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元虐められっ子の学園生活

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将来を見据えることに意義がある

学校とは勉学に勤しむ場所である。高校となれば尚更である。
小、中、高と求められる知識が高まるにつれて着いていけない者は必ず出てくる。
その者達は自身の意欲と向上性に見切りをつけ、
(あたか)もそれが当たり前であると決めつけている。
そうして溢れた者達はやがて周囲に同類が居ないかと探し始め、
最終的に努力する時間を秀才と言う名のターゲットを決めつけて虐め始める。
そのターゲットが秀才であれば在るほど砂糖を求める蟻のように集まるだろう。
それが全くの無駄であることに気付かずに。
だからこそこの学校と言うシステムは優等生と劣等生を発現させる、
言わば工場の様なものと認識できる。
更に、学生同士に置ける些細な付き合いにも教員達は目もくれず、
ソレを指摘されたならば、恰も存じ上げていないと虚勢を張るのだろう。
仮にその事が全世界容認の事例なのならば、
俺は社会の必要性を疑う。
この事から結論を見いだすのであれば、
我が平穏道を阻害する無能ども、消えてなくなれ。















さて、婆さんが死去してから数日後。
タンスから1通の封筒が出てきた。
そこにはこれからの俺の生に必要であろうお金と、ソレに当てた手紙だった。
まぁ簡単に言えば、学校へ通えとのことだった。
この時の俺は13歳。行くのならば必然的に中学だろう。
そもそも小学校に行ってないやつが中学行けるの?と思うだろうが、
この世には『編入制度』が存在する。

簡単に言えば小学校を通信教育で学び、中学へ入ると言うのがいい例だ。
俺はソレを採用し、ネットで方法等を調べあげて編入を果たした。
しかし、いかに義務教育期間と言えど授業料等が発生する。
そして婆さんが遺していってくれたお金は1学年を通過する位しか無かった。
だからこそ思い出す。
それは婆さんが言っていた『働かざる者食うべからず』と言う言葉。

中学へ編入を果たした俺は早朝のバイトと午後のバイトを始めた。
初心者なのだから体力も続かないであろうと調整の意味をもって始めたものだが、
全くといっていいほど疲れなかった。
これもこの家でやりくりしていたお陰だろうと思った。

大体中学2年になって半年ほどたった頃だろうか。
俺は虐めを受け出した。
理由としては『頭が良いからってデカイ顔するな』、と何とも幼稚な理由であった。
だからその虐めの内容も幼稚な物であって欲しかったのだが、
実際は過激を窮めた。
開始当初は校舎裏、体育館裏、空き教室等に呼び出され、
上記の理由で暴行を。
暫く続くうちに下らないことを学んだようで、
顔に傷があると張れるから服で隠れる身体にしようと言う型式になった。
大体2週間ほどたったなら、陰湿な虐めも加速を見せ、
まともに授業を聞くことさえ叶わなくなった。
それでも予習の段階で教科書の殆どを理解した事もあり、
虐めをエスカレートさせる切っ掛けを上乗せしていった。

そんな環境に負けず、中学3年に上がって直ぐの頃だろうか。
とある女子に告白を受けたのだ。
俺は即答で断った。
何故ならばその女子の眼が嘘を示していたのだから。
しかしそこは奴らの滑降の溜まり場であり俺の毎日の処刑場でもある。
つまり、運悪く奴らが来てしまったのだ。
まぁいつもの事だと割り切り、俺がやられている内に逃げてくれと、
もしよかったら先生呼んできて欲しいな…何て期待をしていたのだが、
件の女子は何を血迷ったのか俺を庇うように前へと出たのだ。
彼女は突き飛ばされ、激情した奴らは懐からカッターナイフを取り出す。
そんな状況を見ればこの後どうなるかなど火を見るより明らかであった。
だからこそ、俺を庇ったばかりに彼女が傷つけられるのは我慢がならなかった。
俺は彼女の前へ躍り出て…降り下ろされたカッターで切りつけられた。
顔面左、耳の上辺りから頬骨、頬、顎へと一直線に作られた浅くはない切り傷。
それでも止める、強いてはやったことに罪悪を感じない奴らは、
顔を押さえて蹲る俺を蹴りつける。
正直我慢の限界だった。
だからだろうか。
俺が気を失う直後に見たのは奴らが全員倒れ付し、
そのカーストが顔面をパンパンに張らしていた光景だった。

俺は入院をしたものの、2週間ほどで退院し、学校へと通い出す。
見舞いなんて誰も来なかった。
故に俺は勉学に注ぎ込むことができ、退院後の授業に遅れをとることなく卒業を迎える。

