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ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~

作者:???
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春奈-クラスメート-part1/再会の世界

M78ワールド、M78星雲光の国。
「ゼロの行方はまだ掴めないままか」
セブンがため息をつく。
宇宙警備隊本部にて、ウルトラ兄弟たちはゼロの所在特定を行っていたが、未だに確認ができなかった。それどころか、地球に向かっていたレオからの連絡がここしばらく途絶えっぱなしだった。
「すみません、セブン兄さん。地球に向かったレオ兄さんからの連絡も来てなくて…」
アストラが捜査の難航について謝罪する。地球付近の宇宙で兄と別れた後、クール星人の尋問に当たっていたアストラはそれを終わらせると、早速レオに連絡を取ってみたのだが、返信のウルトラサインが一向に返ってこなかったのだ。
「自分を責めるな、アストラよ。この宇宙は広い。いかに我々とて、すべてを把握することは不可能だ」
気に病むな、とゾフィーがフォローを入れた。
「だが、こうしている間にゼロに万が一のことがあれば…」
セブンが焦りを見せていると、ゾフィーは今度はセブンに向けて言った。
「セブン、レオに息子を預けたのはお前じゃないか」
そういわれて、セブンは黙る。責められているわけではない、ただ、我が子と自分の弟子を信じてやれ、ゾフィーがそう言ってくれている。それを察知しての沈黙だった。
信じてないわけではない。ただ、もしも万が一のことがあったらと思うと不安に駆られてしまう。たとえ人間でも、宇宙人でも、深い間柄の者のことを思うとそうなってしまうのが宇宙の摂理というものだろうか。


「もう、勝手に出かけたらだめだよ、シュウ兄!」
「…済まん」
ウエストウッド村に戻ると、シュウは珍しくエマからから怒鳴られてしまった。事実勝手にどこかに行ってしまっていたから逆らう理由がないので言われるがままだっため、言い訳はできない。すると、マチルダが二人の元にやってきた。
「実は、シュウに買い物頼んでたんだよ」と嘘をついた。
「そうだったら、ちゃんと言ってから出かけないとだめでしょ?」
「わかった、今後は気を付ける」
「つっても、必要以外の外出は控えないとね。この村、前に下種どもに狙われちゃったしな」
以前、村に人攫い目的で盗賊が現れ、テファが誘拐された時のことを思い出す。またいつかあのような輩が出てくるとは限らない。その時、もし自分が村から離れているとしたら、必ずしも駆けつけてこられるわけじゃないかもしれない。最悪、ティファニアたちの身に何が起こるのか…。ふと、シュウは村の庭でエマ以外の子達と戯れていたテファに視線を泳がせると、ちょうど彼女と目があった。すると、テファは何か後ろめたさでも感じたのか視線を逸らした。
「マチルダさん。話がある」
テファの奇行を奇妙に思いながらも、マチルダに小声で話すと、シュウは先に自室に戻った。村に戻ってから不思議だったのは、一番怒るはずのテファが叱ってこなかったことだった。先日村を真夜中に出てまで、姿を消していた自分を探していたはずの彼女がなぜ?
疑問に思いながらも、彼はベッドに座ってパルスブレイカーを起動し、『シークレットファイル』と名付けられたフォルダを開く。いつでも対応できるよう、ナイトレイダーが戦ってきた敵のデータを少し移していたのだ。カーソルを回し、ファイルナンバー23を示すファイルを開く。画像には、ネクサスと交戦するダークファウストの姿と、画像の傍らにファウストに関するあらかたの詳細が記載されていた。文末には、確かに『ウルトラマンに倒された』と記述されていた。事実この記録の戦いの後、ファウストの姿を世間で見たものはTLT関係者以外一人としていない。
(ファウストは…もう俺の世界で倒されたはずの個体。それが、なぜ今になって再び姿を見せた?誰かが甦らせたのか?それとも…別個体か?)
