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エターナルトラベラー

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第十一話

それから1週間、俺はドクターの古屋に厄介になりながら、アルビオン軍から身を潜めていた。

薬を取りに来たタバサに聞いた話では、アンリエッタ女王は捕まり、幽閉されてしまったらしい。

体のいい人質だし殺されはしないだろう。

ルイズ達は杖との再契約も終え、アンリエッタの救出に向うらしい。

勇ましいことで。

しかし始祖の祈祷書は学院に置いて来たままだ。その状態でどうやって救い出すつもりなのだか…

勿論その救出部隊にキュルケとタバサは入っていない。

当然だ。彼女らはトリステインの人間ではない。

そんな彼女らが他国の問題に首を突っ込む事は出来ない。

だからルイズ達トリステイン組でやらなければならない。

だが、助け出した所で事態が好転するはずも無いのだが…

まあ、その辺は主人公なのだから何とかするだろうさ。

俺はもうこれ以上は関わらない。

この先なにが起こるか頭目検討もつかない状況で、深入りするのは危険すぎる。

俺は日和見を決めた。



そんな事があってから更に一月、トリステイン王国は地図上から消えました。

アルビオンに支配されて。

貴族たちの大半は杖を取り上げられて投獄生活。

当たり前だ。

誰が鬼に金棒を与える物か。

そうそう、アンリエッタは無事に助けられたようだ。

今は国外で潜伏してるのだろう。

もしかしたらウェールズとよろしくやってるかもしれない。

今トリステインはアルビオン貴族で領地を与えられていなかった奴らに分配、支配されている。

まあ平民にすれば支配者が代わっただけ。

たとえトリステイン貴族に煽られても日和見だろう。

ガリアの動きは無い。

情報も無いので知りようも無いが、ガリア王、ジョセフは何を考えているのか。

まあ、領土を増やしたレコンキスタ相手にどうやって暇を潰そうかとも考えているのだろう。

なんだかんだで始祖の祈祷書はジョゼフに渡ったみたいだからね。

ルイズ達が必死の思いで学院に潜入し、探してみたが、持ち去られた後のようだった。

ピンポイントで始祖の祈祷書を狙うのなんてヤツ位なものだ。

ミョズニトニルンにでもパシらせたんだろう。

これは本格的にこれからの事を考えないとマズイな。

ゲルマニアにでも行って農地を買い、ソラと2人でブドウ畑でも作ってワインの醸造でもしながら暮らすかな。

一応一生生きていけるくらいのお金は持ち出してあるからね。


しかし最近どうにも不穏な気配をそこかしこから感じる。

景色がぼやけたと感じる事も。

夕飯時俺はその事をドクターに話した。

「景色が歪む?」

「そ」

「うーむ。それは研究のしがいがありそうだ」


次の日、タバサがシルフィードに乗ってドクターの古屋に現れた。

ドクターは今は居ない。昨日話した変異をその目で確かめるべく探索中だ。

俺はタバサを招きいれ、紅茶を振舞った。

「貴方達のおかげで母上は助かった。ありがとう」

そして少ないけれどと、エキュー金貨で300手渡してきた。

それから。

「借りひとつ」

律儀なものだ。

その母親はと言うと、キュルケの実家を頼って亡命したらしい。

政治的にも今はゲルマニアに居るのが安全か。

そんな時、玄関の扉をノックする音が。

コンコンコン

「アオ」

怪訝に思ったソラ俺にどうすべきか聞いてきた。

今回は本当に外の人物に心当たりが無い。

ドクターと付き合い始めてかなり立つが、ドクターの古屋を俺達以外が訪れたことは今まで一度も無かった。

コンコンコン

さらにノックは続けられる。

タバサは無言。

アルビオン軍か?

