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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epos33神さまに教えてもらおう~Interval 2~

†††Sideフェイト†††

初詣っていう、この世界・この国での行事へとやって来た私たち。初めての着物、初めての参拝。そのどれもが新鮮で、改めて私は今の幸福をくれたなのは達みんな、そしてテスタメント――ステアに感謝する。
神様へのお願いをする参拝を終えた私とアリシアとアルフは、先に終えていたシグナムとザフィーラ、ヴィータとシャマルの元へ。少し待って「お待たせー」アリサとすずかが合流。そして次に合流するなのはとシャルを見守っているんだけど・・・。

「シャル、どんだけ必至に願い事してんのよ。あたし達の倍はしてんじゃない?」

「どんなお願いか、ちょっと判っちゃうかもね。この神社、縁結びの神様を祀ってるし」

アリサが呆れ口調でそう言って、すずかが微苦笑。なのはの願い事が終わっていてもなおシャルは必至に何かをお願いしている風で、最後になるはやて、ルシル、リインフォースの後ろに並んでる人たちがクスクスって笑い始めた。可愛い、とか聞こえることから嘲笑じゃないのは確か。だから気にするほどのものじゃないんだろうけど、身内としてはちょっと恥ずかしいかも。

「あ、終わったみたい。・・・すんごい晴れやかな顔してるね、シャル」

アリシアの言う通りこちらに向かって来ているシャルは、何か手応えでも感じたのか晴れやか、そして満足げな表情だった。そんなシャルに「シャルちゃん。随分と熱心だったけど。何をお願いしたの?」シャマルが訊いた。

「えっへっへ~♪ もちろんっ、なのは達やはやて達とこれからもずっと、ずっと、ずぅ~~~~っと仲良く、親友でいられますようにっ♪」

満面の笑みを浮かべるシャルに「私もだよ!」って賛同すると、「あ、私も同じことをお願いしたよっ♪」なのはも、「わたしも、わたしも♪」アリシアも、「私もー♪」すずかも、「あら、私もよ♪」シャマルも、そして「まぁ、あたしも、そうね」照れくさそうにアリサも賛同した。シグナムやヴィータも頷いて賛同を示す。すずかが言っていた、この奇跡のような出逢い、を私も大切にしたい。みんなが同じ想いを抱いてる。

「そ・れ・と~・・・ルシルと結ばれますように、って・・・きゃっ❤」

頬に両手を添えて恥ずかしがっているシャルに私たちは全員口を閉ざす。なんとなく判っていたからだ。シャルの長すぎる願い事。きっとルシル関係なんだろうなぁ~って。そんな中、「お前よかはやてとの方がお似合いじゃね?」ヴィータが賽銭箱を指さしてそう言ったから、私たちもそちらに視線を移す。
そこにはリインフォースと大人姿に変身したルシル。そのルシルに横抱き――俗にいうお姫様抱っこされているはやての姿が。シグナムとザフィーラは「ふむ。確かに」って言って、「あら~♪」シャマルは嬉しそうに微笑んで、ヴィータは「ほらな?」硬直してるシャルに肘でツンツン突いていた。

「なんていうかさ。はやてとルシルじゃなくて、ルシルとリインフォースがお似合いかも」

「ルシル君がお父さんで、リインフォースさんがお母さん、はやてちゃんがその子供・・・?」

「あー、なんかそう・・・見える?」

アリサ、すずか、アリシアがそう好き勝手言っている中、「わたしのライバルは、はやてだけじゃなかったのね・・・!」ってシャルが悔しげに握り拳を作って、「でも負けないもん!!」そんな間違った方向に決意しちゃった。

「お待たせや、みんな。・・・って、なんかあったんか?」

車椅子に戻ったはやてと、車椅子を押すリインフォース、その側に寄りそうルシルが合流。

「シャル。リインフォースに何か言いたげだな」

「そうなのか?・・・なんだ?」

「負けないからね!・・・・絶対に負けないからね!」

ビシッとシャルに指を差されてそんな宣言をされたリインフォースや、さっきまでの私たちのやり取りを知らないはやてとルシルは当然「???」小首を傾げることに。そんな3人にさっきまでのやり取りを話そうかとした時、「ま、それはとにかく。今は急いでおみくじを引きに行きましょ。混んでくると面倒だわ」アリサがある小屋を指さす。