ふう…とため息を漏らし、「考えても仕方ないか」とつぶやいた。復活した個体だろうが、別の存在だろうが、それでも倒すべき敵であることに変わりない。こいつのせいでこの村にまで被害が及ぶことを防ぐためにも、次に現れたら必ず仕留めなくては。
「シュウ、話ってなんだい?」
ふと、彼の部屋をマチルダが訪れてきた。彼女の訪問と同時にパルスブレイカーを閉じた。
「…ティファニアたちはいないな?」
「ああ、今は庭で適当に相手してるよ」
なるべくテファには聞かれるのを避けておきたい会話のようだ。
「少し村をあけることが多くなると思って、あんたに聞いてほしいことがある。実は…」
話の内容は、シュウがタルブでの戦いの後、サイトとの連絡網を作るための相談についてだった。今後は、サイトの手も借りた上で行動した方が、自分たちの活動を円滑なものとできると考えた上での判断だった。
「…へえ。あんた手先が器用だったんだね。で、その機械と似た機械を繋ぐものを作るために、一度トリステインに行くってわけか」
機械工学というのがいかなるものかはよくわからないが、マチルダはシュウが物作りができる方であることはつかめた。
「その間、あなたには村に留まってティファニアたちを見ていてほしいんだが…済まない、やはり勝手だったか?」
「まあ、確かに勝手だとは思うさ。一応聞くけど、これもテファたちを守るためにも必要なことってことで、いいんだよね?」
「もちろんだ。ついでに、この話がうまくいって仕事を請け負うことができたら、王女からも給金をいただくつもりだ。そうすれば、あなたが手を汚すこともない。
せっかくだから村で休んでティファニアたちと触れ合うのもいいんじゃないか?」
「あんた…ちゃっかりしてるな」
それを聞くと、マチルダは笑みを浮かべた。この子は、実は盗人を働く自分のことを気遣ってくれていたのだ。むしろこの子の方が茨の道を歩いてボロボロになっているかもしれないのに。だから、以前にもかけた問いを二度もかけた。
「話変わるけど…あんたはそれでいいのかい?戦ってばかりじゃないか。前に正義の味方を名乗る気はないとか言ってたけど、どうして正義の味方のつもりでもないって言ってるくせに、自分の身を傷つけてまで、故郷でもなんでもないこの世界を守ろうとしてるんだい?まさか、三流勘違い貴族みたいに、『命より名を惜しめ』って、死ぬことを適当に美化してカッコつけたいわけじゃないよね?」
「前にも言ったと思うが…俺は、戦いから降りることはできない」
視線を逸らしながらシュウは言った。
「貴族じゃないから名前の高名さなんてどうでもいい」
「そりゃそうだね。じゃあどうしてさ?」
「…仕事だ」
いつぞや、自分はナイトレイダー、戦うために存在する…なんて言っていたけど、それと同じような言葉であっさりと片付けた。その、『なぜナイトレイダーとして、またはウルトラマンとして戦う』理由を尋ねてるのに、わざと逸らしている。
シュウはその理由を応えるつもりはなかった。一度聞かれたときだってそれ以上は聞くなって言ったほどだ。なのにまたこうして尋ねてくる。前はお互いに隠していることがあるからって、詮索してこなかったはずだが。
「そりゃ、あんたは黙ってればそれで満足かもしれないけどね、あたしとしちゃ納得できないわけよ。テファもね」
シュウの考えていることを先読みしたのか、マチルダはそう言う。
「あんたがいない間に、またあんたがいなくなったことに気付いたテファが、一人で夜道の危険も顧みずに探しに行ってたって聞いたら、そりゃもうこれ以上勝手にどっか行っちまうのを許していいのか疑問に思っちまうよ」
なるほど、さすがに妹分がその使い魔を心配して一人夜の危険も忘れて村を離れたりした上、一時行方知れずになったのなら、この人のことだから間違いなく心配した。
「しかも、あんたのこと知りたくて勝手にここの荷物をあさってたんだよ?本当はそういうことするような子じゃないのにね」
あいつ人の荷物を勝手に覗き込んでたのか…。危険な武器も入れてあるから、勝手に漁るな、と後で一言言っておくか。と思っているとマチルダはまだ話を続けていた。
「訳があって話さないのは、前に話した時から、盗賊やってるあたしもわかる。
ただ、これ以上自分を追い詰めるようなことは控えるんだね。その自己犠牲じみた考えが、あの子までも苦しめるから」
「…」
自己犠牲、か。心の中で呟いたシュウ。あの優しすぎて綺麗すぎるテファのことだ、確かに心苦しく思っても仕方ない。それに…自覚がないわけじゃない。
「だから、今更一人で村を出て行きましょうってのも、ナシだよ?あの子のことだから、これ以上苦しめないためにって理由で一人村を出て言ったら、逆にあんたのことを気にし続けて苦しむに違いないよ?あたしは、そういうのは避けたい」
マチルダは、実はこう考えていたことがあった。ティファニアが苦しむ姿は見たくないし、苦しむのは避けておきたい。そのための不安要素は排除した方がいいと考えた。ならシュウを、あえて村から追い出すことも考えた。でも、自分の提案でテファに使い魔を召喚しようとし、結果として彼が現れ、テファは彼を使い魔とした。なのに、都合が悪ければ捨てるだなんて、捨て犬扱いも甚だしい。まるで横柄な貴族そのものの行為に、元貴族でありながら貴族を嫌うマチルダは嫌気がさしていたからそれは避けていた。
「記憶を消そうとは、考えないのか?」
シュウは、ティファニアが自分を誘拐した盗賊たちに忘却の魔法を使った時のことを思い出した。かつて自分の世界でMPがウルトラマンとビーストにまつわる記憶を消去したように、そんなに嫌なら自分のことを忘れてもらった方がいいのでは?なんてことを考えていた。それを言われてマチルダは眉を潜めた。
「…それはテファの意思によるさ。けど、忘れたくても忘れられるタイプじゃないよ。あの子は寂しがり屋で箱入りだ。少しでも、覚えておきたいことは絶対に忘れようとしない。あの子が屋敷暮らしだった頃、一緒に遊んでくれた…あいつのことを今でも忘れることができなかったんだから。あんたのことも、この先ずっと覚えていくに違いないね」
あいつとは、ヤマワラワのことだ。誤解し合った結果、一度戦う羽目になってしまったのだが、ティファニアの思いが戦いを終わらせた。ヤマワラワは自ら姿を消してしまったのだが、どちらかが倒れるなんて事態にならなかったのは幸いだった。
彼女が幼い頃に体験した、父と母の死・友人との離別は辛い過去だ。それを、自らの魔法で消し去ることだってできたはずなのにそれをしなかった。ティファニアには見かけによらず芯が強い部分があるということなのだろうか。それとも、単に思い出にすがっているから忘れたくないだけなのだろうか。
どちらにせよ…俺の場合はどうなのだろうか。
「…なら、せめて何かテファを安心してあげられることを言ってあげな」
安心してあげられること?シュウは眉を潜める。口約束なり指切りなりしておけと言いたいのだろうか。
「そういうのは、苦手だ。どんなに強く未来を信じても、現実がそれを無情に壊すことがある。俺がそうだったから」
「シュウ…あんた…」
ほんの少し、自分の本音を明かしたシュウにマチルダは目を丸くした。だが、その本音が悲観的なものだったことに彼女はため息を漏らす。戦うことばかりに身を投じ、自分を心配する周囲の気持ちなんてまるで考えないようにしているように見受けられる。しかも自分の未来に何が起こるのかわからないからって口約束じみたものを否定している。こんな悲観的な奴がウルトラマンで大丈夫なのか?