ドクターが居ないことが悔やまれる。

居たら居たで厄介な事になるが、ここら辺り一帯の精霊と契約しているドクターを前にしては魔法使いも傭兵も物の数ではない。

ドンドンドンガラッ

扉が勢い良く開け放たれる。

そして開け放たれた扉から覗く人物はと言うと、ルイズ、サイト、マルクスにウェールズ。それとフードを被ってはいるが恐らくアンリエッタだろう。

「こちらから開ける前にそちらで開けるのは礼儀を失していると思うのだが」

「それはすまなかったわ」

ルイズが謝るが、どうにもその態度にすまなそうな欠片は無い。

「この場所を知っているのは居ないはずだが、タバサ?」

フルフル

首を振るタバサ、教えては居ないらしい。

ならばつけられたか。

「つけられたな」

「後ろを追ってくる気配は無かった」

弁解するタバサ。

しかしあっちには四極のマルクスが居る。

前世の知識をいかして風の魔法でステルス効果を生み出す魔法くらい作っていても不思議じゃないか。

「今日は貴方達にお願いがあってきたわ」

そうして語られた内容を要約するとこうだ。

トリステインを奪還したいから手を貸せ、と。

長々言い訳のような講釈をされたが実際はこれだけだ。

「お断りします」

「な!?」

関わりたく無いと前も言ったと思うのだが…いや言ったのはタバサにだったか?

俺が断るのが予想外だったのだろルイズが驚愕の声を上げた。

「何故!?あなたそれでもトリステイン貴族!?」

「もとトリステイン貴族だ。今はアルビオンに支配されている」

「それを奪回しようとしているんじゃない!?」

「何故?」

「何故って故国を不当に奪われたのよ!」

「そうだね。でもそれで不利益を被ったのは?」

「え?」

「貴族の協力を請うのは良い。でも支配される平民の協力こそ一番必要だと思うのだけど?」

「支配される事に慣れている平民が私達のようなクーデターに加わるわけ無いじゃない」

「そうだね。わかっているじゃないか」

「え?」

わかってないのか…

「支配される平民にしてみれば誰に支配されても同じと言う事だ。つまり君達は単に自己の権利を奪われたために過去の栄誉を奪い返したいだけなんじゃないか?」

やべ、SEKKYOUしてしまっているぞ?今の俺。

落ち着け、俺。

「えらそうな事を言ってしまったけれど、俺達には協力の意思はない。帰ってくれ」

俺は言い捨てて扉を閉めようと手をかける。

「待ってくれ」

呼び止めたのはマルクスだ。

「何だ?」

「こっちも必死なんだ。そんな言い方は無いだろう」

だいたいお前の所為だろうが!

其処のところの追求はどうなったんだ!?ルイズ達は。

それにこれ以上主人公組と一緒に居ると死亡フラグが乱立しそうでいやなんだ…

ここは無視だ無視。

「くっ、ならば決闘だ、勝った方が負けたほうの言う事を1つ聞く。ぼくたちがかったら勿論君達にトリステイン奪回を手伝ってもらう」

いやこいつ馬鹿?

そんな一方的な言い分聞くわけ無いだろう。

「断る」

無視して扉を閉めようとしたところ、俺は魔法で吹き飛ばされた。

「ぐあっ」

俺はドクターの古屋のをその体を打ちつけながら転がっていく。

「アオ!」

あわてて近づいてくるソラ。

すぐさま水の魔法で治療してくれる。

治療が終わるとソラはマルクスを鬼の形相でにらめつける。

「何しやがる!」

俺は堪らず声を荒げる。

「手荒なまねはしたくなかったが、こちらも必死だ。その貴重な変身能力は是非とも得たい」

何を勝手な!

アンリエッタ達も国のためなら仕方なしといった感じで話に入ってこない。

原作を思い出しても彼らの思考回路はおめでたい。

彼ら一人一人が皆悲劇のヒロインなのだから。

しかもマルクス!自分の意思が通らないとなると実力行使とは。

あー、なんか腹立ってきた。

けど実力じゃ敵わないからなぁ…

「わかった、その勝負を受けよう」

「アオ!?」

俺はソラに近づくとコソっと耳打ちする。

(金貨を集めて)

(え!?)

(勝負すると見せかけて逃げるから)

しばらく身を隠すと暗に含めてソラに説明する。

(わかった)

「表にでろ!」

俺はそう言ってマルクスを外の開けたところに誘導する。



しばらくして森が開けた広場で対峙する俺とマルクス。

するとタバサが俺の前に立ち遮った。

「タバサ?」

「一個借り」

「そうは言っても四極に勝てる?」

「………貴方なら勝てる?」

いやいやいや。

「無理だ」

(大丈夫、決闘が始まったら逃げるから)