「そうだね。じゃあ歩きながらでも・・・」

おみくじ(良運不運を占うためのもの、らしい)を引ける小屋へと向かうその最中、はやて達にさっきのやり取りについて話す。この出逢いを大切にして、いつまででも続きますように。それについては「わたしもやよ」はやてや、「俺もそうだな~」ルシルも賛同。そして最後に、シャルがルシルと結婚できますように、って願った事を伝えた。

「確かに縁結びの神を祀っているってすずかが教えてくれたから、誰かと良縁を結びたいっていう願いをするのは間違ってはいないけど・・・。ん?」

ルシルがシャルを見ながら困ったって風に苦笑。シャルはそんなルシルに「でしょ~?」って笑みを向けた。そして両手をキュッと組んで「縁結びの神様って言うんだもん。恋愛のお願いをしないと損だよ❤ ねえ?」どういうつもりか私たちに振り返って話を振ってきた。

「私はまだ、そういうのはちょっと・・・」

「あんま興味ないわ」

なのはとアリサの意見に私たちも「うん」って賛同していく。今は恋愛なんかよりもなのはたち友達との時間の方がずっとずっと大切だ。シャルは「ちょっと特別なんだよね、私と・・・――」今度ははやてに振り向いて、「はやてはさ。はやても同じ事を願ったよね♪」そう笑ったら、はやてが「ぶふっ!?」噴き出した。

「え、や、わ、ちが、あ、ええ!? ちゃう、そんなん願ってないから! 変なこと言わんといて!」

「落ち着いて、はやて! 落ちる、車椅子から落ちるから!」

パニックを起こしてわたわた暴れるはやて。だからか車椅子からズレ落ちそうになるのをヴィータが止めた。そんな様子を眺めてたアリシアが肘でシャルを小突いて「ダメだよ、ルシル本人の目の前でそんな・・・!」って小声で責めた。

「ええー。だって、ルシルって気付いてると思うよ、はやての気持ちに」

「だからっていきなりは理不尽な爆撃と変わらないじゃん」

「はやてもさっさと告白すればいいのにぃ~」

「あ、あの、あのな、ルシル君、ちゃう、ちゃうんよ!? ベ、別に、ルシル君と結婚したないってことやなくて、あああああ! わたしは一体何を言ってるんや!?」

「主はやて、冷静になりましょう!」

「はやてちゃん、落ち着いて!」

収拾がつくのかどうか怪しくなってきたところで、「はーい、ストップ!」ルシルが手をパンパン叩いた。ピタッと治まる話し声。ルシルは呆れ口調で「少し離れて戻ってみれば、何だ、この騒ぎは?」そんな事を言うから、私たちは「え?」って訊き返す。

「ん? いや、さっき外国の人に道を教えていたから。え? 何か大事な話だったのか・・・?」

確かに私たちの視線ははやてに向いていたけど。でもそんな・・・全くと言っていいほど気付かなかった。

「ううん! なんでもあらへんよ! な、みんな!?」

はやての必死過ぎる形相に、さすがに話を蒸し返す気になれなかったようで、「うん、そだね」シャルは真っ先に頷いた。願い事の話はこれで終わりだと、みんなの考えが念話を使わなくても通じ合って、うん、賛同するために力強く頷いた。とこんな大変な事もあったけど、ようやく私たちはおみくじを引ける小屋へと辿り着いた。

†††Sideフェイト⇒すずか†††

おみくじを1回100円で引いた私たちは、他のお客さんの邪魔にならないように境内の隅っこへとやって来た。おみくじの内容は他の人に見せても良いし、しなくても良いんだけど、「ねえねえ、すずか!」シャルちゃんはおみくじを私の顔の前にまで持って来て、「どういう意味?」って訊ねてきた。

「えっと、シャルちゃんの運勢は、中吉だね」

シャルちゃんのおみくじには大きな字で、中吉、って書かれていた。異世界出身の子が多い私たちのグループの為に事前に調べたことだと、「上から二番目に良いものだよ」って教える。

「ほうほう。2番目に良いかぁ♪」

「うん。大吉・中吉・小吉・吉・末吉・凶・大凶の7段階だね。神社によっては5段階、12段階もあるけど」

「それじゃあ、わたしは一番縁起が良い大吉だね♪」

アリシアちゃんが、フェイトちゃんやシャルちゃんにおみくじの字面を見せびらかせて笑顔を振りまいてる。一応、アリシアちゃんはお姉ちゃんの立場なんだけど、「良かったね、アリシア♪」妹のフェイトちゃんに頭を撫でてもらって気持ち良さそうに、そして嬉しそうに頬を緩めてた。