「全く、あんたの親の顔を見てみたいよ。一体どんな育ち方をしてきたんだか。もっとあんたが小さいときに会うことができたら、親からあんたをかっさらって教育し直したげたいね」
「これも前に言ったと思うが、俺に親はいない」
確かに前にも言っていた。テファと同様親がもうこの世にいないからなのか?…いや、マチルダの脳裏にもう一つの仮説が浮かぶ。
「…それって、あんたがウルトラマンだから?」
「違う。ウルトラマンと俺は体を共有している。俺は同化しているウルトラマンの力を引き出し利用しているだけなんだ」
違った。どうやらシュウ自身がウルトラマンそのものというわけではないようだ。つまり、自分の中に別の誰かがいる…二重人格に近くて非なるものということだろうか、とマチルダは予想した。
しかし、彼の中のウルトラマンを恨みたくなった。テファの場合もそうだった。なぜシュウが身を削ってまでこんな腐った貴族ばかりが支配する世界のために戦わなくてはならない。なぜテファのような純粋で優しい娘が、エルフの血を引いているからって迫害されなければならない。始祖ブリミルもウルトラマンも、残酷な現実を突きつける。
「あ~やめたやめた。これ以上今の話題のことで考えると鬱になっちまうよ。まるで自分は不幸な人間ですって主張してるみたいで腹も立つし」
あまり明るい話と思えない会話に業を煮やしたマチルダは無理やりながらも会話を中止させ、立ち上がって扉の方に向かった。
「仕事のことだけど、さっさと済ませとくんだよ。後、これからはテファのことも安心させること。あんたはあの子の使い魔でもあるんだからね、あの子の身を守るだけで満足しないことだよ」
言い残し部屋を出て行った時のマチルダは、少しだけ視線を鋭くしていた。マチルダにもシュウをこの世界に呼び出した責任はある。だが、シュウも使い魔として村に、この世界に留まることを受け入れた以上、ティファニアのことを考えて行動する責務がある。そのことから目を背けるな、という警告を現していた。
ともあれ、シュウからの提案には乗ってくれたようだ。
「…厳しいな。だが…俺に拒否権はない…」
懐からエボルトラスターを手に取り、まだ輝いていない宝珠を見つめた。
ティファニアを安心させる。それはシュウにとって不可能に近いことに思えた。いくつもの『責任』が彼から自由を奪う。それはこの世界に来る以前からまとわりついている。この光を手にした時よりも、ナイトレイダーになる以前よりもずっと前から背負うことになった重すぎる『責任』が彼の心を束縛する。
その責任を感じると、彼は自分がやはり村から出ていくべきじゃないか、とも考える。しかし使い魔であることを受け入れたから、ティファニアやマチルダがそれを良しとしてくれない。
(遊園地の時も、ナイトレイダーになったときも、この村に居ついても、俺は相変わらずだな。甘えているんだろうな…暖かな空気とやらに)
いつぞや、憐が言っていた。自分の運命を忘れていたい、と。あいつはかつて、病を患っていた。17歳でアポトーシスが全身で起こり死ぬはずだった。しかも特効薬は開発中止を宣告され、彼は見殺しにされたも同然だった。今は秘密裏に特効薬が開発されていたため助かったのだが、当時の憐もそうだったのだろうか。暖かな場所で誰かのために生きていれば、自分の過去も未来も忘れていられるのだろうか。
でも、忘れてはいけない。ナイトレイダーになった理由、ウルトラマンの力を手にした理由を…。

――――誰かの命を摘み取った大罪を。

マチルダは部屋を出てため息を漏らした。
あの青年に対して、彼女はある程度考えていることが読めてきた。詳しいことはまだわからないが、後ろめたいことをずっと引き摺り続けている。それに気づいたとき、見た目によらず女々しい奴だと思った。でも、そうだからって自分にどうこうできることではない。他ならぬ本人の意思だから。それに、女々しく見えるからこそこうも考える。
(…責任感は、あるみたいだね)
ちゃんとテファを安心してやれ、とは言っておいた。あとは本人次第だが、意思を持って言いつけをキチンと守るなら大丈夫かもしれない。
それに今回の相談で、自分がかつて起こした破壊の杖事件で対立したことのあるサイトたちのことを思い出す。村に突如来訪してきたのは驚いたが、テファや子供たちと思いのほか楽に打ち解けることができた少年少女たち。そこにはあの色情魔じみてるように見えていたツェルプストーの令嬢が口添えしてくれたおかげもあった。ああ見えて周囲への気配りや仲介が得意なのだろう。性格が正反対なのに、無口な青い髪の少女とも仲良くできるわけだ。エマとサマンサが変な知識を植え付けられていないかが心配だが。
