D.C.Ⅲ〜ダ・カーポⅢ〜過去の人がやってきた⁉︎〜
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さくら「お兄ちゃ〜ん‼︎」ガバッ杏「園長先生って昔はこんな感じだったのね」茜「今とあんまし変わんないね杏ちゃん」
前書き
咲姫や雪音の年齢がおかしいと思いの方、これはご都合主義です。私、つまり作者がよければ良いのです。
視点の際、義之達の混同を避ける為 未来の義之は義之(未)といった感じで表記します。
日付は変わって5月17日の朝。芳乃家にある義之の私室の扉を音もなく明け侵入する影があった。
「ふふっ、よく寝てる。よく寝てる~。・・・久しぶりに起こしたあげるからなあ〜どんな起こし方にしようかな?」
そう言って義之のそばまで来て思案するこの家の家主でもある女性ー芳乃さくらは義之が眠るベットの前で考え込む。
「う~ん、む~ん。あれも良いし・・・これもいいなあ・・・うにゃあ~迷っちゃうなあ~」
暫くしてどんな起こし方をするのか決めたのか考えるのを止めるさくら。
「一番単純な奴でいっか。これからも起こす時間はあるんだし。よしっ」
さくらは頷くと笑顔のまま・・・
「よっしゆっきく~ん、あっさだよ~!!」
義之の上に飛び乗った。
「ぐぼっ!?」
飛び乗ると同時に義之の悲痛の叫びが芳乃家中に響いた。
義之side
昨日の衝撃的な事実を知った日から一日が過ぎた。まさか、俺が音姉と由夢と結婚していて2人との間に子供を作ってた事実を整理して俺が使っていた部屋で就寝した。
・・・・・
・・・・・・・・・・・
俺は夢を見ていた・・・いや見させられていた、言う方が正しいかもしれない。
何故そう思うのか、それは俺が枯れない桜の木の前で若い純一さんとさくらさんに容姿が似ている人と対面しているからだ。
俺が持つもう1つの特別な力『他人の夢を見せられる』というものだ。
この力は俺の意志に関係なく無意識に人の深層心理に入りその人物が見ている夢を見るというもので物凄く気分の良くない力だ。
「ここは、夢?」
「ここはアタシが純一と話すための空間さ。で、アンタは誰だい?」
周りの景色を見渡して夢であることを確認していると女性が話しかけてきた。
「えっと・・・俺は桜内義之って言います。そのさくらさんの可能性として生まれる子供です」
俺は真実を話す。
「さくらの子供だって⁉︎どういうことだよ?」
純一さんは訳がわからないという顔だ。
「俺は、さくらさんが50年以上掛けて研究した枯れない桜の木のサンプルにさくらさんが祈って生まれたのが俺なんです」
俺の説明に息を飲む純一さん。無理もないかもしれない。いきなりこんな事言われたら、誰だって困ってしまう。
「あれ?純一に義之?何してるんだ」
声が聞こえて振り返ると清隆が立っていた。
『清隆⁉︎』
全員の声が聞こえてきた。でもこの人も知ってる?
