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仮面ライダー真・智代アフター外伝

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一話「序章」

 
前書き
とりあえず、一話です。 

 
白いパソコン画面から、カタカタとたたくキーボードの音と共に文字の一文字づつが画面に表示される

『もしも大切な人を失ったら、どれ程の悲しみを引きずるだろうか?おそらくそれは、失われた本人でなければわかりきれない重さだろう。だが……もし、失ったはずの大切な人が、魔法によって生き返り、目の前に現れたとしたなら?あなたなら、どう思う?
目に涙をためて喜びに満ちるか?それとも、それは単なる幻想であって、その人から目をそらすか?
かつて、記憶を失った俺は大切な人に気づかず、目の前の脅威と戦いながら周囲から心を閉ざしつつあった。しかし、結局最後になれば、いつもそばに居てくれた人こそが、俺にとって大切な人だということに気づかされ、そして、俺は嘆き後悔をした。
あのとき、彼女の気持ちに気づいていれば、早く自分を取り戻せていたら、恐らくあんな事にはならなかっただろう?
もう、もとには戻せない。絶対に。だから……失って初めてその大切さと尊さがわかるだろう。最低でも今は……』

                   *

午後一時、財団研究施設にて

何一つ変わりのないとある財団企業の白い建物。見たところ地上の一階と二階とが建物自体の大きさとして見られるが、その建物の地下には地上とは倍の階数を誇っていた。
そこは、極秘に寄って行われている研究施設であり、研究に携わるメンバーでなければ真実を知る事を許されなかった。
「では、今回行われる改造実験の第三段階について説明する……」
会議室の講堂内では担当主任となる男、鬼守義郎がスクリーンに画面を映して各研究メンバー全員に次なる研究内容の説明を始めた。
「……と、以上で説明を終えたいが、この説明に関して質問する者はいないか?居ないのなら私がこれから案内する第三段階研究のラボまで付いて来てくれたまえ?」
特に質問の手を上げる者は居ず、それを確認した鬼守主任は、これから次の段階へ進む為、研究員らを新たなラボへ連れ出した。そんな彼らの前に、研究室の扉手前に、一人の女性が立っていた。白衣に眼鏡をかけた銀髪の女性だ。
鬼守は、彼女の隣に立つと、研究員たちに紹介した。
「彼女は、今回からプロジェクトに関する研究資金の管理を主に担当する君らの助手、坂上智代君だ」
「坂上智代です。よろしくおねがいします……」
そう彼らに一礼する彼女は、華やかさと大人びたルックスを併せ持つ美しさで、若い研究員達は彼女の魅力に一目ぼれしてしまう。しかし彼女は助手とは言え、決して自分たちの研究に付き添う事はできない。この極秘プロジェクトは研究員以外は誰にも知られてはならない絶対の掟となっている。だから、彼女の役目は研究に関わらないギリギリの範囲で作業を置こうため、泊まり込みで研究を続けているときは滅多に顔を拝めることはできないだろう?彼女もまた、そのことを了解しているはずだ。
「さて、それでは坂上君は仕事に戻っていいよ?」
「はい……」
智代は主任から離れて研究室のはずれにある事務室へと戻って行った。
「では、彼女も居なくなった事だし。さっそく諸君らは次なる研究に励んでくれたまえ?」
それだけを言い残して、鬼守主任もこの場を後にした。
研究員たちは、一人ずつラボへと足を踏み入れる。そこには、ガラス張りに部屋が二手に分かれており、ガラス越しの奥の部屋には被験体と思われる青年の裸体がベッドに横たわっていた。勿論、「死体」である。ここまでは何時もと変わりなかったが、異なる場面と言えば、新たな機材が幾つも増加したことと、彼らと死体を遮るガラスが何時もとは違い、分厚い防板であることだ。それらを見て研究員たちは何れ起こりえるアクシデントをイメージしたが、それらをすぐに捨て去り、早速研究に入った。