ーーーーと、まぁこんなところだ。
そして今、俺は総武高校へと入学し、今日で1年と3週間位を迎えている。

「これはなんだ?」

目の前に鎮座し、俺に一枚の用紙をちらつかせる女教師。
名前は平塚 静…だったか。担当は現代国語。

「紙……ですかね」

「君は私をバカにしているのかね?
私は今日の授業に提出された君の作文の事を言っているんだ」

作文。
つまり冒頭の文章である。

「それならばそうであると、初めから言っていただけませんか?
仮にも現国教師ならば主語等が抜かれた質問に意味がないことくらい分かるでしょう」

「君は……まぁいい。
それで、私が授業で出した課題は何だったかな」

「高校生活を振り替えっての作文ですが何か」

「それがどうしてこんな文章になる?
君は学校に何か恨みでもあるのか」

何故端正込めた作文を否定されなくてはならないのか。
俺は教師と言う職業のあり方に疑問を抱く。

「…詰まりはあれですか。
自分の気に入らない物であれば気に入るまでやり直させると言う…
ちょっと違ったジャイアニズムですか」

「どうしてそうなる…。
はぁ……君の性根はアイツの眼並に腐っているな」

アイツ…?まぁいいか。

「教師で在りながら生徒に腐っている発言とは。
最悪ですね」

「子供が大人をからかうな…」

「今度は子供ですか。
言葉攻めの引き出しが広いんですね」

「失礼しまーす…」

「おお、比企谷、こっちにきたまえ」

話の途中で…!
流石だな大人ってのは。
立場が危うくなれば嬉々として逃げを選択する!

「君はそこで待っていたまえ」

「……」

成る程。放置することによって反省を促す…と。
状況を考えてやれよ。
間違いであると感じるようにさせようとしても俺自身はそう思わないんだぞ。

「さて、私が授業で出した課題は何だったかな」

同じ質問。
この生徒……同じクラスだったな。
と言うことはこの生徒、確か比企谷 八幡?は作文に問題と取られた物を提出したのか。

「は、はぁ…高校生活を振り替えってというテーマの作文でしたが」

「それが分かっていて何故こんな嘗めた作文を書き上げてるんだ。
なんだこれ…どうしてこうなった?」

「はぁ…」

えーっと?
高校生活を振り替えって 比企谷八幡。

お、やっぱりそうか。

文章は………へぇ、良い作文だ」

「おい、何を言っている」

ん?おっと、声に出たか。

「いえ、良い作文だな、と」

「これの何処が良いんだ…。
君達は揃って大馬鹿者だな…」

「はぁ…」

「やれやれ…」

「…ったく…鳴滝の性根は腐っているし、
比企谷は眼が死んだ魚のようだ…」

「平塚女史の人を見る眼が腐っていますね」

「DHA豊富そうですね。そんな賢そうにみえますか」

「真面目に聞け…」

はぁ…直ぐにキレる。
だからこう言った輩には近づきたくないんだ。

「ひぇぁっ…俺はちゃんと高校生活を振り替えってましゅよ?
最近の高校生はらいたいこんな感じじゃないでしゅか?」

こんなのに怯えるなよ。
全く怖くないだろうに……。

「小僧…屁理屈を言うな…」

「小僧って…確かに先生の年齢からしたら俺は小僧…」

"パシィンッ"

「なっ…!?」

「…は?」

「…生徒を殴ろうとするとは、
教師としてあるまじき行為であると思いますがね」

比企谷が言い終わる前に平塚女史が比企谷の顔面すれすれに正拳突きを繰り出したのを
俺が掌で受け止めた。

平塚女史は信じられないと言う眼をし、
比企谷に至っては「何コイツ人間?」見たいな顔をしている。

「………そうだな。
すまないな比企谷。私が悪かった。
しかし、女性に年の話をするなと教わらなかったのか?」

「す、すみませんでした…書き直しま…ん?」

「…ん?」

比企谷が言葉を遮り、平塚女史を見る。
平塚女史は顎に手を当て、良いことを思い付いたと言わんばかりの顔をしている。

「君達、ちょっと着いてきたまえ」

平塚女史はそう言うと颯爽と歩き出す。
話に着いていけず、立ち尽くす俺と比企谷に振り返り、
立ち止まって、着いてこいと顎で示す。

「はぁ…」

「ちっ…」

渋々と着いていくことにした。










"ガラッ"

「雪ノ下、入るぞ」

「平塚先生、入るときはノックをお願いした筈ですが」

「ノックをしても君は返事をした試しが無いじゃないか」

「返事をする間もなく先生が入ってくるんですよ」

嫌に広く感じる教室。
恐らく部活動に宛がわれた空き教室だと思われるが…。
不必要な机や椅子は全て後ろへと固められ、
窓が空き、そこから入る風によって揺れ動くカーテンのそばに一人座って読書をしていた女子。
その女生徒は平塚女史に気付くなり嫌な顔で出迎えた。

「それで、そのヌボーっとした人と、犯罪者のような外見の人は?」

犯罪者のような外見。
詰まりは俺の事だろう。
顔の傷を隠すために常時ネックウォーマーを着用し目の下まで隠している。
しかしそれでは耳の上の傷は隠せないので髪も出来る限り伸ばし、今では肩辺りまであるなをうなじ辺りで束ねている。

