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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第七十一話 Speech

 
前書き
ハイマックスに敗れたエックス。
 

 
エックスがハイマックスに敗れた日から翌日。

ルイン「エックス、そっちの復興具合はどうかな?」

エックス「ああ、こちらも大分進んでいる。昨日とは打って変わって穏やかだ……」

エックスとルインは部下のハンター達と共に昨夜の現場の復興に当たっていた。
ルイン「ビートブード、そちらの状況は?」

ビートブード『はい、こちらもイレギュラー反応はなし。この調子なら俺が担当している場所も数時間で終わるでしょう』

エックス「そうか、ビートブードは引き続き、復興作業を続けてくれ」

ビートブード『了解』

施設のイレギュラーは昨夜のうちにあらかた倒したので、残党に気をつけながら瓦礫を撤去する。
昨日の激戦と比べれば、遥かに穏やかで楽な作業である。
エックスとルインは交互に部下と連絡を取りつつ、テキパキと指示をしていた。
後にアイゾックと名乗る科学者レプリロイドが演説を始めたのはそんな時であった。
アイゾックはあらゆる施設のモニターを使い、大袈裟な講演を開始した。

ビートブード「エックス隊長、ルイン副隊長、あれを…」

ルイン「ん?あれは演説?」

エックス「こんな時にか?」

アイゾック『地球上に残ったレプリロイド諸君!!既に知っていると思うが、今各地で不可解な現象が起きている。』

拳を振り上げ高らかに言うアイゾックに復興作業の手を休め、ハンター達が演説に耳を傾ける。

ビートブード「お前達、何をサボっている?さっさと作業を再開しないか。隊長達は少しお休み下さい。後は俺が…」

エックス「ああ、すまないなビートブード」

1日中動き通しの2人に気を利かせてくれたビートブードに礼を言うと、エックスは礼を言うとルインと共にモニターを見遣る。

アイゾック『我々はその現象を“ナイトメア”と呼ぶことにした。それは人間で言うところの“夢”いや…“悪夢”に似た幻をレプリロイドに見せることによって、混乱や、酷い時には暴走を始めたり、自らをデリートしてしまうこともある』

エックス「(ナイトメア…確か昨日、ハイマックスという奴も言っていたな)」

アイゾック『先のスペースコロニーの破片落下の事故により、レプリロイドは甚大な被害を受けた。もうこれ以上の犠牲を出すことは出来ない!!』

レプリロイドの拍手と喝采が割れんばかりに響き渡る。

アイゾック『今度こそ地球の存亡の危機に関わるであろう。そこで事態を重く見た我々はナイトメア現象の謎を解明すべく、疑いのある8つのエリアに調査員を送り込んだ。何せナイトメアはあの名を馳せたイレギュラーハンター・ゼロ…彼の亡霊が原因であるという情報もある』

エックス「何だって!?勝手なことを!!」

ルイン「ぼ、ぼぼぼぼぼぼぼぼ亡霊!?ゼロの亡霊ーーーーーっ!!!!!?」

ビートブード「副隊長、言語回路の故障ですか?」

我を忘れてアイゾックの映像に食ってかかるエックス。
“亡霊”という単語に過剰な反応を示すルイン。
そしてルインにツッコむビートブード。
反応はそれぞれである。

エイリア『待ってエックス、最後まで聞きましょう。それからルイン、大丈夫よ。お化けなんてこの世にいないから』

ルイン「そ、そそそそそそそうだよねえ!!お、お化けなんていない!!そう、いないんだ!!きっとゼロのそっくりさんだ!!そう、そうに違いない!!」

ビートブード「エックス隊長。ルイン副隊長の顔色が機能停止したように真っ青なんですが……」

エックス「気にしないでやってくれ……」

ゼロに濡れ衣を着せられ、エックスは強い驚きと憤りを感じていた。
ゼロがいたから自分達や今の地球が存在しているというのに…。
一方アイゾックの演説はたけなわとなっていた。

アイゾック『さて…ここで有志を募るとしよう!!我々と志を共にする者達よ。力を化してもらいたい!!この8人の調査員の下に集え!!我々の目的はナイトメアの撲滅。そしてゼロの亡霊を消すことである。未来のため、来たれここに!!』

モニター越しにレプリロイドの歓声が上がり、アイゾックの支持者もかなりの数になることだろう。
全ては奴の思惑通り、ゼロを中傷するアイゾックの思うがままに事が進むだろう。

アイゾック『なお、このハイマックスが調査員のリーダーとして参加しておる。』

エックス「(あれは…!!)」

アイゾックの隣に映る漆黒のレプリロイド。
エックスは作為的な物を感じ始めていた。

アイゾック『我らのところに来れば身の安全は保障しよう。イレギュラーハンターもレプリフォースも今や壊滅状態…』

エックス「戯れ言を…」

ルイン「エックス、抑えて!!ね?」

アイゾック『未来は我らと共に自らの力で守ろうではないか!!待っているぞ!諸君!!』

歓声と共に映像が消え、モニターは元の真っ暗な板っぺらに戻った。
残されたのは復興作業を中断して映像に見入っていたレプリロイド達。
呆気に取られ、モニターを凝視している。
すぐに正気に元に戻ったのはエックス達であった。
拳を震わせながら激しく、烈火の如く怒り、虚空に叫ぶ。

