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第五章
「これで文句つけられるんだったらそれこそな」
「それこそ?」
「それこそっていいますと」
「あいつの料理でないと駄目だな」
厳しい顔射なっての言葉だった。
「カルロスのな」
「あの人のお料理でないとなの」
「駄目っていうんですね」
「ああ、あいつしかないな」
それこそ、というのだ。
「そうなるとな」
「カルロスさんのお料理は凄いからね」
「滅茶苦茶美味しいですからね」
「もうあの人しかない」
「そういうことですか」
「ああ、けれどな」
しかしだった、ここでフェリペは難しい顔になってこう二人に言った。
「あいつこの前自分の店を出したばかりでな」
「うちのお店と同じ理由よね」
「そのことは」
「ああ、だから忙しいんだよ」
それが今の彼だというのだ。
「その日本人の親子が来るのは日曜の何時だ?」
「夜に来るって言ってるわ」
「大体十一時とか」
「十一時か、あいつの店は九時までだ」
居酒屋ではないが結構遅くまで営業していると言えるだろうか。
「十一時だとな」
「もうお休みよね、カルロスさん」
「明日の準備とかも終えて」
「ああ、だからな」
とても、と言うフェりペだった。
「あいつに助けは借りられないだろうな」
「けれど兄さん」
デリラは兄にそれでもと言った。
「それこそよね」
「ああ、御前等のこの料理で言い掛かりならな」
それこそ、とだ。また言うフェリペだった。
「俺でも無理だ、今の御前等俺の料理と同じ位だ」
そのレベルの腕だというのだ。
「だからな」
「カルロスさんでないと」
「俺の知っている限りだとあいつしかいない」
それこそ、というのだ。
「ここはな」
「それでも、なのね」
「大忙しの後で頼むもな」
それも、というのだ。
「よくないからな」
「じゃあ止めるの?」
「いや、またそいつ等に言われるのも癪だ」
それにだった。
「店の中でそんな騒ぎ起こす様な奴を放っておけないからな」
「後で真似する奴が出て来るからね」
「ああ、だからな」
ここは、というのだ。
「その日本人の親子を黙らせてやるぜ」
「お料理で」
「絶対にな、そうしてやるぜ」
「じゃあどうするんですか?」
ハイメが不安そうに義理の兄である彼に問うた。
「一体」
「頼んでみるしかないか」
カルロスに、と言うフェリペだった。
「あいつにな」
「それで断られたら?」
「その時は仕方がない」
最早、というのだ。
「俺達で何とかするしかない」
「そうなるのね」
「とにかく頼んではみる」
フェリペはデリラに難しい顔で言った。
「あいつしかいないからな」
「うちのお店の危機を救えるのは」
「ああ、あいつしかな」
こうしてだった、フェリペは今度はだった。
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