「祖母ちゃん、知り合いなのか?」
「何言ってんだい。知ってなきゃ名前も呼ばないよ。かったるいからね」
由夢そっくりなことを言う。そうか、由夢の『かったるい』は純一さんから、純一さんはお祖母さんからの遺伝か。つまりこの人が初代『かったるい』なのか。
「それで、あなたは?」
清隆が最もな疑問をぶつける。
「ちょっとお待ち。………これで分かるんじゃないかしら?」
そう言って体を眩い光が覆う。暫くすると、光が収まり現れたのは着物を着たリッカだった。
「リッカさん⁉︎えっそれじゃあさっきのはリッカさんの未来ですか⁈」
「ええ、そしてさくらの祖母であり、純一の祖母でもあるのよ」
姿を変えると同時に口調まで変化した。
待てよ。今の言葉を思い出せ。
さくらさんや純一さんのお祖母さんってことは俺の曾お祖母さんってことなのか⁉︎しかも、音姉や由夢の曾々お祖母さんってことになるぞ・・・
俺がそのことを話そうとした瞬間、
「よっしゆっきくん~。あっさだよ~!」
という元気な声と共に身体に、とりわけ腹部にすさまじい衝撃が走り俺の意識は強制的に現実へと引き戻された。
「な、何だ!?何事だ!?」
何が起きたか分からず目をパチクリさせていると顔にさらさらな金髪が当たってくすぐたかった。
そんな髪の毛の持ち主で元気がいい人なんて1人ぐらいしかいない 。
「おはよ、義之くん♪」
「さくらさん、おはようございます」
太陽の光が眩しいくらいの笑顔で挨拶されたのでこっちも返す。
「さくらさん、流石に激しすぎるんでもう少し、優しく起こしてくれませんか?」
「ああ、やっぱり?」
さくらさんもそう思っていたのかさっさと退いてベットの脇に立つ。
「改めて。おはよ、義之くん」
「ふぁ、あああ~」
芳乃家を出ると同時に隣の家からも純一さん達が出てきて邂逅一番に純一さんが大欠伸をする。
「もう、兄さん。これから学校なんだからシャキッとしてよ」
音夢さんが注意する。
「んなこと言うが音夢よ。俺はお前のせいでほとんど眠れなかったんだが?」
「あっ弟君!ちゃんとホックする」
今度は音姉が出てくると、俺の服装を直し出す。
「いいなあ〜、羨ましすぎるぜ〜。俺だってホックしてないのに」
後ろで渉が泣いているのだろうか?声がさらにキモい。
「お姉ちゃん、何もみんなの前で直さなくても」
「ダメです。弟君がだらしないとお姉ちゃんが恥ずかしいんだから。それに服装を正すのは風紀を正すのと同じなの」
俺の学ランのホックを閉めた後、えっへんと言わんばかりに腰に手を当てる。
確かに正論だけど、いい歳の異性にここまでしない。でも音姉だし、なにより音姉の『弟君はそんなこと言わないよね?光線』によって強く言えない俺もどうかと思うけど・・・
「にゃはは、音姫ちゃんは相変わらずだね」
「お兄ちゃん、音夢ちゃんおはよ♪」
そこに2人のさくらさんがやってきた。未来のさくらさんはスーツで過去のさくらさんは髪を両側黒いリボンで結び、後ろは下したままにする。服装は俺達の居た時代の時の服を着ている。どっからどう見ても俺達の知るさくらさんだった。
「あっ学校では僕の事さくらさんって呼んだらダメだよ?学校では義之くんの歳の離れたお姉さんっていうことで、桜内雪って名乗るからね。雪先生って呼んでね」
未来のさくらさんは笑いながら言う。
そっか昔のさくらさんが居るんだから、今のさくらさんをさくらさんって呼んだら怪しまれるよな。
「そろそろ行こっか?学校には遅れちゃダメだしね」
さくらさんの言葉にみんな頷いて、歩いて行った。
杉並がいないって?アイツならとっくに学校に向かっている。
「しかし、まさか現生徒会長の言葉で今の学園長が、さくら先生に学園長になってもらうのを納得するなんてな」
空き教室で待たされていたら、渉が言い出した。
学校に着き、咲姫の交渉であっさりと俺達は未来の風見学園で過ごすことができるようになり、昔のさくらさんは学園長に復帰となり、未来のさくらさんは一教師として風見学園の付属と本校で生物を教えることになった。