「アリシアが大吉、シャルは中吉か。あたしは小吉だったのよね」

「私はアリシアちゃんと同じ大吉ぃ~♪」

アリサちゃん、なのはちゃんに続いて「私は、吉だったよ」引いたおみくじをみんなに翳して見せる。それからみんなもそれぞれおみくじの字面を見せていく。大吉は、なのはちゃん、アリシアちゃん、はやてちゃん。中吉は、シャルちゃん、ヴィータちゃん、シャマルさん。小吉は、シグナムさん、ザフィーラさん。吉は、私とフェイトちゃん、アルフさん、リインフォースさん。そして・・・

「ちょっ、ルシルだけ大凶じゃない。キッツぅ~・・・」

私たちみんなが吉以上だったのに、ルシル君だけが一番縁起の悪い大凶だったことに引いた「アリサちゃん・・・!」を私はちょっと語気を強めて窘める。するとルシル君は「すずか。大凶とはそれほど悪いのか?」って訊いてきた。

「えっと・・・、凶や大凶は、これから悪い事が起こります、っていう意味じゃないんだ。気を引き締めましょうっていうのが本当の意味。だから、大凶は特に気を付けましょう、かな? 大丈夫だよ。ルシル君は歳の割にすごくしっかりしてるし」

「そうだよ、ルシル君!」

「そうや、気にしたらアカン。気にすればするほど、良うないことが起こると思う」

「ありがとう、なのは、はやて」

「悪かったわよ。ベ、別に他意も悪気も無かったのよ・・・」

「判っているよ、それくらい。アリサは優しい女の子だからな」

「んなっ? ちょっ、やめなさいよ、そんな真顔で言うの! こらっ、頭を撫でるな!」

「いいなぁアリサ! そこ代われ!」

「今すぐにでも代わってやるわよ、シャル!」

良かった、ちゃんと調べておいて。ちょっと大騒ぎになっちゃったけど、フォローは出来たみたい。そう安堵していると、「さすがすずかだね」フェイトちゃんがボソッと褒めてくれたから、「ありがとう♪」私もボソッとお礼を言う。

(それじゃあ自分のも読もうっと。・・・えっと、運勢は吉。・・・それと・・・)

私自身の引いたおみくじの内容を読んでく。願望は、他人に妨げられることがある。待人は、来るが倖せは少ない。学業は、安心して勉強する事。恋愛・縁談は、思わぬ人に邪魔をされるかもしれない。争事は、勝つが控えて吉。商売・就職は、努力が報われる。健康・体調は、心穏やかにすれば治る。失物は、ほどなく出てくる。

(なんか、願望や恋愛がちょっと気になるかも・・・)

どちらも誰かに妨害されちゃう、って書かれてる。なのはちゃん達もそれぞれ一喜一憂してる中、「ひゃっほぉ~~い!」シャルちゃんは跳び抜けてハイテンションで、はやてちゃんは頬を赤く染めて、チラチラとルシル君を横目で見てる。恋愛の項目で何かしら良い事が書かれていたのかも。
そんなことに思ってると、「お?」ヴィータちゃんが自分のおみくじやはやてちゃん、シグナムさん、シャマルさん、ザフィーラさん、リインフォースさんのおみくじを見て何かに気付いたって風に声を上げた。

「すげぇ。八神家(あたしら)の、待人、失物がおんなじだ!」

「あ、ホンマや」「あら、本当だわ」

驚くはやてちゃんやシャマルさん。私たちも改めてはやてちゃん達のおみくじを並べて比べ見る。あ、はやてちゃんの恋愛・縁談のところ、今の人が最上迷うな、って書かれてる。今の人っていうことは・・・ルシル君のこと、だよね。だからあんな嬉しそうに微笑んでたんだね。

「待人は、便りなく来たる。早し・・・」

「失物は、そう遅くなく出る。遠くから・・・」

フェイトちゃんとアリシアちゃんが読み上げた。はやてちゃん達がその意味を考え込み始めた中、「えっと、ルシル君はどうだったのかな?」なのはちゃんがさっきから静かにおみくじを眺めてるルシル君に声を掛けた。