ともあれ、一度は対立し合った仲の連中だが、エルフだの敵などというへだたりをなくせばシュウやテファと釣り合えるかもしれないし、ためにもなるかもしれない。
もうすぐ、自分が盗賊をやる必要がなくなるかもしれない。親の気持ちとしては嬉しいが、寂しくもあった。



一方、シエスタの家。
「さあて…白状してもらいましょうかサイト。一体この子に何をしたのかしら!?」
「そうですよサイトさん、人が心配しているのをよそにどこで油を売っていると思ったら…どこぞの娘と…!」
「ちょ…なんで怒ってんだよ二人とも!さっき見つけてきたばかりの女の子に俺が一体何をしたってんだよ!」
仲間と合流するや否や、サイトはルイズとシエスタ正座させられていた。なぜだろう?サイトはいくら頭にこんなことをさせられているのか理解できず、ご主人様と仲良しなメイドさんの二人のプレッシャーに充てられるがままにされ続けていた。
「やれやれ、サイトを見つけて大団円かと思ったらこれか」
「……」
「ダーリンったら、あたしという女がいながらいったいどこで女の子を拾ったのかしら。ちょっと妬けちゃうわね」
ギーシュ・タバサ・キュルケは完全にギャラリーサイドに立って傍観し、コルベールはホーク3号を竜騎士団の手を借りて学院まで運ぶための許可をとるためこの場にいない。
ホーク3号はあの後、王立研究所『アカデミー』から格好の的にされ、下手をしたら研究目的のために解体され二度と使い物にならなくなってしまうことになりかねないという危機に立つことを危惧された。ただでさえ怪獣がいつどこで現れるかもしれないこのとき、それは状況として厳しいものだった。だが、コルベールは何とか話を掛け合ってみせると頼もしい言葉をかけてくれた。それにあの戦いでは、ハルケギニアにはない技術で強化されたレキシントン号をはじめとした複数の艦隊も、ゼロが脱ぎ捨てたテクターギアの残骸も王室の監視の下で回収され、対アルビオン・対怪獣兵器として運用・研究がすぐに決定された。それらさえあれば、ホーク3号から興味がそれるかもしれないらしい。ともあれ、コルベールの説得がうまくいくことを願った。
そして…早くこの二人から解放されたいと、切に願った。
ルイズはサイトの傍らで寝かされている少女…ハルナを指さして怒鳴る。
見つけた後、ハルナが怪我をしていたということもあり、シエスタの部屋のベッドに寝かせ、タバサが水魔法で治療してくれた。どうも胸元に切り傷ができているが、止血し傷を塞ぐ分は問題ないそうだ。とはいっても、タバサ曰く回復や治療はモンモランシーの方が専門なので頼るならそちらの方をお勧めした。
しかし、サイトが妙にその少女に肩入れしていることからルイズがあらぬ疑いをかけたのだ。シエスタもお怒りの様子で、あの戦いで姿を消している隙をついて、どこぞの誰かも知らない女に、言葉では表しきれないほどの恥辱を味あわせようとしているのではと思い込んでいた。
「初めて見る顔の娘にしては随分とご執心だし、大きい胸はサイトさんのこの好みだって、もうわかりきってますし…」
「そのくせこのメイドと同じ黒髪!何もしてないなんて、あんたに限って信用できないわ!さあ、怒らないからはっきりと正直に答えなさい!!」
「明らかに怒ってんじゃないか二人とも!本当に何もしてないってば!」
必死に二人に弁明するサイト。下手をしたら無実の罪を着せられたまま死刑勧告を受けることになってしまう。と、デルフが顔を出してサイトを弁護してくれた。
「貴族の娘っ子。そう目くじら立てんなよ。相棒は神に誓って、この娘っ子には手を出しちゃいねえ。俺が保証してやる」
「…本当なんですか?」
シエスタがジトッとサイトとデルフを睨む。
「だから本当なんだってば!」
だが、事情を知らないルイズとシエスタからすれば、サイトが適当な言い訳をつけて女に手を出そうと考えていると思わせてしまった。
『大変だな。サイト。ま、俺にゃ関係ねーけど』
『このやろ…他人事だと思って…』
たしなめてるようで、結局静観を決めるゼロ。自分の中にいる宇宙人を恨めしく思うサイトだった。
「ルイズ、メイド。そこまでにしておきなさいよ。サイトにだけ弁明の余地も与えないなんてひどすぎるわ。それに、眠っている人間のそばで騒ぐもんじゃないわ。
まったく、相変わらず心の狭い子ね」
あまりにもサイトが不憫に見えたのか、それを見かねてキュルケが仲介役として会話に加わってきた。心が狭い、と不倶戴天の仇敵から指摘され、ルイズはぐぐ…と悔しげに顔をゆがませながらも押し黙る。シエスタも自分にも当てはまることになる、それゆえにサイトから嫌な目で見られるのを恐れ、渋々ながらも黙った。サイトは思わず無償の優しさを見せてくれたキュルケに涙を流しかけた。