「そういや、今回このプロジェクトを始めて一年ぐらいたつと思うけど、この被験者の名前ってなんていうんだ?」
思えば、研究を始めて一年ほどたつというのに、単なる被験者の青年としか鬼守が聞言わないため、この被験体の青年が気になった。
「確か……岡崎朋也とかいう名前だったぞ?今回の実験は、危険のディスクも高い
から、あらかじめ死人の体を使うそうだ?」
隣に立つ同僚はそう呟くように答える。
「生きた被験者を実験した経験はあるけど……死んだ人間を蘇生だなんて出来るのか?」
「出来るからこそ、こうして「第三段階」っていう新しい研究内容が課せられたんじゃないのか?」
「ふぅん?けど、もし生き返ったところで災難だよな?」
「そうそう、自分がどういう体をして生まれてくるかも知らないでさ?本当、可哀想に?」
そう同情し、哀れむ二人の研究員は新たな作業に入った。
智也と言う青年の胸板へエレキテルを放電し脳の状態とモニターに映し出される心拍数を見つめる。しかし、状況は変わることなく、そのまま変化のないまま休憩時間を迎えた。
「そういや……あの助手の子、すごい可愛いかったよな?」
「そうだよな、彼氏とか居るのかな?」
一階にある食堂の中で、若い研究員たちは先ほどの智代という助手の事で話題が持ちきりだった。
「年とか幾つだろ?」
「見た目からして二十代前半くらいだろ?」
「あ、おい!噂をすれば……」
二人の席の近くに話題となっている智代の姿が見えた。トレーに食べ物を置いて席に着いたところを見ると、彼女も昼食を取りに来たのだろう。
「やっぱり可愛いよな~?研究でクタクタの中、唯一目の保養になるのが彼女だよ」
しかし、智代はそんな研究員に目もくれず静かに昼食を取っていた。まるで、誰も寄せ付けないオーラを放ちながら。
その後、食事を終えた智代は食堂を出、気晴らしに建物の二階へ上がり、屋上へ向かった。透き通るような青空をぼんやりと見上げながら首にかけていたロケットを手に取った。
「朋也……」
かつて、共に暮らしていた恋人の名を口にロケットを開けて、彼と映る小さな写真を見つめる。当時、智也は記憶障害に陥り、後に手術で彼女の記憶を取り戻すことができたものの、記憶と引き換えに自らの命を絶ってしまった。
それ以来、彼女は彼のことを一度たりとも忘れることはなかった。そして、辛いことや苦しい事に出会えば、ロケットを開けて彼との写真を見つめている。
「この空の果てに、アイツが居るんだな……」
智代は空に微笑み、ロケットを納めると、胸元へ大切にしまい込んだ。
「さて、頑張るとするか!」
大きく背伸びをして、彼女は再び業務に取り掛かった。
「しかし……」
しかし、移動中に彼女は一つ気になる点があった。
「一体どのような研究をしているのだろう?」
入社時、主任から聞いた限りだと、遺伝子に関する研究としか聞かされていない。ただ、彼女がやる内容は、研究に必要な資金の管理だけ。
「まったく、謎の多い会社だ」
首を突っ込む気はないが、こういう会社に勤めるのは少し安心感がない。

                 *

深夜遅く、一人のOLが静かな道を歩き続けていた。しかし、彼女は先ほどから焦っている。背後から何者かの気配を感じていた。
「……!?」
振り向くも、彼女以外の人影は誰もいない。しかし、空耳のような足音と不気味な吐息が聞こえてくる。
「なによ……!」
恐怖に耐えきれなくなったOLは突然走り出す。すると、背後から足音が彼女に合わせて聞こえてくる。やはり、空耳ではなあった。
「!?」
すると、彼女の頭上を何者かの影が飛び越え、彼女の目の前へ降り立った。その姿は、おぞましく額へ触角を生やした深緑の何か……
今夜も、女性の悲鳴声が高々と響き渡った。
今宵、女性を狙う連続殺人事件が相次ぎ、それも現在の技術では理解できない傷跡や死体を残して犯人は消えさっている。翌朝、警察も全力を挙げてこの怪奇女性連続殺人事件の捜索を広げるも、決定的な証拠はまったくつかめそうになかった。