「あ、いや、特に気になるところは無いよ」

自然な振る舞いのように見えたけど、どこかおみくじを隠そうとしたのがなんとなく判った。だから「どれどれ~?」アリシアちゃんが背の低さを活かしてルシル君の降ろされた左手にそっと近づいて「見せて!」って奪い取っちゃった。

「あ、アリシア!」

「みんなも見せたんだから、ルシルも見せようよ♪ ひとりで背負いこまないでさ♪」

「いやだから、大して気になる部分は無いと・・・」

ルシル君は取り返そうとはしないで、私たちにおみくじを見せてきたアリシアちゃんを溜め息ひとつ吐いて傍観。そんな中で私たちは、ルシル君の大凶のおみくじを読む。

「願望は、苦難の中で失う物あり、得る物あり」

「待人は、来たる。覚悟せよ」

「失物は・・・あ、これははやて達と同じだね。そう遅くなく出る。遠くから」

「恋愛・縁談は・・・、叶わぬ。切り捨てよ。・・・ひどい」

「商売・就職は、思うがままに事を成せる」

「健康・体調は、衰退は果てまで変わらぬ。気を引き締め続けよ」

「争事は、退けば後に不利となる。躊躇わず勝負せよ」

「学業は、憂う事なし。さらに精進せよ」

私たちみんなで読み上げていく。内容は、なんていうか大凶に相応しいって言ったらダメなんだろうけどネガティブなものが多い。だからちょっと私たちの空気が重くなった。すると「こんな空気にしたくなかったんだけどな」ルシル君がひょいっとアリシアちゃんの手からおみくじを取った。

「でもま、さっきすずかも言っていたけど、おみくじはあくまで忠告であって、これから起こる予言じゃない。そうだよな? すずか」

「あ、うん。凶や大凶を引いたからって悪い事が起きるわけじゃない。結局は引いた人――ルシル君次第でいくらでも変わっていける。だから大丈夫。うん、問題ないよ」

「というわけだ。確かにネガティブなものばかり書いてあったが、これからの俺の行動次第・心の持ちよう次第で変われる。だから俺は、なにも心配なんかしていない」

ルシル君がキッパリそう告げる。それでもうこの話題は終わりになった。おみくじに書かれていた内容はあくまで忠告。それは最終的には引いた人の心の持ちようによって変わってくる、ということだと思う。みんなもそれで納得したみたい。

「それじゃあ、結びどころに行こうか」

「結びどころ、ってなに?」

「引いたおみくじを結ぶ場所だよ。引いたおみくじを神社やお寺の木の間に張られた縄に結んで、運勢に関わらないで、そこに居る神様と縁を結ぶんだ。えっと・・・あ、あそこ」

アリシアちゃんにそう答えながら周囲を見回して、結びどころを指さす。結びどころに向かいながら、「そうだ、ルシル君。凶・大凶のおみくじを結ぶのも良いけど、持ち帰っても良いんだよ」一番後ろを歩くルシル君に振り向く。

「そうなのか?」

「うん。凶・大凶だからこそ、持って帰って時々見返すことで、自分を戒める、っていう考え方や使い方もあるの。まぁ、ほとんどの人は結んで行くそうだけど」

私ひとりなのはちゃん達の中間グループから「ちょっとごめんね」離れて、最後尾グループのルシル君、シャマルさん、シグナムさんの元へ移動。

「じゃあ俺は持って帰ろう。すずか、何か気を付けないといけない作法とかあるか?」

「うん、あるよ。おみくじは神聖なものだから、絶対に粗末に扱わないこと。そしていつか必ず、寺社に結びに来ること。ここじゃなくても他のお寺とかでもいいから。だから絶対にごみ箱とかに捨てちゃダメなの」

「君の知識は本当に勉強になるよ。ありがとう、すずか」

ルシル君が私の頭を優しく撫でてくれた。これは癖になっちゃいそうなほどに気持ち良い。シャルちゃんが代わってほしいって言う気持ちを解るかも。そうして私たちは結びどころにおみくじを結んでいって、ルシル君だけがおみくじをお財布の中に丁寧に仕舞い込んだ。

