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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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DAO:ゾーネンリヒト・レギオン~神々の狂宴~
  第十七話

「ほらほらほら!どうしたのじゃ雑種ども!」

 剛と音を立てて迫る巨刃を、カズは紙一重で回避する。空振った斧の一撃にヒヤリとさせられながら、反撃の一手を繰り出す。

 《ギア》である大剣《ノートゥング》の刃が、蜃気楼の様にぶれる。強力な空間断を引き起こす、第四位階で付与したアビリティ。絶対防御の六門神に一太刀入れた、自慢の一撃だ。

 だが――――それは、目の前で傲慢な笑みを浮かべる、十二単の少女には通用しない。あれほど豪快な一閃を繰り出した直後だと言うのに、易々と斬撃を回避し、逆にカウンターを撃ち込んでくる。

 こちらの体制は崩れている。かわせない――――!!

「カズ!」

 後方から吹いてきた突風が、カズの体を無理やり弾き飛ばした。これにより、大斧の攻撃をなんとか回避。

「悪い、リーリュウ! 助かった!!」
「気にするな! それより、次が来るぞ! 備えろ!」
「応!」

 風を引き起こしたのはリーリュウだ。彼とカズの二人は、《白亜宮》突入後、他のメンバーとはぐれて行動していた。

 一刻も早く他の仲間達と合流するために動き出したカズ達の前に立ち塞がったのが、黒と白の十二単に、艶やかな銀髪、これまで見た《白亜宮》の者達のように()()色の瞳と、傲慢そうな笑みを浮かべた少女……エリィ・イクス・アギオンス・レギオンクイーンと言うことなのだ。

『この先に行きたければ(わらわ)を倒して行くがいい。まぁ、そのようなことはさせぬがな』

 彼女はニタリ、とあの傲慢な笑みで、そう言った。

 どうやら一線免れがたいぞ、ということで合意したカズとリーリュウは、持ちうる限りの全ての力を費やしてエリィに挑んでいるのだが――――

「甘いぞ! その程度の児戯ならばあの悪餓鬼にすら可能じゃ! お主らはそれでも《六門神》なのじゃろう!? ほれ、もっと見せて見よ!!」

 その細腕から繰り出される、刃渡り一メートル近くの巨大な斧による斬撃。鮮血をすすったような真紅の刀身が大地を薙ぐ度、純白の床が悲鳴を上げる。

 力任せの一撃。だが、それでいて……否、だからこそ恐ろしい。尋常ではない威力。恐らくまともに当たれば、問答無用で体が真っ二つに泣き別れするはずだ。

 リーリュウが《エオス》を吹きならし、カズに支援(バフ)を送る。力がみなぎり、動きが速くなった。《ノートゥング》にまとわせた次元断を以て、エリィを切り裂かんと駆ける。

 だが彼女は、その得物のサイズと重量からは想像のできない敏捷度でその一撃を悠々と避け、さらには大上段からの切りおろし。

「くっ!」

 地面を蹴って回避。落下した地面はインパクトで揺れている。ゴロゴロと転がりながら、大斧の刀身から逃げる。

 幸いなことに、エリィの大斧はただ巨大かつ切れ味が鋭いのみで、これと言った絶望的な特殊能力は特にない。この一点ではとっつきやすい、と言えなくもないだろうが、本人の実力があまりにも高すぎるため、結果としてそれは突破口にはならない。

 追ってきたエリィの攻撃をひたすら避ける。避ける。避ける。時折《ノートゥング》の一撃を繰り出す者の、その攻撃は彼女に全く効果を及ぼしてくれない。
 
「なんじゃ……つまらんな……赤いの、お主にはもう飽きた――――次はお主じゃ、緑色の雑種!」

 そうこうしているうちに、エリィが大きなため息と共にそう言った。

 同時に、信じられないスピードでカズの後方へとダッシュ。ほとんど転移に近い速度でリーリュウの目の前に出現した。

「しまった!」

 カズが振り向いたときにはもう遅い。エリィは巨大な刀身を振り下ろしていた。

「ぐぅッ!」

 とっさに《冥刀・岩覇蒼炎》で受け流しながら回避を行うリーリュウ。衝撃が走ったのか、顔をしかめる。だがそのおかげで、リーリュウ自身にはさしたる傷跡もなく、彼女の刃から逃れ出る。

「ふむ……ではこれはどうじゃ?」

 猛撃は止まらない。

 エリィはその巨大な斧を消すと、今度は少し小ぶりな両手斧を出現させた。刃の片方には毒々しい緑、もう片方には禍々しい真紅の光がまとわりついて、ぬらぬらと光っている。

 どこか機械めいた外見のその斧をうっとりとした表情で撫でて、エリィが言う。

「《フェニカス》。機械騎士とクロキが作った斧じゃ。この一撃を受けられること、むせび泣いて狂喜するがいい!!」

 ぶぉん!