「彼らは入部希望者だ」

そう言って平塚女史は俺達を掌で指す。

「あぁえっと…2年F組、比企谷八幡です…おい、入部って何だよ…」

「平塚女史、寝言は寝て言うから寝言であって、
ソレ以外は妄言と言うんです。それじゃ…」

「まてまてまて!
はぁ…君達にはなめ腐ったレポートを出した罰としてこの部で奉仕活動を命じる。
異論反論抗議質問口答えは一切認めない。
と言うわけで彼らは見た目だけでなく根性も腐っている。
そのせいで何時も孤独な哀れむべき奴等だ。
なのでこの部でその腐った根性を更正させる。
それが私の以来だ」

腐った腐ったと……まるで腐敗が好きだと言っているようだ。

「お断りします。
その男の下卑た眼を見ていると危険を感じます。
そして彼は……」

「……ンだよ」

「…いえ、兎に角お断りします」

何なんだこの女は…。
初対面の人間にたいしていきなり罵倒するとは…。
しかし今の眼は……いや、気のせいだろう。

「安心したまえ。
この男のリスクリターンの事故保身と計算に関してだけは中々のものだ。
そしてこっちの男については2学年で主席なのだ。
間違いなど起きはしないよ」

「成る程…まぁ、先生からの以来であれば無下には出来ませんし。
承りました」

「そうか。なら、頼んだぞ雪ノ下」

そう言って片手を上げて退室していく平塚女史。
それ格好良いとか思っちゃってる?

そして取り残される俺と比企谷。
気まずい。果てしなく気まずい。
この学校どころか学校と言う施設内で殆どを教室とか話したことがない俺としては
この空気と空間だけは身体が拒否反応を示している。

「ガルルルル…」

「……何してンだ?」

何故かこの部活動?の主である女子を威嚇している比企谷。

「えっ、いや…、挨拶がわりに威嚇を…」

「…なぁ、何故そんなに脅えているんだ?
俺が何かしたか?」

「そ、それは…」

比企谷は口を開く。
出てきた言葉は『学園一の不良』だった。

曰く、入学早々に3年の不良をボコボコにしたとか。
「いやいや、俺入学式出てないし」

曰く、眼を合わせれば喧嘩を売られる、と。
「前髪で隠れてるのに合うも合わないもあるのか?」

曰く、何時も帰りが早いのはヤクザと関わりがあるからとか。
「バイトがあるからだ。それに何時もじゃない。俺は苦学生なんだ」

曰く、授業をまともに受けないとか。
「俺の容姿に眼をつけた教師を社会的に告発しただけだ。
因みにこのネックウォーマーは市から容認を得ている」



「……やっぱり根も葉もない噂だったってことか」

「君は…比企谷は信じてなかったのか?
それにしては怯えていたようだったが」

と言うより誰が流した…。
だからあの事件から人の目線が痛かったのか…。

「いや、おま…鳴滝の人柄を知らなかったから…」

「…別にお前とかで良いぞ。
そう呼ばれるのは嫌いじゃない」

「そ、そうか」

……しかし、比企谷は分からない。
いや、分かっているのは一つだけ。
その眼から読み取れるのは孤独…それも明かに好意的な、だ。
後は表情で見分けるしかない。
本当に…彼は今まで何を体験してきたのだろうか。

「ねぇ、そんなところに立ってないで座ったら?」

急に女姓とが声をかけてきた。
その眼には気だるさ、煩わしさ、嫌悪が見られた。

比企谷は慌てて椅子を取りに行ったが俺は動かない。
その様子に疑問を感じたのか、女生徒は辛口に言葉を発した。

「聞こえなかったのかしら?
それとも、聞こえていて反応しないの?
もしかしてその事に快感を覚える人?だとしたら気持ち悪いわ」

訂正。
辛口ではなく、毒舌だった。
…まぁいい。
このような輩はスルーするに限る。
んで、時間はちょうどいいな。

「俺は帰る。
今日は用事があるからな」

「あら、反論しないのね?」

「じゃあな比企谷」

「お、おう…」

俺は明らかな挑発を無視し、比企谷に別れを告げて退室した。
比企谷は恐らく察しているだろう。
俺はこれからバイトがあるのだ。

「まて、何処へ行くんだ」

先程から扉の前で待機していた平塚女史に声をかけられる。
気づいてはいたが、大方出るに出れない空気だったのだろう。

「聞いてませんでしたか?用事があるんですよ」

「その用事とは何かね。
何もないのにその発言をしたのなら、それを容認することは出来ない」

「アンタは俺の作文の何を見たんだ?
大方流し読みをしたんだろうが…」

「……何が言いたい?」

「俺に何かを言いたいのなら、もう一度作文を読んでその内容を理解してから出直してこい。
……失礼します」

俺は平塚女史の横をすり抜けるように通りすぎ昇降口へと向かった。
その後ろでは悲しいような、納得のいかないような眼をした平塚女史が残された。











「……はぁ。
明日からシフトの時間をずらすか…平塚女史め…」 
 

 
後書き
何か書き終わって気づくと平塚先生が嫌いだという内容になってしまいました。
九十九は別に平塚先生が嫌いではありません。
この先書いていくなかで九十九の人柄改編を狙いますのでご愛敬ください。 
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