「そうね。それだけ今の生徒会が凄いってことよ」
渉の言葉に杏が肯定する。
「恐らく、今の生徒会は朝倉姉が生徒会長だった時と同じだろうな。これは張り合いのある」
『うわっ⁉︎』
いつの間にか、杉並が俺たちの後ろにいたため俺達は驚いて、声を上げてしまった。
「あなた達が転校生ね。こっちです、付いてきてくださいね」
教室で待っていたら、扉が開き入ってきたのはあの時の教育実習生だった高松久美子先生だった。
「私が持っているのは3年2組です。皆さんいい人達なので仲良くしてくださいね」
教室に向かいながらクラスについて語る。
俺達は2組か、昔のななかのクラスだな。
教室の前まで来ると待つように言って中に入った。
どんな奴がいるだろうな。まあ、どうにかなるだろう。
俺はそう腹を括って、呼ばれたので教室に入った。
「桜内義之って言います。趣味は家事と独学でギターやってます。どうぞよろしく」
義之sideout
清隆side
俺達は今日もいつも通り登校して教室で姫乃達と話していたチャイムが鳴ったので席に着く。
先生が入って来て、雪村が号令してH.Rが始まった。
「皆さん、今日は転入生が来ています。なのでまずその人達から自己紹介してもらいましょう」
では入ってきてくださいという先生の言葉に扉が開き、入ってきたのは昨日も見たあの少年達だった。
「俺は桜内義之って言います。趣味は家事と独学でギターやってます。どうぞよろしく」
1人目の少年が自己紹介する。家事が趣味か。俺や姫乃に似てるな。
「初めまして、あの、月島小恋です。趣味は占いでバンドとかやってます。あの、えっとよ、よろしく」
1人目の少女はとても恥ずかしがり屋のようだ。
「花咲茜で〜す!人の話を混ぜっ返すのが好きで、特に小恋ちゃんを弄るのが大好きです。得意なのはお裁縫とお料理。後は、特に特徴のない女の子です!」
2人目の女の子は、なんて言えばいいのか。要は雪村みたいなもんか。
「雪村杏よ。好きな物は甘いものとお祭り。後は、人の弱みを握ることね。人の失敗を見過ごさないから、私の前で失敗するのは控えた方がいいわ」
・・・・なんて特技だ。気を付けないとな。弱み握られるのは勘弁だ。
それにしても雪村?あの雪村と関係あるのか?
「どうも白河ななかです。歌うことが大好きです。人前で歌うのはちょっと苦手かな?よろしくね」
「うおおおおお‼︎美少女がたくさんきたー!」
耕助が我慢できなかったのか騒いだので転入生が少し、ビビる。
「えっと気を取り直して、どうも板橋渉っす。音楽が好きで、月島達とバンド組んでるで、良かったら見にきてくれよな!」
なんだか、耕助に似た雰囲気を感じる奴だな。
「杉並だ。俺と同じ名前の奴が居るかもしれんが俺は俺だけだ。よろしく頼む」
えっ⁉︎ええええ⁈な、何でここに!
『えっ⁉︎ええええええええええ⁈』
全員の声が重なる。それだけ驚いているってことだな。
「連絡事項は特にありません。体育祭に向けて頑張ってください。以上です」
こうしてH.Rは終わった。
昼休みになり、今日は弁当が無いから、耕助でも誘って学食でも行くか。
「あの、兄さん一緒にお昼食べませんか?ちょっと作り過ぎちゃいまして」
そう思って立ち上がったら姫乃がお弁当を持ってこっちに来た。
姫乃とお弁当か、それもいいな。よしっ
〜〜〜〜♪
返事をしようとしたら、いきなり携帯が鳴り出した。耳を澄ましてみると俺だけじゃなくて、姫乃やさらにも届いたようだ。
「誰だろうか?こんな時に」
俺は携帯をポケットから取り出して、画面を見るとメール受信のお知らせだったので、メールを見てみると
差出人不明でこう書かれていた。
【放課後に枯れない桜の木の下にまた来てね】
俺は前にもこのメールを見たことがある。それは3ヶ月前の公式新聞部の卒業パーティー号の記事のために訪れた場所でもある枯れない桜の木であり、そこで俺達は【桜が咲いたら約束のあの場所で・・・・というメールを受信した。それと同じなのだ。