 轟音と共に振り上げられる邪悪な刀身。リーリュウが二刀で応戦し、カウンターを打ち出そうとするものの、上手くエリィに攻撃がヒットしない。

 露見したのだ。リーリュウの弱点が。

 リーリュウは、実は近接戦闘がそこまで得意ではない。

 一応一通りの刀剣術は取得しているものの、彼の本業は《ギア》である《風を呼ぶ笛(エオス)》による高速多重支援(バフ)使用。彼は後方支援型なのだ。

 リーリュウとハクガが後衛、セモンとカズが前衛を務めて、初めて完成する理想陣形――――それがない今、リーリュウにとってはつらい。

 カズの頭でもそれが導き出せたのだ。エリィにはとっくの昔に見抜かれていたのだろう。一瞬の隙をつかれて、徐々に、徐々に、リーリュウが押されていく。

「くっ……」
「くくくく……やはりその程度か。クロキの国にな、『虚実すら無い。両手に剣を一本ずつ持っていても使えないのなら、片手に握った方が強い』という言葉があるそうじゃ。たしか『ゴリンノショ』とか言っておったかの?」

 その言葉は、カズも知っている言葉だった。かつて燕返しの使い手を破った二刀流剣士が、自らの技を否定した、奇妙な言葉――――

 それは、実力無きものが力を求めるべきではない、という、忠告。

「リーリュウ!!」

 カズは《ノートゥング》を構え、大剣用ソードスキル《クレッセントバニッシュ》を発動させる。半円弧型を描く剣閃が、エリィに迫る。

「しゃらくさいわ!」

 しかしその一撃は、エリィが体ごと斧を回転させる旋回攻撃を繰り出したことによって弾かれた。その技量に驚嘆せざるを得ない。彼女は、横軌道である《クレッセントバニッシュ》と同じ面を斧の刀身に通らせ、正面からその一撃を弾き返したのだ。反対側にいたリーリュウもまた、この一撃で吹き飛ばされてしまう。

「ぐぅ……」
「ふむ……そろそろ潮時かのう……終わりにするとしようか。
 『十九八七六五四三二一〇(トオクヤナムイヨミフタヨ)
  いと尊き我が兄にこの誓いを捧げよう』」

 制約の祝詞が紡がれ始める。

 エリィの周囲を、暗い深紅の劫火が取り囲み始める。

「『世の始め、人世を作りし名も無き神は
  自らが唯一であることを望んだ。

  世の始め、空を牛耳る赤き天使は
  自らが至高であると信じた。

  その昔、砂漠に追放されし雷帝は
  自らが原初足らんと欲した。

  即ち是虚飾の相也。

  神さえ其の法より逃るること能かなわず――――

  其の名は《傲慢(superbia)》。


  ―――《惟神》―――

 《superbia‐pride》』」



 ゴォォッ!!

 轟音とともに、凄まじい熱風と重圧が空間を支配する。エリィの後ろに、クジャクのそれに似た意匠の炎翼をもった、巨大な鷲獅子(グリフォン)が出現する。

「さぁ跪け雑種。図が高いぞ!!――――叩き潰せ、ルシフェル!!
 『《神・哭・神・装》』!!」

 炎の翼がエリィの十二単にまとわりつく。裾が火炎と一体化し、エリィの純白の髪の毛も血のようなダーククリムゾンへ。黒曜石のような双角が生え、背には巨大な悪魔の翼。

 右手には大斧、左手にはフェニカスと呼ばれた斧。火炎の戦装束に身を包んだ彼女は、戦場に降臨した煉獄の悪魔(エリゴール)

「さぁ、本番の開始じゃ。踊れ!」

 その戦斧が振るわれる。爆炎が空気を蹂躙し、カズ達を焼きこがす。

「がぁぁぁっ!?」

 じゅぅじゅぅと体が焼ける音。凄まじい痛覚。体中が燃え尽きて、灰になってしまうかのような錯覚。

「カズ!」

 リーリュウから回復術が飛ぶ。カズの火傷は完治したが、その身体に残留した痛覚は消えない。

「ぐっ……」
「どうした? もう膝をつくのかえ? 大いにつまらん! もっとあがけ、雑種!!」

 絶望的な戦いは、終わらない。


 ***


 一方で、もう一つの絶望的な戦いも続いていた。

 黒い剣が繰り出されると、黄金の剣が行く手を阻む。

 青い剣が繰り出されると、白銀の剣が行く手を阻む。

 《黒の剣士》は燐光を立ち上らせて戦っていた。その移動はもはや足を使った移動ではない。《心意》を使った《光の翼》による瞬間移動だ。だが、目の前に対峙する真っ白な魔剣士は、それにすら余裕でついてくる。

「ほらほら、どうしたんですかー。もっと本気出してくださいよ!」
「くそっ!」

 ころころと鈴の音を鳴らすように笑う、白い少女――――ホロウ・イクス・アギオンス・スプンタマユはその性格と外見からは想像もつかないほどの恐るべき使い手だった。

 黄金と白銀の一対の長剣、《ハルワタート》と《アムルタート》。双子のように鏡写しのこの二刀は、サイズ的には片手剣ではなく両手剣……それも、《大剣》の部類に入るだろう。

