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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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ゼロ魔編
  041 〝赤〟と〝白〟って普通は目出度いはず… その4

 
前書き
4連続投稿です。

4/4

これで最後です。 

 

SIDE OTHER

才人がヴァーリの身を確認しようと動いた時より少し遡る。

『Longinus Smasher!!』

『Welsh Dragon Lightningpromotion!!』

2つの機械染みた音声の後、ヴァーリの方からは白い奔流が。才人は自らを相棒であるドライグを模した赤雷にてその身を包む。先まで二人が居た場所の中間地点ちょうどで二人の攻撃のせめぎ合いとなっていた。

……そう、〝なっていた〟。拮抗していた。でもそれはほんの数瞬で〝赤〟が〝白〟を呑み込んだ。大技を放ち動けないヴァーリ…。完璧に〝雷〟になっている才人から逃れる術は無かった。

その雷牙はまず、どこか生き物ばったヴァーリの鎧を砕いた。そして〝倍加〟された才人の速度は雷速を超え亜光速、果ては光速すらを超えた神速に至っている才人の身体が──本来なら〝身体〟になるであろう箇所が、ヴァーリを焼き、灼き、そして…呑み込んだ。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!」

ヴァーリは人の耳では聞き取れない様な、声にならない叫びを上げる。やがて才人はヴァーリの身体を通り抜けて、勢い余ったのかヴァーリから数メートルのところで立ち止まった。

才人の姿は〝禁手(バランス・ブレイカー)〟すらも解除されていて、通常の平賀 才人の姿に戻っていた。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE 平賀 才人

「……ふっ、俺の負けの様だな」

「ああ、この勝負俺の勝ちだ」


ヴァーリの側に歩み寄る。ヴァーリも意識は有った様だが、立ち上がれるだけの体力は無い模様。ヴァーリはヴァーリで、いっそ清々しい笑みで敗北した事を認めた。

「でだ、ヴァーリはこれからどうするんだ?」

「それは君が一番知っているだろう?」

ヴァーリの生命力はこうして会話している間にも小さくなっていく。まだ風前の灯火と云う訳でも無いが、それも時間の問題だろう。……そう遠くない内にヴァーリは死ぬ。

ふと違和感。

(スキルが使えないっ?)

いや、正しくは〝使おうと思えない〟。今に思い返してみれば、先までのヴァーリとの戦闘でも使おうとは思わなかった。……スキルさえ使っていれば、ヴァーリと戦わずに済んだかもしれないのに──だ。

そもそも事故等で怪我をしたとかならともかく、命を賭けた〝闘い〟で自ら傷付けた相手を治療する程、本末転倒で傲慢な性格もしていないつもりだ。

「ヴァーリ、俺は──」

「ヴァーリ・ルシファー」

「ん?」

「そういえば、君にフルネームを教えてなかったと思ってね。俺の名前はヴァーリ・ルシファー。アザゼル──俺の養父曰く〝先代魔王であるルシファーの血を引く、史上最強の≪白龍皇≫〟らしい。……結局、スペック上で優っていたはずの君に上を往かれたけどね」

(〝やっぱり〟ヴァーリ・ルシファーだったか)

〝ルシファー〟。このハルケギニアでは知る人間は居ないだろうが、数多在る文書、創作物に登場する堕天使──ないしは悪魔。【ハイスクールD×D】の原作同様にヴァーリはそんな大物の血を引いているらしい。

予感は有った──というより、ほぼ確信していた。フルネームを名乗ったヴァーリに、謎の使命感で〝本名〟を名乗らなければならないと思った。

「ヴァーリ・ルシファーか──確かに覚えた。……そうだな、それなら俺の本名も名乗っておこうか。俺の名前は2つ有る。1つはヴァーリも知っているだろう平賀 才人。そして、もう1つの名前は升田 真人。……それがお前の最期を看取る人間の名前だ。呼びやすい方で呼んでくれて構わない」

「升田 真人…いや、平賀 才人と呼ばせてもらおう。……平賀 才人、恥を承知で頼みがある。……産まれてから長い間連れ立って来た、相棒の大事な頼みだ」

<良い、ヴァーリ。そこからは俺が話そう。平賀 才人──ドライグを宿せし者とドライグよ──>

いつの間にやらヴァーリの右手の甲に出ていたアルビオンの宝玉が話し掛けてきた。

<俺を殺してくれ>
「は?」
<は?>

いきなり宣うアルビオンに俺とドライグの、気の抜けた返事がほとんど同時に溢れる。

<アルビオンよ、そんな事を宣った理由を一から説明してくれ>

「………」

ドライグはアルビオンに訊ねるが、何となくだが俺はその予想がついている。

<ドライグよ。当初は──〝神器(セイクリッド・ギア)〟に聖書の神によって封印される前は2匹で暴れていた頃の事は覚えているか?>

<今は懐かしい話だがな。2匹して3大勢力の戦争に介入して引っ掻き回したり、今に思えばバカな事をしたものだったな。……だがそれがどうした?>

<……ならば一番最初に争った大元の理由を覚えているか、ドライグ>

<………>

ドライグは黙り込む。恐らくだが、既に色褪せ始めつつある原初の記憶を掘り返しているのだろう。

<……いや、思い出せんな>

<何、俺も思い出せないから気にする事は無い。……〝だからこそ〟こんな事を頼んでいる。初代の所有者とかなら兎にも角にも、最近では歴代所有者達の怨念を理由に惰性的に闘っていたからな>