†††Sideすずか⇒イリス†††

わたし、本当に幸せ。リンディ艦長たちと出逢えることが出来たからこそ、狭い世界しか知らなかったわたしの世界はグッと広がった。そしてなのは達に出逢えて友達になれたから、こうして異世界文化に深く触れることが出来た。
そしてはやて達と出逢えたから、こうして好きな人(ルシル)と一緒に初めての経験を重ねていけるんだから。だからわたしはこの国の神様に感謝した。この素敵な、奇跡みたいな出逢いをわたしにくれてありがとうって。念入りに、しっかりと、確実に、神様にちゃんと感謝が届きますように。

(・・・わたしのお願いも届くといいな♪)

すずかに教えてもらった限りじゃこの神社っていう神様を祀る祭祀施設は、縁結びの神様を祀っているってことだ。だからわたしは、ルシルとの縁を結んでもらえるようにお願いした。神様頼みなんて柄じゃないけど、今は少しでも勝率を上げておきたい。最大のライバル、はやてに勝つためにも。
それからみんなでおみくじ(吉凶っていう運勢・縁起の占い)を引いた。わたしは2番目に良いっていう中吉。恋愛・縁談は、未来に幸福あり。今はダメなんだろうけど、未来にはわたしの望む幸福がある、っていう事なんだ、きっと。

(この占いを叶えさせるためにも、これからもアプローチを続けないとね♪)

他は・・・願望は、努力は報われる。待人は、訪れなし。失物は、出る。近い処。商売・就職は、苦なく事は進む。健康・体調は、健やかなるまま。争事は、勝てども哀しみあり。っていう事だけど、問題は・・・学業だったりする。

(足りぬ。努力を重ね苦手克服して吉、かぁ~)

今のわたしの学力じゃちょっと足りないってことかも。なのは達の学校に通っても恥ずかしくないように勉強しておかないとね。

「――これで、良しっと」

結びどころっていう縄に、引いたおみくじをルシル以外のみんなで結び終える。そして次はお待ちかねの「屋台巡り!!」だ。縁日などに食べ物や遊技を提供する屋台へいざ出陣じゃーーー。ああもう、さっきからもう良い香りが漂って来てお腹がぐぅぐぅ鳴っちゃうよ。

「お好み焼き、タコ焼き、焼きそば、串カツ、おでん、肉巻おにぎり♪」

「クレープ、たい焼き、ベビーカステラ、じゃがバター、フランクフルト♪」

わたしとアリシアで、屋台に掲げられた出店されている食べ物の名前を言っていく。他にもある。それを1人で回るのはまず不可能。ということで、一度バラけて、全ての店の食べ物を一度に買って合流。それをみんなで分ければ時間も手間も掛けずに全屋台を制覇できる、という作戦を取ることにした。

「神殿前から鳥居へと下る方向で、全店制覇。車内で決めた通り1人1つじゃなくて、7つまで。2人で1つを分け合えば、きっとちょうどいい量だから」

「シャル、あんた、本気過ぎ」

「シャルちゃん、ホンマに楽しんでくれてるなぁ」

わたしが考え抜いた屋台制覇作戦を改めて告げると、アリサは苦笑、はやては嬉しそうに微笑んでくれた。縁日は今日だけじゃないっていうのは判ってるけど、正月っていう縁日は年に一度。しかも生まれて初めて異世界での行事だ。参加するなら徹底的に。

「それじゃ車内で決めた通りの2チームに分かれて」

ちょうど14人いるわたし達は1チーム7人に分かれる。わたし、アリサ、フェイト、アルフ、ルシル、シグナム、シャマル。そしてなのは、すずか、アリシア、はやて、リインフォース、ヴィータ、ザフィーラ、だ。ジャンケンで決めたから多少偏りがあるけど、わたしとしてはルシルが来てくれて超嬉しい。

「ザフィーラ。ナンパしてきた男は、俺とザフィーラで追い払うってことで」

「うむ。我が主とリインフォースは我に任せろ。お前はシグナムとシャマル、アルフを守れ」

大人の姿になってるルシルと、ザフィーラがコツンと拳を打ち合う。そう、2人はそれぞれのチームに居る女性、シグナム、シャマル、リインフォース、アルフ?に声を掛けてくる男の人たちを追い払う役目を担うために、それぞれに分かれた。とは言え、ザフィーラは問題ないだろうけど、ルシルは逆に呼び寄せそう。女の人をさ・・・。