「ダーリン、なんでこの子にこだわるのよ?」
「それは…」
彼は視線を、一瞬眠っているハルナに向ける。
「この娘…俺の故郷のクラスメートなんだ。俺の間違いじゃなければ、だけど」
「サイトのクラスメートですって…!?」
サイトは、ルイズによってこの世界から呼び出される直前までのことを語った。
ハルケギニアに来る直前、自分がクール星人という宇宙人に襲撃を受け、彼女と共に一度は宇宙船に無理やり連れ込まれたこと。それをGUYSの協力を得て、少なくとも彼女だけは先に脱出させることができたということ。その直後、宇宙船の爆破と同時に召喚のゲートへ飛び込んだことでルイズの使い魔となり、一命を取り留めたということまで簡潔に述べた。
「なるほど、顔なじみかもしれないのか。だとしたら放っておくことができなかったのもうなずけるね」
いつの間にか会話に入ってきたギーシュが、適当に相槌を打つ。
「しかし、平民にはもったいないほどの可憐な顔をしている。僕の専属召使にしてあげなくも…ウボァ!!?」
当然のことか、ハルナに色目を使ってきたのを察知したサイトがゲン直伝の正拳突きで顔面をぶん殴って気絶させた。
「その場しのぎで建てた話にしては出来過ぎてますね…」
シエスタもあまり信じたくは…いや、信じられない様子だったが、そういうことにしてあげる、ということでこれ以上追及はしなかった。しかし、冷静になってみればシエスタとしては興味深くはあった。自分の曾祖父フルハシと、想い人サイトとは同郷の人間。どんな人となりか知りたい。…最も、それゆえに自分にとってサイトをめぐる強敵となりうるという確信があったが。
「う…ううん…」
すると、ベッドで寝かされていたハルナから声が漏れだし、起き上がった。
「こ、ここは…?」
「高凪さん!気が付いたのか!?」
飛びつくようにサイトが彼女の元に寄る。同時に、ルイズとシエスタの目つきが鋭くなったのだが、サイトはハルナのことで頭がいっぱいだったのか全く気づきもしなかった。
「え?私を知ってる…?…って!」
サイトに名前を呼ばれ、彼女はサイトを見る。途端に彼女はサイトの顔を見て、目を見開いた。まるで自分の見ているものが現実とは思えないのか、サイトの顔に触れ始める。
「え?あの…高凪さん?」
女性のしなやかな手の感触がくすぐったく、かつ触られた感触が心地よくてサイトは顔を染めて固まってしまう。
「……本当に……平賀君…なの?」
「…うん。そう、平賀才人だよ」
「…………!!」
サイトが自ら名乗ると、開かれた彼女の眼からあふれんばかりの涙が流れ落ちた。
「本当に…本当に平賀君なんだ…うええええええええええええええん!!!」
「おわあ!!?」
さっきまで倒れていた人間とは思えない勢い余ったダイビング力のあまり、サイトはハルナに押し倒されてしまった。すぐに立ち上がろうとしたものの、彼女のすすり泣く声が聞こえてきて、立ち上がろうにも立ち上がれなかった。
「ひっく…本当に、平賀君なんだよね?幽霊なんかじゃないよね?宇宙人が化けた偽物とかじゃないよね?」
涙目なうえに上目使いで自分をまっすぐ見てくるから、サイトは思わずどきっと胸の鼓動を感じた。
「う、うん…久しぶり。それと…心配かけてごめん」
照れながらも、サイトはハルナに、一人地球から消えたことを詫びる。
「…うぅん、ちゃんと生きてたんだもの」
涙を拭きながら、ハルナは笑みを見せていた。一体何か月ぶりとなるのだろう。クール星人の企みによって引き裂かれた二人、一方があの事件の爆発の中、異世界に飛ばされていて、一方は助けられただけでただ見ていることしかできなかった。残された方が死んだとしか思えなくてもおかしくなかった。何度も、サイトの存在を諦めようと思っていた。でも諦めきれなくて、だから日々異世界とか宇宙とか、そんな分野の図書にすがったり、空虚な日々を送っていた。
だけど、また会えた。彼の笑顔、彼のにおい、声、そしてぬくもりを、やっと取り戻すことができた。ハルナはサイトの存在を間近に感じ、サイトとの奇跡的な再会に酔いしれた。
「ちょ…ちょっとあんた!なんで人の使い魔に抱き着くの!?離れなさいよ!」
「そうです!サイトさんから離れてください!」
が、それを許さない野暮天もいたのだった。
「使い魔ってなんですか?平賀君はれっきとした人間です!それを使い魔呼ばわりするなんて、いったいあなたはなんなんですか!?」
怒鳴ってきたルイズたちに不快感を覚えたハルナがキッとルイズたちを睨み返す。予想外にも相手から睨み返されたことに二人はうろたえる。