                   
                    *

翌日、財団研究所にて

「大変だ!心拍数が突然動きだした!!」
モニターから覗く心拍数の状況は、予想外のものであった。今案で水平に保っていた映像が、それが今では高く波打つ映像へと変わっていたのだ。
「一夜にして一体何が起こったんだ!?」
「とりあえず、研究に映ろう?今の状況をデータにとるんだ!」
研究所内では混乱が続く中、研究員の一人がガラス越しに見える横たわった智也の体を見て叫ぶ。
「み、見ろ!コイツ、息をしているぞ!?」
胸が呼吸によって膨らみ、縮む智也の体へ指を刺し、腰を抜かすかのように仰天しだした。まさか、この段階の実験が成功するとは彼らにしては、あまりにも信じ難かっただろう。
「一晩の間に何があったんだ……?」
この知らせは担当主任の元へ早急に届いた。
「なに……!彼が目覚めたと?」
主任室で受話器を握る鬼守は、少し急ぐ様子で地下数階下の研究室へ急いだ。
「岡崎朋也の遺体が動き出したとは本当か!?」
研究所内で叫ぶ彼は、ガラス越しの部屋に横たわる智也のベッドへ近付いた。
「被験者の実験レベルは?」
隣にいた研究員へ問い詰めるかのように問う主任。
「……そ、それが、信じられませんが、レベルは……「3」です」
「!?」
鬼守は目を見開き、そして視線を明也の体へ向ける。
「……確かに、息をしている。実験は成功だ!ハハハハハァ!!」
そう主任は歓喜し、叫びまわるが、しばらくしてその笑い声は途切れた。
「いや……まだ早いか?現在の状況からすると、暴走と言う恐れもある。これまでレベル3へ到達したケースはない。慎重に事を進まなくてはいけないな?」
鬼守は研究員へ振り向き、そしてこう言い残す。
「諸君、今我々は新たな……そう、神の領域へ足を踏み入れたわけとなる。だが、まだ油断はならない!今後ともさらなる警戒を強めて、岡崎明也を十分に監視、研究を行うよう」
冷静に戻った彼は、研究室を後にした。それからしばらくした後、明也の瞼は眠りから覚めたかのようにゆっくり開いた。
「記憶は消してあるんだろうな?」
朋也を取り囲う研究員たちは彼の経緯を問い合う。
「問題ない。彼の死因や前世での記憶は全て削除した」
「ただ、問題なのは……我々の命令に従うかどうかだ」
「とりあえず、今後の実験結果で検討するとしよう?」
研究員らは、彼に衣服を与えて新たな研究段階「模擬訓練」へと進ませた。その日から、明也のモルモット生活の日々が始まり、彼へ新たな名前がコードネームとして与えられることとなった。

                    *

それから数日後、

しかし、模擬戦闘を幾度行った所で智也の戦闘データーにはいつもレベル1,2の状態でしか検出されなかった。
「くそ!また1レベかよ?最近じゃ2レベも滅多に出なくなったな?」
訓練エリアの地下アリーナをモニターで覗く研究員らは未だ進歩しない智也の行動に舌打ちとため息をつき続けていた。
「全く、目覚めた途端に初期レベルに戻ったと言うのか?「シン」は……」
シン、それは今の岡崎明也が名乗る新たな名前でありコードネームでもあった。
「それよりも、今のシンは結構息切れを起こしている。ここまでやったら可哀想だ。とりあえず休養を与えてやろう?」
研究員の一人の提案によって、ひとまずシンをラボのベッドへ連れて行く事になった。
「どうするよ?最近、主任は全然口を閉じたままだし。もしかしたらお怒りになる可能性だってあるぞ?」
「そんな事になったら、俺達は全員クビだ!冗談じゃねぇ……」
「俺達が全員で言ったとしても、相手は主任だ、俺達の言っている理由が嘘だと捉えられる」
「まぁ……とにかく、今日はこれまでにしよう?明日も研究が続くだろうし、各自それぞれ寮へ戻って休んでくれ?」
研究員を束ねるリーダーがそう言い、部下達を解散させ、最後にシンを見つめて彼もラボを後にした。
「…シン……」
ベッドに横たわるシンは、一人になった事を確認すると、自分に付けられたこの名前を何度も呟いや。
「…シン…シン…シン……」
だが、今の彼はその名前以外の記憶は一欠けらも残っていなかった。ただ、自分の名前を繰り返し唱えるだけ……だが、
「……誰だ?」
シンが頭の中に浮かぶ女性のシルエットを思い浮かべ、訪ねる。どこかで見覚えのある女性であった。それも、銀髪を棚引かした美しい女性で……
「誰だ……」
実は、研究員らが彼の意識に気づく前夜、シンは既に意識を取り戻しており、今夜と同じように女性をシルエットを思い出してはその人物に訪ねていた。
「お前は、知っている。俺を……」
すると、シンは独りでにベッドから上体を起こし、そしてベッドから降り、白衣の着物越しに研究室の入口へ歩み寄り、被験で得た超人的怪力でカードキーロックの扉を両手でこじ開けたのだ。
「アイツは……俺を、知っている……」
シンが研究施設から脱走した事に寄り、施設内は警報が鳴り響き、そして数十人ものガードマンが逃げ出したシンの行方を追い、施設内を探し回った。
しかし、施設内には誰もいない。何故なら、彼らが気がつく前からシンは人間の倍もの身体能力で、瞬く間に逃げ出していた……
「探せ!探すのだぁ!!どんな事をしてでもシンを連れ戻せぇ!!!}
勢いに怒鳴る鬼守はガードマンらへ激しく命じる。