ボソっとタバサに話すとわきにどけた。

マルクスの方ではようやく無理やりにとか決闘はとか止めに入っているルイズ達。

しかし結局杖を抜き放ちこちらに向けるマルクス。

「覚悟はいいか?」

「ソル」

俺は胸元から待機状態のソルを持ち出す。

『スタンバイレディ・セットアップ』

「な!」

一瞬で宝石の形が変わった事に一同驚いていたがその中で一番驚いたのはマルクスだ。

「バル……ディッシュ」

「バルディッシュ?」

ルイズがマルクスに問いかける。

しかしそれに答える余裕が無いマルクス。

「なんで君がそんな物を持っている。それはリリカルなのはのデバイスだろう?」

「答える義務はない」

「この前の事でもしやと思っていたのだが君も転生者なんだな、ならば君も知っているだろう、話が此処までずれてしまった、君達の協力が要る」

「この前も言った。お前の尻拭いをする気はないと」

「な!?」

「今回の事は恐らくウェールズが生きている。それだけでここまでずれたんだ」

「なんだと?」

「ミスタ・オラン君は何をいっているんだ?」

ウェールズが自分の事が話題に出たために会話に入ってくる。

「詳しくはそいつに聞いたら良い。だが、その結果がもたらしたことに俺達を巻き込むな」

と、ウェールズに答えているとマルクスから魔法が飛んできた。

『ディフェンサー』

防御魔法でその魔法をそらす。

ギリギリだった…

防御もソルが反応してくれたから出来ただけだ。

「危ないじゃないか!」

「インテリジェントだと!?貴様何処でそんな物を」

「造った」

「な!」

正確にはドクターがだが。

「今度はこちらから行くぜ!」

『フォトンランサー』

「ファイヤ」

マルクスにせまるフォトンランサー(偽)

着弾と共に俺は叫ぶ。

「ソラ!」

俺はソラにコンタクトを取るとすぐさまフライの魔法を使用、大空に駆け上がる。

フォトンランサー(偽)がもたらした土煙の中から土煙を来散らしながら風の魔法が俺の方へと走る。

『ディフェンサー』

「ぐっ」

マズイ、威力が半端ない!