「確かに、人間を使い魔にしてるなんて思わないわよね」
「外野は黙ってなさい!」
茶化すキュルケにルイズは怒鳴ると、ハルナにサイトを使い魔にした経緯を簡潔に説明した。
「すごーく特例なんだけど、サイトは私が使い魔を召喚する魔法で呼び出し契約を交わしたの。だから、サイトは人間だけど私の使い魔なのよ。ほら、こいつの左手に契約のルーンが刻まれているでしょ?」
ルイズはハルナに、サイトの左手を引っ張り彼のルーンを見せる。ハルナがサイトの手を取って確認すると、古代ルーン文字が確かにそこに刻み込まれていた。
「………あなたが、平賀君を……」
「高凪さん…?」
わずか一瞬、ハルナはルイズに対する視線が変わった。その視線が異様に自分に突き刺さる感じに、ルイズは思わず身をこわばらせた。こんな目で誰かに見られるのは、初めてのことだった。同時に、何か底知れない感情の片鱗に触れたことを実感した。
サイトはそんなハルナのわずか一瞬の変化を感じ取ったが、すぐ彼女は真剣な目つきに直してルイズに言い返した。
「…平賀君があなたの使い魔にされたことはわかりました。ですが、あなたに私が平賀君に抱き着くのを邪魔する権利はありません」
「な、なんですって!?」
「私は、平賀君が地球からいなくなってからずっと会いたいって願っていた人なんです!再会を喜んで何がいけないんです!?」
この平民、なんて予想外なのだ。いかにサイトと同じ世界の人間だからとはいえ、ここまで自分に反抗してくる平民はサイト以来だ。
「い、いけなくないけど、表現の仕方に問題が…」
「抱き着くことの何がいけないんですか!?自分の使い魔に誰かが抱き着いただけでそんなに怒るなんて、おかしいでしょ!?」
「あ、あのさ…そんな喧嘩腰にならないで…」
あまり熱くなり過ぎると、ルイズが爆発を起こしそうな予感がしたのか、サイトが二人を宥めようと言葉をかけたのだが…。
「「サイト/平賀君は黙ってて!!」」
「…ふぁい」
二人同時に怒鳴られ、押し黙ってしまう。
「はいはい、騒ぎはそこまでにしときなさい」
「ぐ…」「う…」
これ以上口論を続けているとらちが明かない。キュルケが二人の間に割って入って彼女たちを落ち着かせた。サイトはここで疑問に思う。どうしてだろう、同じことをしたのにどうしてこんなに自分に対する態度と結果が違うのだろう…何かの悪意を感じてしまう。
「それより、まずこの娘から話を聞きましょうよ。ダーリンと同じ『地球』って世界から来たんでしょ?」
「あ、そうか!」
キュルケの言葉に、サイトはハッとなる。そうだ、自分の場合はルイズの召喚のゲートに飲み込まれてこの世界に来たことはわかる。シュウの場合もそうだった。けどハルナは?それがまだはっきりしていない。
「なあ高凪さん。君はどうやってこの世界に?」
ハルナはこの世界に来る直前までの記憶を辿りながら、みんなに説明を入れた。
「えっと……実は…平賀君がいなくなってからしばらく経った日なんだけど、帰り道を歩いてるとき、いきなり真っ黒な雲が頭上現れて…嫌な感じのする光が私を飲み込んでいったの」
「真っ黒な雲?」
彼女の言う『真っ黒な雲』とはいったいなんだろう。少なくとも自分は知らないものだ。ここは一族全員で怪獣退治の専門家である相棒その一、ウルトラマンゼロに尋ねてみた。
『黒い雲ってなんなんだ?ゼロ、心当たりは?』
『いや、わからない。雲を起こす怪獣は珍しくはないが、話を聞く限りおそらくその黒い雲が彼女をこの世界に導いた。でも、世界を超える雲を起こす存在は確認されていない』
ゼロも、ハルナの言う黒い雲について心当たりはなかったようだ。
『未確認の怪獣か星人の仕業ってことか』
『だな。…サイト、念のため彼女を俺たちの傍に置いて様子を見る必要があるな』
『当然!地球にいた頃から高凪さんには世話になっているんだ!』
地球にいた頃、サイトとハルナはとても仲が良かったのだ。彼女いない歴=年齢のサイトにとって、ハルナの存在は結構大きかったのである。なのに交際する関係に発展まではしてなかったのが不思議である。サイトが朴念仁だからだろうか。
「で、その黒い雲に飲み込まれた後は?」
キュルケからの問いに、ハルナは続ける。
「気が付いたら、知らない女のひとが私を介抱してくれていました。でも一度顔を合わせただけで名前も聞けなくて、そのあとはずっと閉じ込められていたんです。隙を見て逃げ出したんですけど…」
「行き倒れたということね?」
「はい、怪我も多分その時に…」
「つまり、この娘はサイトと違って召喚魔法を受けたわけじゃないってことね」
黒い雲と女性…。この二つについて引っ掛かりを覚えさせられた。特に黒い雲とは、いったい何なのだろう。
