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ロックマンX~5つの希望~

作者:setuna
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第三十二話 Noah's Park

 
前書き
オープニングステージ。
原作とはかなり掛け離れます。
 

 
先日、コンテナが落下するという事件が発生したが、コンテナに収められたレプリロイド達は皆無事であり、直ぐに作業は再開された。
現在は順調に作業が進められている。
そう、全ては順調だった。
殊にハンターベースのオペレータは、今やハンターに匹敵する実力を身につけている。
バーチャルトレーニングルームでは、オペレータが稽古に励む姿が拝めるだろう。
ルナとエイリアは仮想エネミーを後1体にまで追い詰めていた。
都市の銃撃戦を想定した訓練である。
群生する高層ビルが光を反射し、南国とは違う、刺すような光を放つ。
アスファルトがひび割れ、殺伐とした快晴の中、エイリアは真っすぐにバスターを構えた。
バックアップはルナがしてくれている。
もし彼女が撃ち損ねたら、即座にレーザーがイレギュラーを撃ち抜くだろう。
イレギュラーは一瞬の油断も許されない敵なのだから…。
息を詰めたエイリアが放ったチャージショットはイレギュラーを貫き、破壊した。

ルナ「お見事」

拍手をしながらエイリアの健闘を褒めたたえる。
エネミーの消失と共にバーチャル空間が解除され、空間が殺風景な白に変わっていく。

エイリア「ちょっと緊張し過ぎたかしらね?」

息をついてバスターを下ろす。

エイリアバスター

エックスバスターを元に造られた同系統のエイリアの主武装である。
銃口は元に戻り、細く美しい指が現れた。
長い金髪をかきあげると、白い手と金色の対比が鮮やかである。

エイリア「まだ動きに隙が生じる。あなたやルインのように素早くは動けないわ」

ルナ「はは…でも、もうあんたは充分強いよ。ハンターとしてやっていけるくらいにはな。」

バレットを収めると、笑顔を浮かべる。
彼女の敵に踏み込む動作や、回避から攻撃に転じる動きも迅速である。
殊にチャージレーザーによる高い火力とバレットの高い連射性を活かした戦い方はアクセルやエックスを彷彿とさせる。

ルナ「そういや、エイリアは非武装タイプだったな?」

エイリア「え?」

ルナ「レイヤーとパレットは武器を携えて戦うけど、エイリアはバスターを装備している。ボディを改造しなきゃ出来ないこと…最初は自衛のためかなと思ったけど違うようだな。…エックスのためか?」

エイリア「………」

彼女の瞳は静かながら熱い、真剣なそれであった。

エイリア「ええ…エックスやルイン達の戦っている姿を見て、私も力になりたいと思ったの。私は彼をサポートすることは出来るけど、一緒に戦うことは出来ない。エックスの痛みを傍で感じながら、私はとても無力だった。でも、力さえあれば…ルインと一緒に彼を支えられると思ってね…」

ルナ「健気だねえ…」

実際口にしたし、そう思った。
恐らくはエックスのことをずっとルインとは違う視点で見守っていたからだろう。

ルナ「なれるさ、きっと。エイリアなら、こんなに頑張ってんだから」

エイリア「ありがとう。ルナにも素敵な人が現れるといいわね?」

ルナ「そりゃあ皮肉のつもりか?」

エイリア「さあ、どうかしら?あ、でもアクセルがいるものね」

ルナ「は?何でアクセルが……」

疑問符を浮かべながらエイリアに尋ねようとするが、それよりも前にアイリスからの通信が入る。

アイリス『ヤコブ周辺施設にてイレギュラー発生!地域のハンターは現場に急行して下さい!!』

警報とアイリスのアナウンスがけたたましく響く。
ルナは歴戦の戦士らしく、エイリアはベテランのオペレーターらしく、すぐさまそれぞれの持ち場についた。





































エックス達はこの日、ノアズパークにいた。
ガラパゴス諸島に位置する公園。
ヤコブ計画に携わる者が休息を取るこの施設でエックス達もまた、僅かな休日を過ごしている。
豊かな自然を持つ島は、熱帯の暑さを持ちながら同時に涼しくもあった。
滝から勢いよく落ちる水は爽快で、洞窟の中はとても冷え切っている。
洞窟は真っ暗というわけではなく、発光能力を持つバイオロイドの仄かな光に照らされて幻想的な光景を顕していた。
はしゃぐアクセルに苦笑するエックスと喧しそうにアクセルを見遣るゼロ。
そしてしばらくして、見慣れた姿を発見した。

