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クール=ビューティー
第三章
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かしら」
「はい、それもよく」
「そうだよな」
「むしろ意外」
 男達は自分の手にあるジョッキを飲み干し烏賊の足の天麩羅を食べながら答えた。
「そこんところがさ」
「長野さんって凄い東京的なイメージがあったんだよ」
「東京的・・・・・・」
 何かはじめて聞く言葉であった。
「そう、東京」
「よく言えば合理的だけれど悪く言えば無機質だよね」
 どうしても東京の一部分にはそうしたイメージがある。これは都会ならば何処でもあるものだが東京がそのイメージがとりわけ強いのは否定できないであろう。東京はそういう街なのだ。
「けれどね」
 ここで彼等は言う。
「それがなくなって」
「凄く人間的に感じられたよ」
「はあ」
「けれどですね」
 敦子はジョッキを受け取りながら沙代子に言う。早速ガブガブと飲みはじめる。
「そんなに意識することはないですよ」
「言葉を?」
「そうですよ。自然でいいんです」
「自然で」
 また話がわからなくなってきたのを感じた。
「ええ。自然に」
「話したいように話せばさ」
「それでいいんじゃないかな」
「そうなんですか」
 また心が落ち着いてきているのを感じた。
「じゃあこれからは」
「はい」
 敦子がにこりと笑って答えてくれた。
「長野さんが好きなようにされたらいいですよ」
「そうね。じゃあ」
 こで全ては決まった。
「これからは。砕けていくわ」
「わかりました」
 沙代子はにこりと微笑む。それから沙代子は温かさを感じさせながらもしっかりとした女性になった。そしてそのもとになったお見合いの話も上手くいった。ふと出てしまった方言が彼女の全てを変えてしまった。言葉一つで人の運命は変わってしまうものということであろうか。


クール=ビューティー   完



                  2006・12・6


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