「結構気になることはあるけど、次はこの子をどうするかね」
「でも、これは私たちの手に負える問題じゃないわよ。私たちの判断だけでこの村に留まらせるのも気が引けるし、トリスタニアについたら引き取り先を探すとしましょう」
「え…!?」
「待ってくれよルイズ!それって…結局この娘をほったらかすっていうのか!?せめて俺たちで保護してあげるってことはできないのかよ!」
行く宛てのない大切なクラスメートを放り出す言い回しをするルイズに、ハルナは耳を疑った。サイトも信じられないと声を上げた。なぜ彼女が自分と同じ異世界に来たのかその理由がつかめない。私情も含まれるが、ゼロの言うとおり身の安全のために学院に置いてあげるべきじゃないか。
「あんた何言いだすのよ!元々シエスタの家に連れてきたのだってこの娘を介抱するためよ?いつまでも私たちの判断でこの村に留まらせていい理由なんてないし、ましてや学院にかくまうだなんて、村に勝手に置いておく以上におかしいわ。
第一、これからミスタ・コルベールが戻ってこられるのよ。先生だってお困りになるわ!」
ルイズは反対する。平民を勝手に学院に入れるのって先生に知られるのはあまりいいことではなかった。それは貴族としての対面にも関わることとなるし、見知らぬ人間を置いておくことはできない。コルベールにも相談することになるが、彼が平民と貴族の隔たりで人の価値を判別しないにしても、貴族の生徒たちを指導する教師という立場上難しい。しかし、サイトとしては彼女を放っておくことなどできなかった。
「理屈は間違ってないかもしれないけど…そんなの薄情じゃないか!一度関わった以上最後まで面倒見るもんだろ!?」
「じゃあどうやって私たちでこの先どうやって彼女の面倒を見るというのよ!犬や猫じゃないのよ!それに、預けようと思えばどこにでも預けられるじゃないの!たとえば、アルビオンのウエストウッドとかにでも預ければいいじゃない!」
「なんだとぉ…言わせておけば…!!」
そうしてあげたいのはやまやまだけど…なんて言葉さえもかけず、邪魔者か何かのようにぞんざいな言い回しをするルイズ。あまりにも頑なに反対する彼女が酷い女に見えてきたサイトはさすがに怒り始めた。ハルナはクラスメートで、自分と一緒にクール星人に誘拐された身でもあるのだ。いかにルイズが嫌だといっても、たとえシュウやテファのいるウエストウッド村の住み心地がよくても、だからって放っておくなど彼にとって男のとるべき選択じゃないのだ。
『ったく、何でルイズのやつここまで嫌がるんだ?』
それは、いきなり知らないやつを部屋に置くことになるのは気持ちがよくないかもしれない。でも、異性であるサイトよりも、同じ女性であるハルナもいた方がサイトよりも気兼ねなく会話できるはずだ。理由がまったく見当もついていなかった。
すると、タバサが本を読む姿勢のまま杖を振い、二人の頭に氷の塊が落ちてきた。
「あう!?」「いて!?」
「頭を冷やす」
うるさくて迷惑そうにしている。彼女の眼がそう語っている。頭を押さえながら逆にタバサを睨み返すと、キュルケがはは~ん、と笑う。
「ルイズ、あなたハルナに嫉妬してるのかしら?」
「な!?」
そういわれてルイズは顔を朱色に染めて目を見開く。
「だって、かくまうったってこの先ずっとってわけではないでしょ?なのにそこまで必死に嫌がるのは、ダーリンがやけにその娘にご執心だから何が何でも引き離そうとしてるんでしょ?」
「そ、そそ…そんなわけないでしょ!!なんで私が嫉妬なんてしなくちゃいけないのよ!」
こうは言うが、キュルケの眼は決してごまかせない。事実、ルイズはいまだ認めていないつもりでも、サイトを異性として意識しているのは、ワルドとの結婚式ですでにはっきりしている。ルイズの実家ヴァリエール家は異性に深い愛情を抱く分、嫉妬深いうえに愛を自覚するまでは素直にならない。ゆえに、ハルナを学院にかくまうことも、自身の嫉妬の感情も認めない。
以前ルイズがサイトに、先祖のかわいそうな寝取られ話を聞かせていたのだが、今のようにキュルケの実家は彼らの性格を手に取るように理解していたからこそできてしまった話かもしれない。
「それに、ウエストウッド村に預けるのは賢明じゃないわね。あそこはアルビオンよ?あの村が安泰でも、必然的にレコンキスタの支配する領土に入るのは危険だわ。ましてやあそこには孤児たちが少ない生活費で暮らしているから、新しい入居者は迷惑でもある。それに、これは嫌な言い方になるけど、私たち貴族が地図にも載らない小さな村の住人を頼るなんて対面的にどうかしらね?」