ゼロ「ホーネック」

かつてはゼロの部下であったエクスプローズ・ホーネックはゼロ達の姿を認識すると、親しげな笑みを浮かべた。

ホーネック「エックス隊長にゼロ隊長、それにアクセルまで…隊長達は今日は休みなんですか?」

エックス「今日はね、明日からはまた警備だよ。」

ホーネック「そうですか…俺は午後からです。時間があるから少し気分転換に散策をしてたんです。」

アクセル「大変だね」

ゼロ「大変だじゃないだろう。お前、警備任務の報告書を出したのか?」

アクセル「あ゙…」

ゼロのツッコミにアクセルは冷や汗をかいた。
昨日の報告書をまだ出していないのである。
そしてエックスはゼロを呆れた視線で見遣る。

エックス「人に注意する前に自分はどうなんだいゼロ?俺は既に提出したけど」

ゼロ「…エックス」

エックス「自分の仕事くらい自分でしてくれ」

以前気軽に引き受けてルイン共々エライ目に遭った。
その教訓を活かしてゼロの頼みを拒否する。
愕然となる人、1名追加。
3人は愕然と憮然と苦笑いに包まれた。

エックス「(平和だな…)」

そう思った矢先、今世紀最後の戦争が起こるとは誰が予想出来ただろうか?
彼の心中を嘲笑うように大地を揺るがす轟音が鳴り響いた。

全員【!!?】

黒煙が上がり、パラパラと壁が崩れる音が聞こえた。
遠くからこれだけの音が聞こえたということは大きな爆発に違いないと確信し、エックスは即座に叫んだ。

エックス「急行するぞ!!ホーネック、君はハンターベースへの通報とこの人達の避難を!!」

ホーネック「了解しました!!」

エックスの指示にホーネックは力強く答えた。
こうして西暦21XX年最後の対戦が幕を開ける。
























そしてエックス達が急行してから4時間後…。
ルインとルナは今、ノアズパークを走っている。
すぐ後ろにはエイリア、パレット、レイヤーが追い掛けて来る。





































トレーニングルームから指令室に駆け込んだエイリア達の視界に飛び込んできたのは、ノアズパークを逃げ惑う人々と、誘導するハンター達の姿。
騒ぎは鎮まり、安全な場所に移される人々。
彼らの顔には恐怖がありありと浮かんでいた。
その表情がエイリア達の胸を締め付ける。

ホーネック『避難は完了しました』

ホーネックからの通信を受け、一先ず安堵した。
その後、同僚と後輩2人に凛とした声で言った。

エイリア「アイリス、レイヤー、パレット。エックス達をサポートするわ!!」

爆撃の原因を探りに行ったエックス達をサポートしようとするが、アイリスに阻まれた。

アイリス「駄目です、通信が繋がりません!!」

彼女の声が高く、荒んだように響く。
通信障害でもないのに、いくら呼び掛けても応答はなかった。

エイリア「そんな…」

こんな事態は今までなかった。
エイリアはいつも目にしているエックスが前触れもなく消え、安否の分からぬ状況に不安を覚えた。
何の心の準備もなしにエックスとの繋がりが切れる。
それは恐慌を起こしても不思議ではない恐怖であった。
いつも帰ってきてくれたから今度もという、身勝手な信心というか確信に支配されていた彼女は唐突に途切れた繋がりに愕然と沈黙する。

ルイン「…行ってくるね」

ルナ「現場に急行する。」

エイリア「私達も行くわ。アイリス、後をお願い」

アイリス「はい…ゼロ達をお願いします…」

エイリア達のように戦う力を持たないアイリスはゼロとエックス達の無事を祈りながら作業を続けた。

































そして現在、アイリスをオペレーターにして、ルイン達は出撃した。
爆煙を振り切り、ノアズパークを進む。
しばらく進むと天井が吹き飛んだ施設に辿り着いた。
そして扉をこじ開けると…。