エックス「ふざけてる!!ゼロのことをそんな風に…みんなを救うためにゼロは命を懸けて戦ったのに!!」

ルイン「今は何を言われても仕方ないんじゃないかな?実際にエックスの目の前にゼロの姿をしたナイトメアが現れたんでしょ?」

エックス「それはそうだけど…」

アイリス『気持ちは分かるわエックス。私達も調査する必要があるわ。ナイトメアの正体を…今は アイゾックやハイマックスのことは 放っておきましょう?』

エックス「疑いのあるエリアって言ってたけど、一体どんなところなんだ?調べられないかアイリス?」

アイリス『……駄目だわ。激しい電波障害が起こっていてここからでは調べる事が出来ないわ』

エックス「なら乗り込むしかないな。直接ナイトメアに触れる事が出来るかもしれないし、さっきの調査員って言うのも気になるしな」

ルイン「なら一旦、ハンターベースに戻ろうよ。調査するのはそれからでも遅くないはずだよ。」

エックス「ああ、ゼロの無実を証明してみせる。必ずな」



































ハンターベースに帰還したエックス達を出迎えたのはエイリアとアイリスとシグナスだった。
3人もまたゼロの無実を信じて、情報収集に当たっていたのだ。
エックスの怒りと悲しみに沈んだ表情を見て、ルインはやるせない気持ちになった。

ルイン「(ナイトメア事件で1番傷ついているのはエックスだもんね……)」

親友が行方知れずで、事件の嫌疑をかけられている。

シグナス「ナイトメア現象の多発するエリアは調査済みだ。」

シグナスは力強く言い、エックスとルインの肩に手を置いた。

シグナス「ゼロを信じろ。あいつならきっと大丈夫だ。」

エックス「ああ、信じて待つよゼロを…」

エックスは今更ながら、自分を支えてくれる仲間達の存在を強く感じた。
今まで戦ってこれたのは1人の力ではない。
仲間がいてくれたから…そして親友の存在を信じることが前進することの力となると確信していた。

シグナス「我々はこれからナイトメアの実体を突き止めるべく、アイゾック達が送り出した8体の調査員のいるエリアに乗り込む。しかし今のイレギュラーハンターの状況からして、このミッションを実行できるのは…エックス、ルイン…お前達だけだ。ゼロもいない今頼れるのはお前達だけ、やれるか2人共?」

エックス「やってやるさ、ゼロナイトメアをこの目で確認しないければ気がすまない!!」

エイリア「たった今ナイトメアエリアと調査員のデータがわかったわ。でもナイトメアエリアは電波障害で詳しい状況が分からないわ」

ルイン「必ず突き止めるよ。アイゾックとナイトメアの野望をね」

エイリア「あ…ルイン…あのー…」

ルイン「どうしたの?」

エイリア「…ううん、何でもないの、気をつけて2人共」

エックス「?」

エックスもルインもエイリアの様子がおかしいことに気づいていたが、2人はそれ以上の気持ちは起こらなかった。
全くの朴念仁、鈍感である。

シグナス「あー…アイゾックの話を受けて、何人かのレプリロイドが危険なエリアに向かっているかもしれない。見つけたら保護してくれ」

咳ばらいをしながらばつが悪そうな総監。
だが暫し沈黙すればいつもの、精悍で冷静沈着な指揮官の顔に変わっていた。

シグナス「ナイトメア…危険が伴う任務になりそうだが、正体を突き止め、被害を最小限に抑えなければならない!!アイゾックが言っていたように、これ以上レプリロイドを失うことは許されないからな…」

総監は天を仰ぎながら戦士達が無事にミッションを達成することを切に願った。




































~食い物の怨みは恐ろしい~

ルイン「ね、ねえエックス……」

エックス「ん?どうしたんだルイン?」

ミッションに向かう前に話し掛けてきたルインにエックスは首を傾げた。

ルイン「も、もしアイゾックの言っていたように、ナイトメアがゼロの亡霊なら…前に私がゼロが買い置きしておいた取って置きのフルーツケーキをこっそり食べちゃったのがゼロにバレて亡霊として化けて出たのかな!?」

エイリア「……それはないと思うけど…」

アイリス「ルイン…あなたはゼロをどんな目で見ているの?」

呆れたようにルインを見遣るが、ルインは顔を真っ青にしている。

ルイン「分からないよ!!食べ物の怨みは恐ろしいもん!!も、もしそうならどうしよう…ケーキの包装とかはホーネックのデスクに隠したのに!!」

ホーネック「あれルイン副隊長の仕業だったんですか!?俺は濡れ衣着せられてモズのはやにえになりかけたんですが!?」

































ゼロ『ホーネック!!お前、俺が買い置きしておいたケーキを食ったな!?』

ホーネック『え?何のことですか?』

ゼロ『とぼけるな!!お前の部屋からこれが出て来たぞ!!』

ゼロがホーネックに突き付けるのはケーキに必ずついて来るビニールのアレ。

ホーネック『え、ええ!?お、俺じゃありませんよ!!』

ゼロ『問答無用だ!!モズのはやにえにしてやる!!』

ホーネック『ぎゃあああああ!!?』


































ルイン「えっと…ごめんねホーネック」

ホーネック「はい…(涙)」

話を聞いた全員が思う。
食い物の怨みは恐ろしいと。 
 

 
後書き
アイゾックの演説終了 
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