「ぐぐ…で、でも!ミスタ・コルベールにどう説明すればいいのよ!」
「それなら大丈夫よ。あの人は異世界人のサイトや、シエスタのひいおじいさんの遺産にも強い興味をひかれたのよ。だったらハルナのこともなんともないじゃない」
そうだった。ハルナもサイトも同郷の人間同士。コルベールはホーク3号を見つけて以来、サイトの故郷である地球のことについてやたら興味を示し始めている。ホーク3号の発見の際は、大層喜んだものだ。しかもサイトやシエスタからホークの話を聞き、二人の血筋がハルケギニア人ではなく、地球人のものだと知るとさらに興奮。サイトには特に地球とは一体どのような世界なのか是非聞きたい、いつか連れて行って欲しいと頼むほどだ。地球人として、自分の故郷に興味を持ってくれることは、サイトとしては非常に嬉しかったが、あいにくこの世界が地球からどれほど離れているのかなんて見当もつかない。場所が分かっていたのならとっくに帰っていた場合もあったかもしれないのだから。ともあれ、ハルナのことについてもこちらがお願いすれば、かくまうどころか教師権限で学院長に何としても口添えし、正式な保護をしてくれるかもしれない。
「しばらく平民用の寄宿舎の空部屋とかにかくまうなりしてあげなさいよ。当分の間だけでいいのよ?それにあなた、自分で言ったでしょ?『どこにでも』預けられるって」
ルイズは思わず絶句した。そうだ、言ってしまった。『どこにでも預けられる』と。つまり、そのつもりで言ったわけでなくても、別に学院に預けてもいいと自分で言ったのだということになる。それを言ったところで、キュルケから『ヴァリエールは自分の言ったことに責任を持てない』なんて馬鹿にしてくるので言い返せない。
「ルイズ、お願いだから彼女を学院へ連れて行くことを許してくれよ。この娘の知り合いは俺だけなんだ。だったら知っている人が傍にいてやる方が彼女のためになるはずだろ?」
「…私からも、お願いします。私は知らない場所よりも、平賀君の傍にいたいです!」
「…うう…わかったわよ!連れてってあげるわよ!連れてけばいいんでしょ!?」
再び懇願するサイトに、当然ながら同調するハルナ。これ以上反対しても、これでは自分が悪者みたいではないか。仕方なく、ルイズはかくまうことを許してくれた。
「ありがとな、ルイズ」
「…ふん!……まったく、なんで私がこんなことを…」
無論、そっぽを向いて、ぶつぶつひとりでに不満そうに文句を垂れていた。やはりキュルケの予想通り、サイトを取られまいと過敏に嫌がっていたからのようだ。
「うん…ありがとう、平賀君。平賀君がいてくれるだけでも、私とっても心強いわ」
「そ、そう…?」
ハルナは、サイトが自分のために必死になってくれていることを大変うれしく思い、ほほに赤みを指しながら笑顔を向ける。その笑顔が眩しくて、サイトも思わず照れてしまう。
「「…」」
ルイズとシエスタは、心なしかいい雰囲気になる二人を、剣や槍よりもものすごく鋭く視線で、今にも二人を貫きそうな視線で睨みつけていた。
(これから面白いことになりそうね)
そんな、ある種の危険状態でありながらも、寧ろこの状況を楽しんでいるキュルケと、われ関せずといった感じで静かに本を読み続けるタバサであった。
…ギーシュ?さっきからずっとそこで伸びているだけだ。返事がない、ただの屍のようだ。
「生きてるよ!」
ちなみに、この後コルベールは何とか説得に成功して戻ってきたことで、ホーク3号は破壊の杖=MACバズーカ同様学院が回収したマジックアイテムとして、学院の傍らに保管されることが決まった。
そして本来、タバサとキュルケがアルビオンまでの旅路に同行したため、ギーシュもアルビオンへの任務期間は公欠扱いになったものの、その直後のタルブ村来訪はサボりと判断され罰則される予定だったが、コルベールが自分の研究につき合わせたということでサボりは免除された。とはいえ、今後は勝手なことをしないようにと釘を刺されてしまった。

その後、サイトはシエスタの実家から多大な感謝を受けた。竜の羽衣ことウルトラホーク3号の浮上という奇跡を起こしたことで、インチキ扱いされた曾祖父フルハシの名誉挽回が成し遂げられた。ホーク3号の活躍でも村人たちが救われたこともあり、サイトはすっかり英雄視されていた。が、シエスタの父親によってちょっと怖い目にあった。娘がサイトにお熱であることも知ったシエスタパパは、「娘を泣かしたら殺すよ?」と恐怖の笑顔をサイトに向け、サイトはただ恐怖に駆られるまま頷かされたという。

 
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