「ソル!カートリッジ・ロード!」

『ロードカートリッジ』

ガシュっと一発ソルから薬きょうが排出される。

その瞬間強固になる俺の魔法障壁。

ドクターに頼んでおいたカートリッジシステム。

その弾丸は全部で12発しかない。

この弾丸は封じられた魔力で系統魔法1つ分追加する。

つまり擬似的にスクウェアに匹敵する威力が得られるのだ。

しかしそれもソラと半分にしており、実際は6発。

虎の子の6発のうち1発を早くも消費してしまった。

何とか耐え切った俺は合流したソラと共に全速力でその場を離れる。

「アオ」

「大丈夫だ、逃げるぞ」

「う、うん」

しかしその逃亡を妨げる1つの炎弾。

「うおっ」
「きゃっ」

何とか炎弾をさけ、俺達は放たれた方を向く。

すると大火竜に乗ったマルクスの姿が。

先ほどの炎弾は大火竜の物だろう。

「決闘中だろう。逃げるな!」

「そう言うお前も使い魔を使っているじゃないか!」

「使い魔と主人は一心同体。問題ない」

「有るわ!」

次々に迫り来る炎弾。

「くっ」

かわすのも辛い。

炎弾で追い詰めた所にマルクスの魔法がやってくる。

『ロードカートリッジ、ディフェンサー』

薬莢が排出されスクウェアクラスの障壁をはり何とか耐える。

残り4発。

「アオ!」

俺に近づこうとしたソラに向って炎弾が放たれる。

それを障壁で弾くソラ。

「お前!ソラは決闘に関係ないだろう!」

「決闘中に近づくのが悪い」

くそ!先ずあの大火竜を何とかしないと逃げ切れそうも無い。

逃げる後ろからの炎弾やら魔法やらを避けるのは至難の業だ。

「ソラ!あの大火竜の動きを止めてくれ!」

「え?う、うん」

「他者に助力を求めた時点で君の負けだ」

俺は決闘している訳ではない。

決闘に見せかけて逃げられればいいのだ。

「知った事か!」

『フォトンランサー』

「ファイヤ」

魔法を放った瞬間、俺はソルを左手に持ち直しガンダールヴ(偽)と写輪眼を発動させる。

放たれた魔法に紛れマルクスに突っ込んでいく俺。

「馬鹿な、死ぬ気か?」

俺のフォトンランサー(偽)を上昇して回避、その後隙もなく俺に炎弾を吐く大火竜。

迫り来る炎弾を写輪眼で見切り、ギリギリで回避してマルクスの懐に飛び込む。

『サイズフォーム』

変形したソルにブレイドの魔法を纏わせ、力いっぱい切りつける。

間一髪マルクスも自身の杖にブレイドを纏わせ受けるが、強化された俺の腕力の限界で叩きつけらたその体は踏ん張りがきかず、大火竜からはじき出されてしまう。

俺も勢いを殺しきれずそのまま離脱。

「ソラ!今!」

「ルナ!」

『ロードカートリッジ』

ガシュガシュ

二発のロード音が響き。

「リングバインド×2」

渾身の威力を込めたバインドが大火竜を拘束する。

「ソル!」

『ザンバーフォーム』

此処からはぶっつけ本番!

出来るかどうかもわからない!

「カートリッジロード!」

『ロードカートリッジ』

ガシュガシュガシュ

ロードされるのは3発分。

風のヘクサゴン。

そして形成される極大のブレード。

「馬鹿が!空中で良い的ではないか!」

フライの魔法で飛びながらこちらに杖を向けるマルクス。

だが馬鹿はお前だ!

ルーンを詠唱しようとした瞬間そのまま地上に向けてまっ逆さまに落ちていくマルクス。

「うわぁぁぁぁぁぁ」

予想外のことでパニックを起こしてフライの魔法を唱えられないようだ。

地面に激突するまでには唱えるだろうが、その隙だけで十分。

俺はソルを振りかぶり、一気に振り下ろした。

「プラズマザンバーーーーブレイカァーーーーーっ!」

カートリッジを使い極限まで高められた必殺の一撃がバインドで拘束された大火竜の翼に直撃、打ち砕く。

「グォォォオオオオオオ!」

翼を打ち抜かれ、追加効果で感電しながら大火竜は地上へと激突した。

「はぁ、はぁ。やったか?」

「アオ、大丈夫?」

「あ、ああ。大火竜は」

「再起不能そう」

「そうみたいだな」

翼は辛うじてくっ付いている程度、全身は雷によって焼け焦げている。

死んでは居ないがあの状態で空を飛んで追ってくることは有り得ない。

「貴様よくも俺の使い魔を!」

マルクスがフライの魔法を使用して俺の前に現れた。

……確かに素の状態、地上戦なら俺に勝ち目は20パーセント位しか無いだろう。

しかし、その前提が変わる状況がある。

つまり空戦。

竜種の使い魔が居ない今、マルクスは空を飛びながら魔法を使うことは出来ない。

と言うのに俺の前に現れたマルクス。

格下の俺に使い魔を打ち破られた事に激昂していて自分の状況がわかっていないようだ。

『リングバインド』

「サンダースマッシャー(弱)」

「があっ」

捕縛魔法とのコンビネーションで呆気なく気絶、落下していくマルクス。

地上にぶつかる前にレビテーションを使用して激突は防ぐ。

あれだけの力を持ちながら最後は呆気ないものだ。

あるいは地上から固定砲台と化していたら俺達が負けていたかもしれない。

流石に火力では勝てないのだ。

冷静さを失っていてくれて助かった。

改めて思う。空戦は凄いアドバンテージだと。

「さて、さっさと逃げるか」

「うん」

「しばらくゲルマニア辺りで隠れながら過ごすことになるな」

「何処でもいい。アオと一緒なら」

くっ、ヤバイ!今の言葉は卑怯だよソラ!

だがそんな時、辺りの空間が歪み、景色から色が消える。

「え?」

「何?」

驚いて見渡すと頭上の空が俺がプラズマザンバーを振りぬいた軌跡にそって裂け、開いた亀裂に別の空間が開き、辺りのものを吸い込み始めた。

「ソラ!」

「アオ!」

いきなり抗いようの無い力で引き寄せられる俺達。

「くっソル!」

抵抗のしようの無い力に引っ張られた俺は脱出を諦めソラをしっかりと抱き寄せると周りの空気を操作して球形にしてバリアを形成する。

そのバリアごと俺達は空間の裂け目に吸い込まれてしまった。

「きゃあああ」
「うああああ」

吸い込まれた俺達はその内側からその裂け目を見ると、見る見る塞がっていくのがわかる。

どうやら一時的なものだったようだ。

こうして俺達はゼロ魔の世界から消えた。 
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