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『自分:第1章』

作者:零那
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『アパレル』

翌日、恵ちゃんが事務所に行って、話し聞いて、社員になったらしい。
社員ゆうても、会社としてマダ成立してない。
会社の寮もマダ無くて事務所で雑魚寝状態らしい。

取り扱い素材は、レザー、カシミア、ミンクの毛皮...高級新作コートの展示販売がメイン。

結婚式場など貸し切って、社員が招待状を渡した人のみが入れるシステムらしい。

社員が増えれば人集めで街で声かけることもないし、アパレルに携われる...こんなチャンス二度と無いかも。

まずは人集め。
高松支店の立ち上げ。
給料は販売での歩合制。
商品価格の10%が最低給与。
固定給は無し。
その代わりに生活基盤の寮がある。
夜御飯は会社のお金で作る。

松山支店の寮は、男女一緒に2LDKの家に8人住んでるらしい。
各営業課別に寮が在る。
松山には5ヶ所。
普通のマンションやコーポ。
場所はそれぞれ違う。

高松は寮を借りれてない。
風呂は皆で銭湯。
御飯は、カップ麺やインスタントが段ボールに大量に支給されてる。
バイト掛け持ち禁止。

零那は銭湯ってのが一番のネックだった。

恵ちゃんは、借金返済と家賃や支払いもあるから、バイトは辞めんで良いって。
休みの日に来てくれたら良いって。


基本、就業時間も休みも無い。
部長の気分次第。
普通おかしいって思うやんね。
こんな会社...

でも、大阪が本社なら。
大阪大好きやから妙に信用してた。
深く考えんかった。
しかも立ち上げやから尚更、特に怪しいとは思わんかった。
名古屋、福岡、千葉にも支店が在るみたいやし。


アパレル販売...
してみたいっ!!!

歩合制ってことは自分の頑張り次第...やってみたいっ!!!

興味と興奮しか無かった。
ユウと電話、怪しいけん辞めとけって言われた。
零那にとっては二度と無いチャンス。
失敗しても騙されても自分の意志で動けば後悔は無い。
動かずにはおれん。
それこそ後悔する。
誰が何を言うても貫く。
後悔せん為に、他人の意見には従わん。
納得すれば別やけど。
何が起きても自分の責任。
人間、本質は変わらん。
一度決めたことは何が何でも貫く性格。
自分のやりたいこと、諦めてたこと、今しかない。
行ってみな実体なんか解らん。
悪い会社だとしても、騙されたとしても『ほれみてみぃ!馬鹿やなぁ!』とか言われたとしても、何とも思わん。
後悔はせん。

職員と揉めて話が進まん。
街に行ってはウリもどきで貯金。
罪悪感は無い。
既に汚いし、今更。


本番してるわけじゃ無い。
ヌキしてるわけでも無い。

職員が何を言っても、会社さえ受け入れてくれたら出て行ける。

恵ちゃんが家借りた。

『一緒に住めば家賃折半やしええやんっ!!うちが姉ちゃんみたいなもんやし面倒見る!!』

職員とそんな話してるの知らんかった。
恵ちゃんは、自分が持ち掛けた話で揉めてるのが気になったらしい。
申し訳ない。

翌日、恵ちゃんは携帯を返して貰って荷物をまとめて此処を出て行った。
でも、毎日のように理由を付けて来てくれてた。

零那も外出すれば恵ちゃんの店に会いに行けた。
だから、出て行っても悲しくは無かった。

『明日バイト休みやから、大阪の展示会行ってくる。呼ぶ客もおらんから雑用やけど。現場見学にもなるし♪』

初仕事に喜んでた。
零那も嬉しかった。


大阪から帰ってきて、話を聞いた。

豪華結婚式場の貸し切り。
受付は綺麗で上品な女性。
社員はスーツ着用。
18~40歳位。
男は、どうみてもヤクザだろ!って突っ込みたくなるのが殆ど、若い男はホスト系が殆どだったらしい。

展示会場の商品は、上等なモノばっかりで触るのも気が引けるレベルだったらしい。
みんな白い手袋してたって。


いかにもマダムって感じのオバチャンや、セレブって感じの御姉様も居たらしい。

最初の客が入って、暫くすると、出て行かされたらしい。
だから接客と販売に至っては不透明。

それでもやりたいって気持ちが薄れんかった。
よっぽど未練タラタラやったんやろな、アパレルに。
後悔したくない。
二度とアパレルはできん。

固定給出んくて住む処も無いならお金は要る。
貯金する為に街には行った。
常に会社に居るなら今みたいに稼ぎに出るのは無理。
今のうちに貯金しとこ。

恵ちゃんも怒りはせなんだ。
それが賢明だろうと。
でも、いつも『大丈夫だった?何もされんかった?』って心配してくれた。

家庭環境に恵まれんかった分、出逢う人間は運が良い。

本気で心配してくれる人が居るって、幸せなことやな。


進展が無いのも納得してくれんのも腹立つ。
強行突破しよっかな。
暴走癖?
脱走癖?
若さ故?
とりあえず、ユウには話しとこ。
また逃げた思われるのは嫌。
本気でやりたい事に本気で向き合いたい。
ユウには納得して欲しい。

ユウは事務所で雑魚寝が理解できんらしい。
会社の立ち上げ時点って話したら納得した。
布団が在るか無いかも問題らしい。

まず、事務所に直接行って話し聞きたいって言った。
ユウも、解らんとこ行かれるくらいなら、シッカリ見て聞いて来いって。

職員は、それすら許してくれんからユウに救われた。
出所後には関係無くなる職員よりユウの意見のが大事よね。

それでも今の零那は、仮にユウがあかん言うても行く。
それくらいアパレルに執着してる。
掴めそうな夢やから尚更。


恵ちゃんと話した。
時間空いたとき一緒に行こうって言ってくれた。
チョット不安やったからホッとした。
やっぱ不安なんやな...
改めて感じた。
でも、それでもやりたい。
少しでもアパレルに携われるなら。
行く気満々。

 
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