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勝負
第三章
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第三章

「それだけだ」
「そうか。じゃあ日曜な」
「うむ」
 冬樹はまた大きく頷いた。
「用意しておく。それではな」
「ああ。それじゃあな」
 充は決闘の話を伝えると冬樹と別れた。そうしてまた物陰に入ってそこからコソコソとした様子で携帯で電話をかけるのであった。
「こっちは上手くいったぜ」
「こっちもよ」
 やはり出て来たのは女の声であった。
「日曜の朝って伝えたから」
「よし、じゃあそれで決まりだな」
「これで話は纏まるわ」
 女の声はこうまで言う。
「確実にね」
「確実にか」
「要は会わせることが大事なの」
 女の考えはこうであった。
「それだけでいいの、わかるわね」
「この場合はってやつだな」
「そう」
 充の言葉に電話の向こうで頷いているのがわかる。
「そういうこと。わかったら」
「ああ、後は皆を集めてだな」
「証拠を作ればいいから」
「わかった。じゃあ日曜は楽しくなるな」
 充の顔がここで一変に明るいものになった。
「楽しい一日になりそうだな」
「期待しているのね」
「そっちはどうなんだよ」
 澄ました調子の女に対して問い返す。
「こんな楽しい話に。ワクワクしないのか?」
「してるわ」
「そうなのか」
「ええ」
 あまりそうは感じない返答であった。少なくとも電話ではそうとしか思えないものであった。
「そうよ。私も」
「・・・・・・だったらいいんだけれどな」
 充もそれで納得することにした。かなり釈然としないものがあったが。
「まあいい。とにかく日曜な」
 それは念を押す。
「楽しみにしていようぜ」
「わかったわ。それじゃあ」
 ここまで話して電話を切った。充は電話をしまうと一人呟くのだった。
「日曜は祭りだな」
 楽しそうに笑う。そうしてその笑みでゲームセンターに向かうのであった。機嫌がいいので余計に楽しみたくなったからである。そうしてこの日は楽しい一日となったのであった。彼にとっては。
 日曜。冬樹は遊園地の前に向かっていた。黒いフード付きのマントを頭から被って一人先に進んでいる。
「いるのなら」
 決闘のことしか考えていない。なおマントの下は稽古着である。
「相手をしてやる。腕試しにもなる」
 そう呟きながら前に出る。
「誰であろうが僕は勝つ!」
 叫んでさえいた。擦れ違う人々が怪訝な目で見るがそれは目には入らない。そうして遊園地の前に来た。そこにはもう相手がいた。
「果たし状、受け取った」
 冬樹はその相手に対して言う。相手も黒いフード付きのマントを身に纏っている。決闘の相手であるのはその格好だけでわかった。
「なあば容赦はしない。いいな!」
「望むところ」
 向こうも彼の言葉に応えてきた。女の声に似ていたがそれはどうで
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