「よしっ。準備も整ったってことで・・・とぉ~つげぇ~~~きっ!」

鳥居から見て右側に出店してる屋台をわたし達が担当して、向かい側をなのは達が担当。片側10店、計20店の屋台へ突撃する。まずは、「焼きそば!」の屋台から。ちょっと混んでいたから、ルシルとシャマルが先に屋台の前へ。
すると屋台前にたむろしていた人たちが小さな歓声を上げながらルシルとシャマルに道を作った。わたし達も遅れて2人の側へ向かっていると、「な、ないすとぅーみーとぅー」屋台のおじさんが拙いミッド語(こっちじゃ英語か)で挨拶したから、「俺たちは日本語でも大丈夫ですよ。7パック、頂けますか?」ルシルは日本語でそう返した。

「あ、そ、そうですかい! よかった、よかった。英語できんので焦りました! お兄さん、可愛らしい奥さんと一緒に観光ですかい? 羨ましいですね!」

「奥さん・・・!?」

ルシルとシャマルが仲良さそうに連れ添ってるからそう見えちゃうのも仕方ないけど、「いやですよ、おじさん❤」シャマルが嬉しそうに両手を頬に添えてテレてるのを見て、ちょこっとイラッときた。

「いやほら。可愛らしいお子さんが・・・」

「わたし?」「私?」「あたし?」

わたし、フェイト、アリサが自分を指さして小首を傾げる。次にシャマルが固まった。小さく「私が子持ち・・・に見えるの?」そう呟いた。あー、ショックだよね、そりゃ。シャマルの外見年齢は確か、22歳。それでわたし達のような大きな子供の母親と言われれば・・・。
そしておじさんはわたし達の話を聴くことなく「可愛い奥さん、お子さん達にサービスだ!」7つのパックにちょっと多めの焼きそばを盛ってくれた。そんなおじさんにとりあえず「ありがとう」お礼を言って、わたし達は隣のお好み焼きの屋台へ向かう。

「ねぇ、シグナム、ルシル君、みんな。私、老けてるかしら?」

小さく溜息を吐くシャマルがわたし達にそんな質問を投げかけてきた。シグナムが「気にするな」って言うと、「否定も肯定もないって一番辛いんだけど・・・?」シャマルはさらにしょぼーんとなった。

「そ、そんなことないって思うよ、シャマル」

「う、うん、あたしもそう思うわ」

フェイトとアリサがフォローに入ったから、「子持ちには見えないよ」ってわたしも続く。本音を言えば、アリサの母親にも見える。さらにルシルの妻にも見える、でも言ってやらない。さっき嬉しそうにしていたし、これ以上ライバルを作りたくもないもん。

「ああ。シャマルは可愛い女の子だよ」

「うぅ、ありがとう。・・・あ、そうだ! 次はシグナムとルシル君の2人に行ってもらいましょ!」

「「なに・・?」」

ルシルとシグナムが同時にシャマルに振り向いた。シャマルは「ほらほら♪」って2人の背中を押して、お好み焼きの屋台に向かわせる。シャマルに言われるままに屋台に入った2人を、ちょっと離れた後ろで観察。念のため、「なんであたしが・・・」アリサを2人の側に待機させておく。

「これで私と同じよ。さぁ、屋台のおじさん。ルシル君とシグナム、アリサちゃんを見てどう思うかしら?」

シグナムもまた子持ちに見られることを望んでウキウキしてるシャマルだったけど、「いらっしゃい! 彼氏さん、彼女さん共々綺麗だね!」おじさんは2人を夫婦じゃなくて恋人と捉えていた。シグナムの外見年齢は19歳、だったっけ? 無理もないか。側に居るアリサは無関係だと思われてるようだし。

「私の時は奥さんで、シグナムは彼女・・・? そ、そんな・・・」

「あー、なんて言うかさ。あんたって母性が滲み出てんだよな。もしあんたのことを知らないままで、あんたが子供と一緒に居たら、絶対に親子って思っちまうよ」

アルフにそう言われたシャマルがガクッと肩を落とすと、「しぃーっ! ダメだよ、アルフ、嘘でもそんなことないって言わないと」って、フェイトはさっきの自分のフォローを台無しにした。さらに影を落とすシャマルにフェイトはハッとしたけど、もう手遅れ。そんな中で「戻ったぞ」シグナムとルシル、若干不機嫌なアリサが戻って来た。

