだろうが」
「イッセーちんが一番暇そうだったからにゃ」

さも当然と言った風に言い返す、カス猫に思わずため息が出る。
そもそも、悪魔は俺にとっては敵だ。本来なら目についた瞬間に殺すもんだ。
リアス・グレモリー達を殺さないのはバジルを預けているからに過ぎない。

何の用もねえ、カス猫ならいつでも殺したっていい。
それを分かってのか? このカス猫は。
そんな意味を込めて軽く睨みつける。

「そんなに見つめられたら……照れちゃうにゃ♪」
「うぜえ!」
「にゃん!? 女の子の頭にいきなりチョップは酷いにゃ!」
「安心しろ、お前は特別だ」
「全然嬉しくないにゃ!!」

敵であるてめえを気まぐれで殺さないでおいてやってるんだ。
感謝するんだな。

「……あの、漫才は良いので答えを」

ジト目で俺達を睨んでくる塔城小猫………何でこいつもスクール水着を着ているんだ?

(小猫たんのスク水ウウウウッッ!! コネコンの私の心を揺さぶるまさに至高の姿あああああっ!! 胸の『しろね』の文字を見ただけで鼻から迸る情熱が!!!)

変態が騒ぎ出すからかなり困るんだがな。
まあ、言っても分からねえだろうから言うつもりもねえが。
それに言ったら今度は俺が変態扱いされかれねえ。
それだけはごめんだ。さっきも死ぬ気で誤解を解いたっていうのによ……。

「……兵藤先輩?」
「何でもねえよ……けっ、いいぜ。暇つぶしに教えてやるよ。ありがたく思え」

可愛らしく、コテンと首を傾げる塔城小猫にそう返す。
それと、横でその仕草を見て悶絶しているカス猫は無視してもいいよな?





「力を抜け。固い状態だと沈む」
「……はい」
「それが出来たら足を動かして見ろ。ただバタバタ動かすんじゃなく、水を蹴るイメージをしろ……心配すんじゃねえ。手は掴んでおいてやる。溺れりゃしねえよ」
「……はい!」

塔城小猫が若干不安そうな顔を見せたので手を掴んで先導してやる。
すると不安が無くなったのか顔を明るくして挑み始めた。
クロームも昔は泳げなかったからな……その時にも教えたから人に教えるのはこれで二回目か。

「イッセーちーん。何で白音には手とり足とり教えてあげてるのに
 私には教えてくれないのにゃ?」
「説明はしてやってんだ。てめえは自分一人でやれ」

カス猫を無視して、塔城小猫の指導に集中する。
だが、それを邪魔するかのごとくカス猫の口から禁句が飛び出してきた。

「イッセーちんってもしかしてロリコ―――」
「よし、今からマンツーマンで指導してやる。今すぐ沖に行くぞ。丁度いい具合に鮫が良く出る場所があるからな」
「エサ!? 私を鮫のエサにする気かにゃ!?」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえ! さっさと死――行くぞ!!」
「今絶対、死ねって言おうとしたよね!? 嫌にゃ! 絶対行かないにゃ!!」

聞き分けの悪い奴だ。人は命の危険を感じながら修行すればあっという間に上達する。
だからこそ、俺は親切で連れて行ってやろうと思っているのに。
それを跳ね除けるたあ、いい度胸してんな。

「いいから、逝くぞ! カス猫!!」
「嫌にゃ! 白音を残して死ねないにゃ!! 後、絶対『行く』の字が違うにゃ!!」
「気のせいだから、待ちやがれ!!」

逃げるカス猫を今度こそは逃がすまいとして、首根っこを掴む様に腕を伸ばす。
しかし、その腕はギリギリのところで躱され、代わりに背中にある紐に引っ掛かった。


―――スルリ


「あ?」
「にゃ?」

違和感を感じ立ち止まってこちらを振り返るカス猫。
先程、引っ掛かった紐の正体―――水着を茫然と手にする俺。
そして、水着が俺の手にあるということは当然のことながら………丸見えと言うことだ。

「………………わ、悪かった」

顔を逸らしてわびの言葉を言う俺。

「…………にゃっ!? い、イッセーちんの、エ、エッチ!!」

状況に気づいたのかバッと胸を腕で隠す。そして余程混乱していたのか、顔を真っ赤にして普段の行いからは想像もできない乙女のようなことを言いだすカス猫。

(イイイイイイヤッホオオオオオオオオッッ!!! ポロリ来た! ポロリ来た! 黒歌様のポロリ来たあああああっ!! 今なら全てを思うがままに出来そうです!!!)

