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『自分:第1章』

作者:零那
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『夏休み』

ユウが夏休み入ってバイト休みの日に泊まりに来る事に。

龍には、ユウが来た時は電話も逢うのも無理やからって言った。
哀しそうにする龍。
いや、半分キレてるけど...

罪悪感?
龍に?
間違ってる。
解ってる。
でも...
放っとけん。
守ったらな...
そう想った。


港にユウを迎えに行った。
久々やから相当恥ずかしかった。
じぃちゃんちに着いたら、弟とゲームの話で即意気投合。
暫くして3人でバス乗って買い物。
帰りのバスで母さんと乗り合わせた。
ユウは軽く挨拶して何故かドヤ顔で戻って来た。

母さんは家に着いたら日課の花いじり。
じぃちゃんもゲートボールから帰って来て、猫達が危険を察知して慌てて逃げる。
ユウの挨拶も無視。


じぃちゃんは子猫を踏み潰して殺したことがある。
真冬だろうとホースの先潰して勢い良く水ぶっかける。
痛いし冷たいし酷い。

そのくせ、釣ってきた魚介類やカニ海老、海のモンは食べさしてた。
調理時に出る骨や内蔵、食べ残しのも猫達に食べさしてた。
残骸だけでなく、刺身とか、煮魚とかも作ってから食べさしてたり...

なんせ、矛盾。
猫側も絶対に戸惑ってた。

じぃちゃんも人格障害?とか考えたくらいだった。


こんなワケ解らんじぃちゃんと、あんな母親...
ホンマは来て欲しくなかった。
逢わしたくなかった。
恥だと感じてたから。
自分の存在そのものが恥なんやけど、家族も同等やから。
こんな家族なら、いっそ家族なんか無い方がマシやから。
親なんか居らん方がマシやから。

でも、そんな気持ちもユウは解ってくれてた。

親が居るから幸せ?
そぉじゃ無いで?

居るからこそ言える事かもしれん。
贅沢な事かもしれん。
施設で、親が居らん子も見てきた。
それでも、やっぱり思うのは『親が居れば良いとは限らん』って事。
それは自分にとって譲れん価値観。


母さんについて来たのが間違いだった。
あの時、冷静に父さんだけを見とけば父さんの元に残った。
そしたら、今迄の様な悲惨な人生にはならなんだ筈や。
少なくとも、母さんの再婚相手に虐待された上に尚且つ処女奪われるなんて事も無かったやろうに。

父さんと居たら別の苦労はあったかも知れん。
でも、父さんの為になる事なら身売りでも何でもしたやろうなぁって思う。

そんなん、今更...
意味の無い戯言...

それでも、それでも...
どうしても考えてしまう。
あの時に戻れたなら...
絶対父さんを選ぶ筈って...



人生やり直したい。
良く『人生は長い。まだまだやり直せる』って言われてた。
間違いやんな?
やり直すことは出来ひんやろ。
過去に戻られへんねやから。
新しく何かを積み重ねることは出来ても、訂正は出来んよ?
過去は消えませんから。
屁理屈って言われるけど、実際そうやし。


施設に居る頃、母さんは何回か迎えに来たらしい。
その度に、職員は『あの男と手が切れたか』聞いてたらしい。
『我が子か、男か』選択肢を与えられ、毎度男を選ぶ。
何の為に隣の県迄来よんだか。
意味が解らんくて笑えた。
まさに交通費の無駄遣い。
金無いくせに何しよんだか。

そんなオンナ。
そんな母親...

娘を性的対象にする男を愛する母親...

狂っとる...
異常...

自分も異常やけど。
ヒトに異常やか言えんけど。
間違いなく母さんの娘や。
血筋やな。
間違いなくこの家系は狂っとる。

姉も、好きで母親の旦那とヤりまくる奴やし。
兄も、感情がおかしい。
皆が皆、欠陥品。


そんな事も全て、ユウは受け止めた。
醜く汚い過去も、ドロドロで闇だらけの内面も。

でも、受け止めざるを得んかったから?
受け止めたフリして目を逸らしてるのか?
本人しか知り得ん。


ユウには零那の気持ちなんか解る筈が無いから。
恵まれた普通の家庭。
普通が何よりも幸せってのを知らん。
愛溢れる両親にジジババ。
何不自由なく心も綺麗なまま生きてきた。
理解し合うなんか不可能。
こんな純粋な子が、こんな醜い心を解る筈が無い。
理屈じゃ無い。
生きてきた世界が違う。
それが、ほんの少し淋しいと思った。
解ってる。
解ってたよ、はじめから。
理解やかされんって。
普通の子には...


そっか...
龍も、たぶん...
こんな淋しい想いを抱えて生きてきた?
どれくらい独りで苦しんだ?
零那が龍を理解できると思った?
理解し合えると思った?
だから好意を抱いた?
それは、愛情ってゆう、単純で綺麗な想いじゃない。
シェルターみたいなもん。
それは...
愛情より厄介...
重い想い...


ユウは弟と仲良くゲームしながら飲んでる。
生粋のゲーム好き。
何日も徹夜で出来るレベル。
母さんが家に入ってきて一緒に飲む。
ユウは気を遣って色々話しかける。
そんな気は遣わんで良いって言ったのに、性格やな。

兄ちゃんが来た。
最悪。
初対面のユウをおちょくって遊んだ。
非常識で無礼にも程がある。
ドライブ行こうって山に向かう...

吐きそう。
酒に酔ってるワケじゃない。
運転技術の問題。


翌日は、ユウと弟と3人で釣りに行った。
キャッチボールもした。
いっぱい遊んだ。
あっという間に時間が過ぎた。

最終フェリーに一緒に乗って高松迄送った。
時間はせわしなく過ぎていって、2人でまともに話すことは無かった。

ユウを裏切ってる。
罪悪感があったから、そのくらいでちょうど良かった...

此のフェリーがまた島にそのまま帰るから、それに乗って帰った。

 
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