ルイン「エックス!!ゼロ!!」

ルナ「しっかりしろ!!」

エックスとゼロは傷だらけで、ひび割れたコンクリートに打ち捨てられていた。
2人が駆け寄ろうとした時、見覚えのある影がルインの視界に入る。
毒々しい緑を基調とし、肩部にキャノン砲を装備した戦士。

ルイン「VAVA…!!?」

VAVA「久しぶりだなルイン……シグマの最初の反乱以来か……負け犬共のお迎えに来たのか?」

パレット「ルインさん、誰なんですかあれ!!?」

ルイン「かつてイレギュラーハンターの最強部隊、第17番精鋭部隊の隊員で…元特A級ハンター……かつてゼロと並び称されたイレギュラーハンター…そしてイレギュラーの中でシグマに次ぐ実力者……VAVA…私の先輩でもあるの」

圧倒的な火力を持って敵を粉砕する戦士。
高性能な新世代型レプリロイドが製造された現在においても戦闘型レプリロイドのとしてエックス達やイレギュラーの王であるシグマに引けを取らない最強クラスの戦士。

ルナ「てめえがエックスとゼロを…!!」

VAVA「ほう?俺と戦うつもりか?面白い…だが、お前達…特にルインとは先輩として久しぶりに遊んでやりたいのは山々だが、残念ながら俺にはまだ仕事が残っているでな…」

VAVAは挑発するように言いながら、建物の外へと顔を向ける。
遠くヤコブが見えるそこには、4体のレプリロイドに捕えられ、気を失っているのか目を閉じたレプリロイド。
白と紫を基調としたボディ、1度見たら忘れないであろうその中性的な顔立ち。

エイリア「あれは…」

パレット「あれはヤコブの管理官の…」

ルイン「…ルミネ?」

数日前に会った軌道エレベーター・ヤコブの管理官であるルミネだった。
呆然と呟くルイン達に、VAVAは面白そうに語る。

VAVA「ルミネは捕らえた。これで軌道エレベーターは俺達の手の内となるわけだな」

ルナ「ルミネ!!?それにてめえらは…」

ルミネを拘束している4体のレプリロイド達。

ウェントス「また貴様と相見えることになろうとはな、やはり運命からは逃れられぬというわけか…」

グラキエス「やあ、久しぶり。新世代型のプロトタイプと僕達のオリジナル」

ルナ「ウェントス、グラキエス、イグニス、それにテネブラエも!!?てめえら、レッドアラートの戦い以来何処に隠れてやがった!!?」

イグニス「答える必要はない。」

テネブラエ「我々の目的はヤコブ管理官・ルミネの捕獲。貴様らとの戦闘の必要性を感じない。」

ルナ「てめえらには無くても俺達にはあるんだよ!!!」

リフレクトレーザーが放たれるがテネブラエが曼陀羅手裏剣を繰り出し、それを弾く。

ルナ「何!!?」

ルイン「やっ!!」

ダブルジャンプでVAVAに肉薄し、セイバーを振るう。

VAVA「ククク…エックスとゼロもそうだったが、お前も昔と変わらないなルイン。」

容易く回避され、嘲笑と共に放たれたキャノン。
それを咄嗟にセイバーで弾き、距離を取る。

ルイン「そっちも相変わらずだね!!VAVA、ルミネを捕らえて何をする気なの!!?」

VAVA「これから始まるんだよ。新しい世界のための…古き世界の破滅の序曲がな…」

そう言って、この場を去ろうとするVAVAにルナが呼び止める。

ルナ「待て、お前ら…アクセルをどうした!!?」

VAVA「ククク…アクセルか……新世代型レプリロイドのプロトタイプ…奴もまた俺達の手の内にある。」

ルナ「何だと!!?」

アクセルが敵に捕われたということに目を見開く。

VAVA「じゃあな、ルイン。お前はエックスやゼロのように俺を失望させてくれるなよ」

そう言い残し、VAVAは背部のバーニアを吹かし、ウェントス達は転送の光に包まれ、消えていく。
悔しそうにそれを見つめるルナにエイリアは厳しい面持ちで言う。

エイリア「エックスとゼロを治療室へ、帰投しましょう」

エイリアの言葉に頷いて彼女達はハンターベースへ帰投するのであった。 
 

 
後書き
オープニングステージ終了。
エックス、ゼロ序盤離脱。
アクセルは敵に捕まりました。 
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