「どうした? シャマル」

「ううん、なんでもないわ。・・・こ、今度はアルフとルシル君を一緒に――」

「シャマル。俺とシグナムじゃ恋人関係に見られた。アルフと一緒に行ってもおそらくそういう関係に見られるだろう。アリサやシャル、フェイトを連れていたとしても、だ」

「うー。なんか納得いかないわ・・・」

そう言って膨れてるシャマルに「じゃあ、もう1回だ」って言ったルシルは、シャマルの手を取って3店目のたこ焼き屋へ歩き出した。

「え、え、ちょ、待って、ルシル君!」

「大丈夫。ほら、シャマル。みんなも」

ルシルが先頭を行って、たこ焼き屋の前に立って7パックを注文する。と、「おおっと、綺麗どころの団体さんだな」店主のおじさんがわたし達を見て口笛を吹いた。そして「羨ましいね、お兄さん。両手に花どころか花束じゃないか」って笑った。

「あ、あの! 私、彼の何に見えますか!?」

「えっ?・・・彼女さんでしょ? 違ったかい? 後ろのポニーテールのお嬢さんは彼女というより、子供たちの付き添いかな。それにもう1人のお嬢さんもそんな風だ。何十年も屋台主をやっているからね。見ただけである程度分かるよ。雰囲気から言って、あんたが色男の隣に似合っているよ!」

「っ!・・・ありがとうございます! そうなんです、妻でも母親でもなくて、彼女なんです!」

そんなに子持ちに見られなかったのが嬉しいのかシャマルはルシルの右腕に抱きついてそんなことを言った。ルシルはされるがまま、シャマルの気が済むまで付き合うようで、振り払うことも、訂正することもしない。それはシグナムも同じ。ちょっと納得いかないけど、さっきまでのシャマルの元気の無さを見てるから、わたしも話に乗ることにした。

「はっはっは! 気に入ったよ、お嬢さん。おまけを付けてやろう」

1パック8個入りだったけど、わたし達のは10個入りになった。そんなこんなで3店目も攻略。笑顔を振り撒きまくってるシャマルが4店目の屋台、「次は串カツ屋さんね♪」へとルシルと腕を組んだまま向かって行く。なんかさっきはシャマルの機嫌の良さを維持させてあげようと思ったけど、調子に乗らせるのもなんか嫌だ。だから「ちょっと失礼!」ルシルとシャマルの間に割り込んで、2人と手を繋ぐ。

「(ふっふっふ。このポジション、どう見ても親子でしょ?)よーし、次だ!」

「おっと、すみません」

「あ、いえいえ、こちらこそ」

わたしがグッとルシルの手を引っ張ったからルシルと参拝客がぶつかっかった。お互いが謝った事で騒ぎにはならなかったけど、「ルシル、あんた、髪紐が切れちゃったわよ」ルシルの後ろ髪を結っていた紐が何かの拍子で切れちゃった。

「ごめん、ルシル」

「いいさ。どうせ安物だし、帰ったら新品のものを出すよ」

そう言って微笑むルシル。とわたし達の後ろに居るアリサが「一気に女の人に見えるようになったわ」そう言って、「身長が高い、モデルさんみたいだよね」フェイトもそれに賛同。

「後ろ姿だけ見れば、だろう? 目の前から見れば、ほら、立派な男だろう?」

そう言ってわたしの手から逃れたルシルが振り返った。その際に流れる水のように後ろ髪がフワッと靡いて、シャンプーの良い香りが周囲に広がった。たとえ高身長でもジッと見ないと男だと確信できない、わたしは本気でそう思った。

「その答えは、これから話す屋台の店主のリアクションね」

アリサの言葉にみんなが串カツの屋台に目をやった。そして、「行こう」ルシルがちょっと緊張した声色でそう言って、わたし達は屋台の前へ。問:今のルシルをパッと見で男と見分けられるか?

「ん?・・・おお、嬉しいね! 綺麗で可愛いお嬢さん達に寄ってもらえるなんて!」

「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」

答:否。やっぱり女に見られた。結局、残り6店中4店の店主が、ルシルを女と見なした。その後はわたし達はなのは組と合流して、屋台で買ったお昼ご飯をみんなで美味しく頂いた。

 
 

 
後書き
サバアーアルカイルヤ。アッサラーム・アライクム。マサーアルカイルヤ。
今話は前回に続き初詣編となりました。次話は、そうですね・・・おそらくにじファンで連載していた「ハコにわ生徒会」のある一話を、加筆・修正した状態で投稿する予定です。
 
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