                   *

「今日も疲れたな……」
返りの夜道、肩をポキポキ鳴らしながら帰宅する智代は昨夜の事件の噂など耳にすることも無く、平然と帰宅路を進んでいた。すると……
「ん……?」
ふと、彼の背後からわずかだが何者かの足音と、その気配が漂ってくる。学生時代は腕の立つ武道家であったために相手の気配を感じ取る力は社会人になった今も健在のようだ。
「何だ……一瞬、殺意のようなものが?」
足音が徐々に近付き、恐怖を感じた智代は、すぐに背後を振り向いた。
「なっ……!?」
智代は、そう簡単には声が出なかった。何故なら、振り向いて矢先に立つ人影は、人間とは違う、異形の姿で彼女の背後に立っていたのだ。
全身ゴツゴツした緑色を持つ不気味な皮膚に覆われ、頭の額からは二本の黒く長い虫のような触角が生え、そして縦に割った顎と不気味にこちらを睨むかのように見つめてくる紅い眼光を持つ「怪物」である。頭部はまるで、バッタを象ったかのような顔つき、そう……バッタ男だ。
「な、何者だ!?」
智代は、すぐさま敵意を感じ取り、ゆっくりと手を伸ばしてくる化け物目がけて彼女は鳩尾目がけて蹴りをくらわしたが、岩を蹴るような痛々しい感触が伝わって来、効果はない。引き続いて化け物の頭部への回し蹴りを試みるも、頭部さえも岩の如く頑丈で、これも効果はなかった。そして、怪物は伸ばしてきた鋭い爪と指を持つ五本指と手で彼女の首を握りしめて軽々と智代の体を持ち上げたのだ。
「ぐぅ……!?」
首に伝わる力は怪力のようで、今にでも骨が砕けてしまいそうだった。しかし、これ以上怪物が首を掴む手に力を銜える事はなかった。そして、
「……トモ…ヨ……」
何故か、怪物は彼女の名を弱まった口調で呟くと、彼女を手から解放して急に頭を抱え出し、苦しみだしたのだ。
「グゥ……?グオォー!!」
もがき苦しんだ怪物は、智代を目お前にして膝をつき、倒れてしまった。
「な、何が起きたんだ……?」
恐る恐る智代は怪物の元へ近寄るが、怪物の姿に異変が生じる。怪物の皮膚の色が急に変色して人間のような肌色の皮膚へ、ゴツゴツした皮膚の個所も柔らかみをつけていき、額の触角は水音を立てて縮んでゆく。そして、全ての変化を終えた時、智代の目の前に映ったものは……
「……と、朋也!?」
いや、違う。彼はもうこの世にはいない。目の前には智也に似た青年が怪物から姿を変えて横たわっていたのだ。
「……」
智代は、朋也の生き写しのように似るこの青年を、ただ見つめていた。






 
 

 
後書き
次回、「記憶」 
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