「先輩、このメール見て下さい」
そう言ってさらが話し掛けてくる。
「ああ、それなら俺も見たよ。このメールの事もあるし、今日は緊急集合かもね」
「そうですね。多分、立夏さんの方からも、着たみたいですね」
姫乃がそう言っていたらタイミング良く携帯がまたメール受信を告げる。
【メールを見てると思うから、放課後は一旦部室に集合ね。姫乃達にも伝えといて頂戴】
メールにはそう書かれていた。
俺はすぐさまに了解です、と返信する。
「兄さん、立夏さんなんて?」
「放課後は一旦部室に集まってだって」
姫乃の質問に答える。
「分かりました。それじゃあ兄さん、瑠川さん。お昼食べましょう」
そうして机を移動して3人分のスペースを取っていると背中から物凄い視線を感じた。
所々から芳乃の奴、相変わらず羨ましいよななんて言った声が聞こえてくる。
「少しいいかしら?」
いざ食べようとしたら話しかけられたのでそちらを向くと、転入してきた桜内達が勢揃いしていた。
「私たちも一緒にお昼食べていいかしら?」
転入生の一人である雪村杏が代表して無表情で言葉を紡ぐ。
「いいですよ。お昼は大人数で食べる方が楽しいですからね。兄さんも瑠川さんもいいですよね?」
姫乃が訪ねてくるが断る理由もないし別に構わなかった。
「ああ別にいいよ」
「私も構いません」
俺とさらも頷く。
「ありがと。それじゃあお邪魔させてもらうわね」
そう言って、雪村達が机を引っ付けて椅子を運んでくる。
「そういや、名前なんて言うんだ?」
茶髪でイヤリングをした耕助に似た雰囲気の奴が話し掛けてくる。
「俺は、芳乃清隆。こっちは幼馴染みの葛木姫乃でこっちがクラスメイトの瑠川さら」
俺は自分の名前と姫乃、さらの名前を名乗る。
「葛木姫乃です。どうぞよろしく」
「瑠川さらです。よろしくです」
2人共笑顔で挨拶する。
「自己紹介したけど念のために名乗っとくわ。俺は桜内義之。で、こっちの髪の毛の一部がアホ毛になってるのが、俺の幼馴染みの月島小恋。んでこっちの無表情なのが雪村杏。ピンクの髪のストレートが花咲茜でツインテールの子が白河ななか。んでこっちの茶髪でイヤリングの奴が俺等の中の弄られキャラの板橋渉、最後に杉並だ」
「ちなみにこの3人は仲も良いので苗字の頭文字をとって『雪月花』と呼ばれている。後、俺と桜内それに板橋の3人は固い絆で結ばれた同志なのだ!」
義之の説明の後に杉並が話す。
紛らわしさを回避のために俺等の時代のを先輩、転入してきたのを杉並と呼ぶことにした。
「それにしても、葛木さんって料理上手だね」
「そ、そうですか?白河さんも上手じゃ無いじゃないですか」
姫乃が褒められるけど謙虚にして白河を褒め返す。
昼休みは脇揚々と過ぎて行った。全員と息が合い、全員で名前で呼び合う仲になった。
放課後になり、俺達は義之達と別れて部室へと足を運んだ。立夏さんに呼ばれ枯れない桜の木の下に向かう予定になっている。
ガラッ
「立夏さん、集まりました」
特別棟にある新聞部部室の扉を開け中に入る。
「ええ、それじゃあ清隆と姫乃にさらも来たわけだし出発するわよ。だから起きなさいネボスケ」
そう言って立夏さんは寝ている葵ちゃんの頭に自分の履いていた上履きを振り下ろした。
スパーン‼︎
「アイタっ⁉︎」
葵ちゃんは飛び起きてこっちを見る。その目は涙が溜まっていた。
「うう〜、清隆さん、激し過ぎますよ!それは上級者用のプレイすぎますよ⁈」
そして抗議してくる。ていうかどんな夢を見てるんだこの娘は⁉︎
「あら、まだ寝ぼけているのかしら?陽ノ下葵さん?」
立夏さんが目の笑ってない笑顔をで葵ちゃんの横に仁王立ちする。
「今のは夢ですか?……なんだ夢か………」
葵ちゃんはそんな立夏さんの表情を見ずに残念そうに呟く。
「はあ〜。葵、アンタで最後なんだからさっさと準備して目的地に向かうわよ」
溜息をつきながらもちゃんと指示を飛ばす。
「あっはいです」