ポロリに反応して狂喜乱舞し始める変態。

「イッセー君……少し、“オハナシ”があるんだけど?」

いつの間に居たのか分からないが、俺の首筋にトンファーを押し付けてくるイリナ。
声を聴いた瞬間から冷や汗が止まらない。

「待て、イリナ。まずは落ち着いて話を聞くんだ」
「みんな! イッセー君の周りを包囲して!!」

「「「「了解です!」」」」

「てめえらいつの間に!?」

イリナの掛け声とともに俺を取り囲む我が家の女性陣+焼き鳥女&ヴァーリ。
こいつら、一体どこでこんなチームワークを身に着けやがったんだ!?

「まずは、一誠さんの言う通りに黒歌さんから話を聞いてみましょう。それで一誠さんが良くないことを考えていたら……ふふふ」

まずい、ユニ笑顔が怖え……鳥肌がたってきやがった。

「それで、黒歌さん。一誠さんは何をしようとしていたんですか?」
「イッセーちんに殺られそうになってたにゃ」


「「「「「ヤられそうになってた!?」」」」」


「字が違えよ!!!」

必死にそう叫ぶが絶対零度の視線を俺に向ける女性陣には全く効果がない。
くそっ! どうすりゃいいんだ!?
……そうか! 塔城小猫なら事の成り行きを見守っていたはずだ。
癪ではあるが背に腹は代えられねえ。塔城小猫に視線を送る。
だが、塔城小猫はいつの間に出していた白い尻尾を楽しげに振り。
耳もまるで笑いでも耐えているかのようにヒクヒクと動かし、満面の笑みを浮かべて口パクでこちらに言葉を伝えて来た。

「(……面白そうなので、ごめんなさい)」

「くそったれがああああああっ!!!」

味方がいねえ! 結局一人で立ち向かうしかねえのかよ!!

「一誠様……私は悲しいです。どうしてその迸る青き劣情を私にぶつけてくださらなかったのかと」
「悲しくなるポイントがおかしいだろ! 焼き鳥女!!」

ダメだ。息を荒くしてそんなことを平然と言う奴を
敵にまわした時点で勝てる気がしねえ。
相性が悪すぎる。

「お兄ちゃん…お仕置きだね」
「イッセーさん……私は信じてます。お仕置きが終わった後は元のイッセーさんに戻っているって」
「お仕置きは確定事項かよ!?」

くそっ! クロームはともかくとしてアーシアは俺の事を信じてくれると思ったのに!
もう、俺をお仕置きすると言うことが確定事項になっていて考え直す素振りが全く見えねえ。

((((お仕置きの時間だあああああああっっ!!!)))

今の俺にてめえらの相手をする余裕はねえから静かにしてろ!!

「酷いよ、イッセー君……僕はイッセー君のことを信じてたのに……でも、お仕置きをしたらきっと戻ってくれるよね!」

(あ、後少し、前かがみになってくれたら乳首が―――見えたあああああっ!!!)

集中力が下がるから変態は頼むから黙ってろ!
それと、ヴァーリはその格好で不用意にかがむな!!
色々と見えて困る。まあ、普段から裸だからあまり変わらねえかもしれねえが。

((((見えそうで見えないから見えた時に感動できるんです!!!))))

(知るか!!)

変態と常人の思考回路を一緒にするんじゃねえ!!
俺はしごくまともな人間だ!!

「それじゃあイッセー君の――」
「お仕置きタイム――」
「スタートですね」

「けっ! 上等だ!!」

もう今の状態じゃあ、止まりそうにないのでこいつらが落ち着くまでの間逃げさせてもらうとするか。すぐに『赤龍帝の手袋(ブーステッド・グローブ)』を出してあいつらの出方を見る。

「私から行きます! 極限(マキシマム)イングラム! 水かけバージョン!!」

高速のフットワークから生み出される拳の三連撃で水の弾丸を作りだし俺にぶつけてくるアーシア。俺はそれを最小限の動きで躱していく。本来ならここでカウンターにでも入るところだが俺はこいつらを傷つけるつもりはねえからな。

「次は私…!」
「水の柱を全方向からか……あれが本物か」

全方向から襲い掛かってくる巨大な水の柱を幻覚で作りだす、クロームだったが超直感を持っている俺には通じず、有幻覚だけを見破られてあっさりと避けられた。
有幻覚と幻覚の切り替えが上手くなりゃ、俺でも避けれなくはなりそうだがまだまだだな。

「私は甘くはないよ?」
「けっ! イリナか」

悪態をつきながらイリナのトンファーを横に飛んで避ける。
すると俺が立っていた場所が大きく抉れて穴が出来る。
それと同時に砂が舞い俺の視界を狭くす―――ちっ!