 だが、彼女はそれを片手ずつで握って振るうのだ。それも、キリトですら時折視認できない凄まじいスピードで。

 スピードの速さなら、キリトの恋人であり、今後ろで眠る《閃光》アスナや、かつて剣を打ち合わせた《絶剣》ユウキも速い。だが、ホロウの場合、それとは……何というか、『土俵が違う』のだ。

 なるほど、純粋な技を出すスピードや反射神経ならば彼女たちが上だろう。だが、ホロウはまるで『総てが見えているかのように』あらゆる行動を先回りし、迅速に技を繰り出してくる。キリトが通常剣技、ソードスキル、心意技……あらゆる剣技を繰り出したその時には、すでにホロウの剣は動いている。それも、きっちりとキリトの剣に対応するように。

 恐るべきはそのスピードが、ソードスキルにも心意にも一切ブーストされていない、通常攻撃であるということだった。彼女は明らかに異常な実力者だ。それに今、どう考えても彼女は手加減をしている。手加減は非常に難しい。「自分は手加減ができませんよ」という慇懃無礼なセリフをいう人物は古今東西様々な作品にいるが、あれはただの暴言であるだけでなく、実際に「難しい」ことなのだ。

 それをこの純白の少女は、平然とやってのけているのだ。

 ――――もし本気を出されたら、自分は負けるかもしれない。

 ――――いや、それでも!!

「それでも、負けられないんだ……ッ!!」

 そうだ。負けてはいけないのだ。

 倒れたら、立ち上がる。

 剣が折れたら、また新しい剣を取る。

 何度でも。いつまでも。自分は、立ち上がれるのだから。




『さぁ、行こう、キリト!』




 その瞬間。

 誰かの声が、聞こえた気がした。

 同時に、キリトの脳内に、何かが流れ込んでくる。それは祝詞。キリトの願いを、意志を、全てを収縮し、キリトという世界(セカイ)を塗り替える、《自在式》。

「『夜空の星よ。流星よ。魂の輝きよ。

  どうか俺を、正しき勝利へと導いてくれ。

  君たちが願うならば、俺は何度だって立ち上がれるから――――

  負けないから』」


 この時、キリトとホロウの一騎打ちを観戦していたエインヘルヤルが、小さくつぶやいた。

「……覚醒した」

 第三者視点から見れば、キリトの隣に、うすぼんやりと誰かが立っているのが見えただろう。それは、亜麻色の髪の少年だった。背格好は、まるで双子のようにキリトと似通っている。

「『まだ立てる。まだ速く成れる。もっと速く、もっと強く――――!!!

   ――――《惟神》――――

 《スターバースト・ストリーム》』!!!」


 空が、割れた。

 純白の王城の天井が、漆黒の夜空へと塗り替えられていく。そこに集う光、ひとつ、ふたつ、みっつ……

 気が付けば、漆黒を埋め尽くさんばかりの色とりどりの(ひかり)達が、キリトの夜空(セカイ)を埋め尽くしていた。それは彼の、仲間たちを手をつないで広げた(キャリバー)に輝く、彼らの魂の輝き。

 あの魂が彩る仮想世界でたどり着いた、最高の《心意》の再来。

「うふふっ、やっと本気を出せるようになれましたね、黒の剣士さんっ!」

 ホロウが笑う。キリトはそれを切り伏せんと、二刀を掲げて疾走する。

「う、お、お、お、おおおおおお!!!」

 流星が、刃に乗って、弾けた。 
 

 
後書き
 どーもこんにちわ、御久しぶりです、Askaです。今回はカズ&リーリュウVSエリィと、キリッとさん覚醒回。エリィが時々口にする『クロキ』『機械騎士』『悪餓鬼』とかは、彼女がメインヒロインを務める『【新約】魔導循環』という自作に登場するキャラクターたちの名前です。最近更新してないなぁ……この機会にリメイクするかなぁ。
刹「ちょ、それやらかしたら一体何作掛け持つことになるんですか!」
 問題ない。すでに二十作以上だ。
刹「」(ざしゅ
 ぐはぁ! ま、まぁ……もともと一発ネタ風味の強い作品が多いしね、俺の場合……。

 さて、そんな事よりも重大発表です。つぶやきにも書いたのですが、もうすぐ『神話剣』は更新開始から二周年を迎えます!
刹「去年の一周年記念からまだ三十話程度しか進んでない……これはどういうことです?作者」
 う……い、言うな。
 とにかく、去年と同様、今年もやります「『神話剣』キャラ&作者への質問攻め大会」!!感想欄、メッセ、呟き返信などに質問を書いて送って下さい!

刹「よろしくお願いします。それでは次回もお楽しみに」
  
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