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ロックマンX~5つの希望~

作者:setuna
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第三十八話 彼女達の戦い2

帰投したエイリアを迎えたのはアイリス、パレット、シグナスであった。
パレットは今まで視線を注いでいたモニターから離し、笑いかけた。

パレット「お帰りなさい」

エイリア「ただいま」

エイリアは辺りを見回すが、レイヤーの姿はなかった。

アイリス「レイヤーはエイリアさんの無事を確認したら出撃してしまいました。時間がないし、エイリアさんの顔を見たら、名残惜しくなると言って…」

エイリア「そうなの…」

エイリアはかつての自分を思い出す。
先の大戦まで、自分はエックス達を見守り、迎える側であった。
傷ついた仲間を迎える時、喜びと悲しみが錯綜したのを覚えている。
殊にエックスは戦いを望まぬ性格故に、苦痛を堪えた表情を浮かべていることが多かった。
その彼を笑顔で迎え、労うことも、支える自分の大切な仕事だと思っていた。
笑顔で送り出すこともまた。
エックスはそんな彼女に笑顔で応えたが…。

エイリア「レイヤーはそういうの苦手なのかしら…」

パレットはそれを聞いて、キョトンとしたが、すぐに可笑しそうに笑った。

パレット「そんなわけないじゃないですか」

エイリア「え?」

パレットは本当に可笑しかったようで、しばらく笑い続けていた。
ようやく収まった笑みは、自信に満ち、見る者をハッとさせる笑みを浮かべた。

パレット「レイヤーだって、笑顔で迎えられたいに決まってますよ。無愛想なゼロさんだって、本当は嬉しいですよ、素っ気ないけど。辛い時とか、話したくない時とか、放っておいて欲しい時もあるかもしれませんよ?でも基本笑顔で“お帰りなさい”って言って欲しいに決まってます。…レイヤーが先輩に会わずに行っちゃったのは、出撃するのが辛いから。…先輩に“行ってきます”と言ってすぐに戦場なんて辛い…私もレイヤーも怖いです」

エイリア「……………」

パレット「でも、次はきっと先輩に挨拶してから、行くと思います。今度は大丈夫。私は帰ってきたレイヤーに“お帰りなさい”って言います」

パレットの笑顔はとても明るく、眩しい太陽を思わせた。
エイリアもパレットの笑顔に微笑を浮かべて頷いた。

エイリア「私もレイヤーに“お帰りなさい”って絶対に言うわ」




































当のレイヤーはダークネイド・カマキールと対峙していた。
刃の打ち合いは、既に何度も行われ、獲物の鋭い切っ先は健在だが、レイヤーは腰や肩に裂傷を負い、カマキールは足をレイピアで貫かれ、闇に紛れる機動力を失っていた。
両者は互いにタイミングをはかる。

カマキール「大したもんだなアンタ。」

カマキールが沈黙を破る。
それは、皮肉ではなく、本心から実力を認めた響きである。

レイヤー「イレギュラーに褒められても嬉しくありませんね」

カマキール「そうか?ははっ…」

再び沈黙が戻る。
しばらくしてカマキールが再度口を開いた。

カマキール「なあ、アンタの言うイレギュラーってのは何だ?」

戦場に似合わぬ穏やかな声でレイヤーに問う。

レイヤー「知れたこと…あなたのように残忍で人々に害をなすレプリロイドですよ」

カマキール「そうかい?俺はてっきり、あんたらに従わないレプリロイドだと思ってたぜ?」

レイヤーは思わず目を細めた。
“イレギュラー”…人間やレプリロイドに害をなす機械。
だが、その定義が綻びているのをレイヤーは知っている。
かつてのレプリフォースのように、一方的にイレギュラーの烙印を押された者がいる。
イレギュラーの定義も、正義の形すらも今となっては曖昧となっており、“イレギュラー”達の嘲笑の対象となった。

カマキール「あんたらには分からねえだろうな…俺達の存在理由を、俺達はこの世界を変えるために造られた。この歪んで、狂った世界をよ!!」

レイヤー「(狂った…)」

世界には沢山の矛盾がある。
レプリフォース大戦では互いに認め合ったゼロとカーネルが戦い、上司と部下の関係であったエックスとディザイアが戦った。
親子のような関係であったアクセルとレッドも殺し合った。
そういう視点からすれば確かにこの世界は狂っているのだろう。

レイヤー「(皆さんは悲しみを乗り越えて戦っている…世界を守るために…)狂っているのはあなたですカマキール」

カマキール「そう言うと思ったぜ」

カマキールが嘲笑い、再び鎌を構えた。

カマキール「どちらが正しいのか、次で決めようぜ…」

レイヤー「望むところです……」

戦いは最後の幕を迎えた。
次の一撃が最後となる。
息を詰め、静止した2人の空気が弓を引き絞るかのように緊張感を高めていく。
暗闇の空気が、ピタリと止まった一瞬、揺れ動いた。

レイヤー「たああああ!!」

カマキール「うおおおお!!」

互いの刃が急所目掛けて、宙を真っ二つに切り裂いた。
勇姿が交差し、暗闇に火花が散った。
反対方向に跳んだ2人は、直後に目を見開いた。
鮮血が上がる。
レイヤーは噴き上げた血に大きくよろめいた。
カマキールは笑っていた。
勝敗に目を細め、彼女に賛辞を送った。

カマキール「やるじゃねえか」

血を噴き上げてカマキールは絶命した。
闇が戻る。
漆黒の闇は、むせ返る血の匂いで一層濃くなった気がする。
失血により、眩暈がする身体を押して、レイヤーは死骸となったカマキールを見下ろした。
血染めの身は、闇に吸い込まれて消え入るよう。
彼女は冷たい死体に届かぬ声をかけた。

レイヤー「私達が不完全なのも、それ故に擦れ違い、争うことも知っている…しかし不完全だからこそ、手を取り合い、支え合うことが出来る。それが私達レプリロイドなのです」

彼女の声は漆黒の闇の中で響き渡る。 
 

 
後書き
カマキール撃破。
 
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