そう言って葵ちゃんは準備を終えて鞄を背負い準備を終える。
「私は鍵を返しに行くからシャルル達は校門で待ってて」
部室を出るのを確認するとそう言うって鍵を閉め、職員室の方へと歩いて行った。
「行こっか?」
そう言って校門まで歩きながら、話題に上がったのは転入生の話だ。
るる姉のところに転入したのは朝倉姓の生徒が3人、白河という女子に天枷という女子に高坂という苗字の女子になんと杉並だったという。
それには俺達は驚きの声を上げるしかなかった。何で、杉並という生徒が3人もいるんだ。
俺達の驚きに何かあったのか聞くるる姉に俺は自分達のクラスにも杉並が居ることを話す。2人の反応は俺達と同じだった。
「タカくんの所にも転入生来たんだ?どんなのだった?」
るる姉が興味津々に聞いてくる。
「えっと杉並を含めた男子3人と女子4人だよ」
「それにしても転入してきた人達、2つ程知ってる名前がありましたね」
姫乃が思い出した様に言う。杉並という人物には触れない事にしているらしい。
確かに桜内という名前は今の生徒会長の苗字と一緒だ。それに雪村という名前も俺達のクラス委員長と同じ名前だ。さらに白河は俺達のクラスに転校してきた生徒の一人もそうだったし。高坂って名前は今の生徒会の副会長の名前だ。前にるる姉に聞いたことがある。
「桜内君と雪村さんですよね?私も気になりました」
さらも気になっているらしく名前を挙げていく。
「桜内って咲姫の苗字の?」
るる姉もその発想に至ったのか聞いてくる。
「うん、多分合ってると思うけど」
「私の方は雪音ちゃんによく似た子が転入してきましたよ」
俺がそう言うと今度は葵ちゃんが自分のクラスの転校生について語る。
なんでも雪音ちゃんに似ていて髪型がお団子ヘア以外そっくりなのだそうだ。
そんな風に話していると立夏さんがやって来て俺達は一路枯れない桜の木に向かっていった。
枯れない桜の木の下に辿りついた時には夕方になってしまっていた。
そして夕日が桜を照らしいる中枯れない桜の木の下には複数の影が立っていた。
それは今日転入してきた生徒である義之達に昨日会った生徒達、そして何より目立ったのは女物のスーツを着て枯れない桜の木の幹に手をついているさくらだった。
「義之⁉︎何でここに」
俺や姫乃、さらは驚愕の表情を浮かべずには居られなかった。
「それに音姫やまゆき達までいるってことは全員知り合いなわけね、さくらとは・・・」
立夏さんの言葉にさくらは無言で頷きそして口を開けた。
「うん、ここにいる音姫ちゃんやお兄ちゃん、義之君達もみんな僕の大切な人達だよ。お兄ちゃんや音夢ちゃんは僕の幼馴染であり、従兄妹でもあるんだ。ことりちゃん達は僕の親友だよ。義之くんや音姫ちゃん達は僕の大切な子供みたいなものなんだ」
「そっか。大切な人達に、待ってくてた人達に会えて良かったな。……さくら」
「うん、清隆達のおかげだよ。その恩返しでもないんだけどね、今日集まってもらったのは、義之くん達皆の紹介と久しぶりに会った僕の親友に会ってもらうためなんだ」
さくらがそう言い終わると桜の木の幹の後ろにいたのだろう人達が姿を現した。
彼等は夕暮れの陽の光を浴びて輪郭がはっきりする。
その顔には覚えがあった。いや覚えがあるなんてものではない。それは俺を好きと言ってくれ、俺の優柔不断に呆れながらも待ってくれると言ってくれた。いつかは決断しなければならない問題の結晶でもある女の子達だった。
そしてその真ん中にいるのは俺と同じ髪、顔立ちをした青年の姿があった。
それは紛れもなく、俺達にとっては懐かしくてそして俺たちを繋ぐ大切な物でもあった。
忘れもしない風見鶏の制服、予科生のものと本科生のものに身を包んだ自分達。そう、過去のー前世の記憶の人物。
「葛木・清・隆……」
俺のそんな呟きは風に揺れる桜の木の枝によって掻き消されていった。
清隆sideout
立夏side
どうして?何でさくらの近くに私が居るのよ?私の前世がこの時代に居るってこと?
