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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第95話 オメガの扉
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 そうして……。
 そうして、ゆっくりと差し出されるヴィルヘルムの右手。
 この右手を取って仕舞えば――――

 刹那。乾いた音を響かせ払い除けられるヴィルヘルム()の右手。その瞬間、俺の精神は……。いや、俺を取り巻く世界の在り様は、冬の属性の風が吹き付け、白い氷空からの使者が視界を覆い尽くそうとする、冷たいけれど、それでも通常の世界を取り戻した。そう、この行為により寸でのトコロで自らの立ち位置を、異界との境界線にまで押し返す事に成功したのだった。

「――それで?」

 差し出されるヴィルヘルムの右手を大きく振った右手の甲で弾き、出来るだけ冷たい言葉で答える俺。
 もっとも、一度強く瞳を閉じた後のこの行為だっただけに、この行動や口調が虚勢で有った事はキュルケにさえも気取られた事は間違いないでしょうが。

 但しこれ以上、この目の前の存在にイニシアチブを取られ続けると、本当に精神を操られる可能性が有りますから。そう判断しての、少し相手を徴発し兼ねないような、危険で強い拒絶を示した訳ですし。
 流石に、現状で精神を汚染されるのは問題が有りますから……。

 そう、現在のここは危険な場所へと変化しているのは間違い有りません。テスカトリポカが顕現し掛けた異常な呪力が未だ蟠って居るこの場所に、また違う世界が重なり合おうとしている状態。
 ここに留まるだけで一瞬毎に……。一呼吸毎に正常な感覚が削り取られ、何か良くないモノへとその削り取られた部分が生け贄として捧げられているかのように感じる。
 そんな危険な場所へと……。

「確かに、何だか判らない存在に操られるのは気分の良いモンやない」

 未だ少し焦点の合わない瞳に力を籠め、揺れ続ける視界と足元に喝を入れる俺。呼吸を整え、丹田で練り上げた気を身体中に巡らせ、一気に戦闘可能状態へと持って行く。

 確かに俺に命令を出来るのはこの世界でただ一人。そいつ……俺以外には存在しません。
 しかし、ヤツ……ヴィルヘルムが言う事が真実ならば、その俺が自分で考えた事さえ、実は誰か判らない存在。一般に神と呼ばれる存在の思考誘導により、ヤツラの思惑に乗って居る事に成るのでしょう。

 但し――

「それでも、今、俺が感じて、考えた事は俺自身の考え。其処に何も不都合な部分はない」

 何モノかの思惑に乗って居ようが、居まいがそんな事は関係ない。すべてが自分の考えで選んで来た選択肢の結果。それが現在の俺の立ち位置。
 誰かに強制された訳ではない。確かに、タバサの使い魔に成った経緯や、ガリアの王太子の影武者役などは少し状況に流された感は有るけど、無用な軋轢を生むよりは双方の主張の落としどころを模索した結果の立ち位置ですから、自分的には大きな問題が有るとは思っていない状態。


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