足元から出て来た鎖をバックステップで間一髪で避ける。
てっきり、砂で視界を隠してそこから攻撃してくると思ってたが、足元からか。
俺を攻撃した時点で隠していたもう片方のトンファーから伸ばしていたのか。
しかも俺の着地地点も計算して……器用なまねをしやがる。

「もう、大人しく捕まってよ」
「俺は何もしてねえよ!」
「取りあえず、私に黒歌さんと同じことをしてくれるまで許さない!」
「何でてめえの願望が入ってんだよ!? それと何もしてないって言ってるだろうが!」

ダメだ、こいつら。全く止まる気がねえ。
一端、眠らせるしかねえか?

「ヴァーリさん、レイヴェルさん、お願いします!」
「分かったよ。ユニちゃん」
「分かりましたわ。ユニ様」

何故だ!? なぜ、ユニが統率をとっているんだ!?
あいつらを従わせるとか俺でも出来ねえぞ!
流石はあいつもボスだってことか?

「行くよ! それ!!」
「結界は任せてください」

俺とヴァーリの周囲だけに結界を張る焼き鳥女。
何をするつもりだと思っていたところにヴァーリが空から
馬鹿でかい魔力弾を海に撃ち込んだ。
まさか、あいつ―――

「これで津波の完成だよ!」
「結界を張ったのはそのためか!」

魔力弾の衝撃を受けた海水は逃げ場を求めるが結界が張ってあるがために壁にぶつかりその高さを何倍にも増していく。

「……やってくれんじゃねえか」

何十メートルにも膨れ上がった波を見てそう呟く。
飛んで逃げるか?
いや、それだとヴァーリの思う壺か……なら―――

「正面から受け止めるだけだ。カストカゲ!」
『了解した』

『死ぬ気の零地点突破・初代(ファースト)エディション!!』

手を海水に浸し俺の炎を出して混ぜながら、そのまま一気に津波を凍らせていく。
これで、どうだ。さて、次はどいつが来る?
結界が消えていくのを見ながら堂々とした態度で相手が来るのを待つ。
すると背後から足の音が聞こえて来たので避けるために足に力を入れ―――



「ミランダさんが撮った一誠さんの『㊙お風呂アルバム』をばら撒かれたくなかったら、止まってください!」



「ユニイイイイイイイイイッ!!?」

―――逃げれるかあああっ!! 逃げ出したいの堪えてグッと足を止める。
どういうことだ! 何だその『㊙お風呂アルバム』って!?
いつの間に撮ってたんだミランダは!?
と言うか、㊙ってなんだ!? 想像するのが怖え……。

「はい、捕まえましたよ。一誠さん」

逃がさないようにギュッと俺の体に抱き着いてくるユニ。
お互い水着しか着ていないのでもろに肌の感触が伝わってくる。
そして、俺の許嫁がしっかりと俺の弱みを握っていたことに戦慄する。
これは結婚した場合は俺が尻に敷かれるしかねえのか?

「………で、お仕置きってのは何をする気だ?」
「? もう、始めてますよ」
「あ?」
「私達が満足するまでギュッとさせてもらいます」

…………は?
そんな事の為にあそこまで必死だったのか? こいつらは。
それに、こいつらが勘違いしたようなこと通りなら余りにも軽すぎやしねえか?

「最初から鈍感なイッセー君が変なことするなんて思ってないよ」
「その割には殺気が半端じゃなかった気がするんだが? イリナ」

冗談にしてはやけに力が籠ってただろ。
絶対半分以上は本気で俺を殺りに来ていた。
まあ…もう、どうでもいいか。

空いていた背中に抱き着いてくるイリナにため息をつく。
この程度の罰なら受けてやっても構わねえか……。

「二人だけずるい…」
「あうう、わ、私もイッセーさんにギュッとしたいです」
「僕もイッセー君にギュッとするよ!!」
「ああ…放置プレイもいいですわ!!」
「ねえ、白音。私もあそこに加わった方がいいかにゃ?」
「……私に聞かないで下さい。姉様」

結局その後、全員に抱き着かれた結果一時間以上動けなかった。
ちっ、変な疲れ方しちまったぜ。


((((ご褒美、ありがとうございました!!!))))


(黙れ! 変態共!!)

 
 

 
後書き
スク水を求める声が意外とあったので水着を二つ書くと言う暴挙に出てしまいました。
反省はしていません、はい。

それと今回、黒歌との絡みが多かったのは作者と一人の『紳士(変態)』の願望ですww
他の作品でもメインヒロインにするぐらい好きなんですよね。
だからといってイッセーの正妻の座が奪えると言うわけではありませんが(笑)



シリアス「………俺という存在は一体何なんだろうな?」 
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