なら私達はどうなる?消えてしまうの・・・イヤダ。消えたくない!私は漸く清隆との仲が進展してきたのに、キスまでする関係になったのよ?まだ終わりたくない!その先にある清隆との愛を育みたい。
「清隆達も混乱してるよね。でも僕も今回は困ってるんだ」
頭の中で葛藤していた私は、さくらの言葉に驚きを隠せないでいた。
「でも、僕たちは前に進んで行かないといけないんだ。だから僕はここにいるリッカたちも、この時代に生を受けた立夏たちも受け入れることにしたんだ。それが僕なりの歩む道だからね」
さくらはそう語った。
そうね、大事なのは過去じゃない。今をどう生きるのか?それが一番大事。私だって魔法は使えなくても『孤高のカトレア』なのだから。
立夏sideout
純一side
俺は今、さくらの大切な友人達との会話を聞いていて思った。
さくらは変わったと。自分の弱さを認めそこから一歩踏み出したのだ。俺も前に進まなきゃな、音夢を幸せにするためにも進まなきゃいけないな。
にしてもここに俺とさくらの祖母ちゃがいるってことにさくらは気付いているのだろうか?
「とりあえず、家に戻りませんか?そろそろお夕飯の支度しなきゃいけないですし」
前世の姫乃が言うことに俺達は頷きあって、家に向かった。
「これが、咲姫と雪音の親友さんなのね」
家に帰り、まず俺達は全員桜内家に集まった。そして音姫の未来に事情を話し全員で、夕食を頂くことにした。
今日は未来の義之も早番で帰ってきていた。
純一side end
義之side
「にしても、ここには料理が得意な人が沢山居るわね」
不意にまゆき先輩がそんなことを言い出した。その言葉に由夢の肩がビクッと動いた。
「私や、美春さんも得意ですよ。それに森園さんも美味しかったです」
ことりさんが自分達の時代の料理上手を挙げる。
つまり音夢さんは料理下手なのか、意外だな。
「私達の中では料理を作って欲しくないのはシャルルね」
「それ、私達の方も一緒よ」
前世と今世の立夏達がシャルルの事を話しに挙げる。
「そ、そんなことないよ。ちゃんと美味しく作れてるよ」
2人の立夏の言葉にシャルルが抗議する。
「それは食べた相手が普通で尚且つ倒れなかったら、認めてあげるわ」
立夏の視線が鋭くなると、言い返せないのか押し黙った。
「なら、ここにいる料理の得意な人全員で今度、誰が一番美味しいか決めるってのはどう?名付けて『誰の料理が一番美味しいか選手権大会』!」
まゆき先輩がとんでもない事を言い出した。
「ならば、審査員は男連中と数名の女子でどうだ、高坂よ?」
「そっちの俺の言うとおりだ高坂まゆき。主に料理の不得意なものが審査員というのでよかろう」
2人の杉並がどんどん話を進める。
「じゃあ、メンバーは清隆達と音夢ちゃん、昔の由夢ちゃんがいいよ」
「さくら、シャルルを忘れないでよね」
さくらさんも便乗して大会が決定される。もちろん、俺達の意見なんて無視だ。
まあ、渉なんかは嬉しそうにはしゃいでるがな。
『はあ〜』
俺達の溜息は誰にも拾われなかった。
その後土曜のお昼に一旦集合して作る側が芳乃家で料理を作り、それを俺達がこの家で司会のさくらさんとまゆき先輩の前で試食し、どれが美味しいか決める羽目になった。
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