<……そういう意味で〝だからこそ〟か>

ドライグはある程度得心した模様。だがそれでアルビオンの言いたい事は終わりでは無いらしく、アルビオンの語らいは続いていた。

<……それに、今代──ヴァーリ以上の使い手に巡り会える可能性はかなり低いからな。……これ以上、〝赤〟と〝白〟の理由なき──馬鹿げた闘いに他人を巻き込む訳にはいくまいよ>

<……相棒、俺からも頼んでいいか?>

「……判った。でも本当に良いんだな? ドライグ」

<ああ、ヴァーリ・ルシファーの身体に触れてくれ。後は俺とアルビオンが勝手にやる>

ドライグに訊ねるが、アルビオン同様梃子でも動きそうに無いほど、固い意志を持っている模様。

「ヴァーリ、ちょっと右手を借りるな」

「ああ」

ヴァーリの右手の甲に出現していたアルビオンの宝玉に、俺の左手の甲のドライグの宝玉を合わせる。

<礼を言うぞ、ドライグ>

<気にするなアルビオンよ。腐れ縁と云うやつだ>

<……それでもだ。ヴァーリよ、済まなかった…な。最期まで力になれなくて>

アルビオンの辞世の句。……すると、ドライグの赤いオーラとアルビオンの白いオーラを侵食しだした。……これは推測に過ぎないが、アルビオン側の精神世界の様な場所でアルビオンへ引導を渡したのだろう。

「……アルビオンは逝ったか」

「……の様だな。アルビオン、謝罪するのはこちら方だと云うのに…。……平賀 才人、既にアルビオンが逝ってしまって、最早脱け殻のそれとなった“白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)”を君に任せたい。この世界の奴らに脱け殻とは云えアルビオンを使われるのは業腹だからな」

「……確かに任された。……ドライグ」

<大丈夫だ。その事はアルビオンからも言付かっている。……相棒、〝赤〟と〝白〟を合成させるなんて、本来なら不可能だろうがアルビオンを完璧に下して、聖書の神が居なくて様々なバランスが崩れている今なら不可能では無い。イメージとしては相棒がよく使っている“咸卦法”とやら──相反するもの混ぜ合わせるイメージに近い感じだ。後は〝神器(セイクリッド・ギア)〟は持ち主の強い願いに応える。……後は判るな?>

ドライグの言う通り、“咸卦法”を使う際のイメージ──陰陽太極図をイメージをする。……そして、アルビオンの力が欲しいと──〝ヴァーリの頼みに応えたい〟と強く想う。

『Vanishing Dragon Power is Taken』

機械染みた音声と共にアルビオンの力が流れ込んでくるのが判る。……ついでとばかりに、〝神器〟と一緒にアルビオンの歴代の≪白龍皇≫──歴代所有者達の怨念も引っ付いて来たのはご愛敬か。

「平賀 才人…。そろそろ俺も意識を保つのが難しくなってきた。一足先に逝ったアルビオンを追い掛けるとしよう」

「ヴァーリ…。お前の事は確かに俺の中に刻み込んだ。安心して逝くと良い」

「ああ。……嗚呼、これが〝死〟か。……存外と…悪く…無い…な。だが──」

ヴァーリの言葉はそれ以上語られ無かった。ヴァーリ・ルシファー──彼の生命活動はたった今、止まった。……止めたのは俺だ。

「さて、ヴァーリを弔わないといけないし──」

立ち上がり、周囲を見渡す。周りは荒野の如しと云う見渡しの良さとなっていて、ヴァーリと戦う前は〝花鳥風月〟という表現が出来ていたのに今は〝花鳥風月〟の[か]の字も見付ける事は出来ない光景となっている。

「直さないといけないしな、色々と…」

(“大嘘憑き(オールフィクション)”は──却下だな)

“大嘘憑き(オールフィクション)”は〝幸福(プラス)〟も〝不幸(マイナス)〟も一緒くたに〝無かった事に〟するスキル。取り敢えず、ヴァーリとの闘いの痕跡を〝無かった事に〟したくなかったので却下した。

(仕方ない、ウェールズに頭を下げるか)

ウェールズへの謝罪文をつらつらと考えながら、ヴァーリの亡骸は火を司るスキルで──“間違いなく放火(エキシビションマッチ)”で焼き払い、その灰をラグドリアン湖に撒く事にした。……出来るだけ綺麗な場所で眠れる様に…。

SIDE END 
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