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バカとテストと白銀(ぎん)の姫君

作者:相模
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Road to Elysion~終焉 ~

 
前書き
次回最終話です、いよいよ第一部が完結します。
今回の字数が少ないのは勘弁ください 

 
第五試合は一進一退の攻防の末、霧島さんの勝利に終わった。
「……代表が御敗れになられましたか…」
Aクラスの座席が一体どんなものであるから、Fの皆が欲しがるのだろうかと思って少し見学させてもらおうと思いこっちにきたのだけれども。
僕はAクラスの座席に備え付けられていたデスクトップが何台か起動していたのを不審に思い、覗いてみたところ講義用カメラというアイコンが起動されていたのに気が付いた。
画面上には操縦者である二人の顔のアップや、それぞれの召喚獣の視界が隣合った画面二枚一組で映し出されていた。
この画面を覗いているだけで事足りるなら、ここでいいかと僕は思ったのだけれども、どうもAクラスのみんなは生で見たいようだ。
誰もここの席に戻ってこようという気配がない。
盗人猛々しいかもしれないが、それ以来何方かの席を拝借してデスクトップ上で彼らの試合をずっと見つめていた。
「その分霧島さんが何を言いたかったのかさえも知ることになってしまうなんてね…」
画面から目を外し、僕は後ろに目をやる。
「友香さんはどのようなご感想を持たれましたか?」
「はひぃ!?」
後ろの方で気配がするなと気がついたのは少し前だったのだけれども。
気まずそうに僕の前に出頭してくる彼女を思わず笑ってしまった。
「……正直、なんだか霧島さんの召喚獣がいきなり強くなったみたいに感じたわ。それも何倍も強くなったみたいに。ドーピングなんて試験召喚システムでは無かったはずなのに。」
僕は友香さんの意見を聞いて、やっぱりそう言う風に見えたかと頷く。
途中まで、お互いの点数が50点台に入った頃から霧島さんの召喚獣が、それまでに見せていた動きよりも機敏に動いているように見えた。
「そうですね、もしかしたら設計のうちなのかもしれません。召喚獣は操縦者の意志によって制御されるのだとすれば、感情次第で暴走や強化もされるのかもしれません。」
僕がそう呟くと、友香さんは驚いたような顔になった。
「私たちの感情で?」
「えぇ、あくまでも仮定ですが…ね」
そう友香さんに言うと、何かを考えるように口元に手を当てる。
「……もしかして」
「どうかなさいましたか?」
「この前のFとの対戦で私がF主力とBCからの援軍の大半を一人でけちらしてしまったのも、暴走なのかな、と。」
そう零す彼女になんと声を掛けて良いのか分からず、僕は戸惑う。
それに、どうして暴走してしまったなんて考えるのだろう。
確かに僕が渡り廊下を包囲したときに友香さんが憔悴しきったように見えてはいたけれども。
「……あの、友香さん…」
「えっ?あぁごめん。今更蒸し返してもしょうがないよね…」
余計なことを言ってごめんと謝られるけれども、一旦僕たちの間に出来てしまった気まずい雰囲気をぬぐい去ることは出来なかった。
二人揃って沈黙してしまい、どうやって声を掛けようかと思っていると僕らの方に吉井が走ってきた。
「妃宮さん!こんなところにいたんだ。雄二が呼んでるんだけどこっちに来てくれないかな。」
僕らがここにいることに気がついた吉井の呼ぶ声をさすがに無視するわけにも行かないし、何より空気を変えるためにも良いタイミングだった。
「友香さんも如何ですか?」
そう言うけれども、何かを悩んでいるような表情の彼女は首を振った。
「私はもう戻るわ、浅井君もたぶん帰るのだろうしね。」
じゃあお先に、と手を振りながら彼女は逃げるようにAクラスから出ていった。
その姿に声を掛けることも出来ずにただ彼女を見送るだけしかできなかった。
 
 

 
後書き
何で、何で私は逃げたの?
あの暗闇から助けてくれた彼女なのに
次にあったときは、絶対に逃げない
今日のことは後腐れの無いよう無かったことにしてもらおう

例え彼女に隠し事をされていたとしても、私は彼女を信じると決めたのだから
 
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