悪魔の島編
EP.16 復活の兆し
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「そんな、どうして!?」
「どうなってるんだ!?」
傾いていたはずの遺跡が唐突な地響きと共に、何事も無かったかのように元の姿に戻っていた。
「(どうやって……土系魔法? いや、基礎を壊された建造物を直すならそれこそ聖十クラスの使い手じゃなきゃ無理だ。なら――!)……まさか」
「ワタル?」
ワタルもまた、ルーシィとハッピーと同じように驚愕していたが、胸の内を占めていたのは別の事だった。
推測の果てにたどり着いた仮説は有り得ない程の事ではない。だが、それは十分予想外の範疇に位置していた。
驚愕から警戒へと、ワタルの僅かな変調を感じ取ったエルザは、襲撃者の首領格であるブラーゴの老婆から視線を外さないまま、彼に声を掛ける。
「……」
「……おい」
「……エルザ、悪いがここは任せる」
「え? お、おい!」
「ワタル!?」
「ちょ、ちょっと!?」
思考に入ったまま返事をしないワタルに焦れたエルザが肘で彼を突くと、ワタルは視線を遺跡に向けたまま一言発し、遺跡に向かって走り出した。
ルーシィやハッピーはもちろん、付き合いの長いエルザすら見たことのないワタルの振る舞いは彼女らを困惑させた。
彼らの中では一番に我を取り戻したエルザは嘆息すると、彼を追う……のではなく、老婆に向き直り、何事も無かったかのように尋ねる。
「ハァ……さて。貴様等、訳有りのようだが?」
「ちょ、いいのエルザ!?」
「何がだ?」
「いや、何がって……」
「ワタルだよ。追いかけなくていいの?」
清々しいほどあっさりと聞き返され言葉に詰まるルーシィとさらに質問したハッピーに対し、エルザは答える。
「ここを任せると言われたからな。ワタルには何か考えがあるのだろう」
「考え?」
「ああ。それが何なのか、私には分からないが、悪いようにはならないさ。なんたって、アイツは――」
自信たっぷりに言い切るエルザ。だが、ハッピーの遮った言葉に凍りついた。
「はいはい、ごちそうさま。まったく、その続きは2人っきりの時に言えばいいのに」
「ど、どどど、どう、いう、意味、だ、ハッピー?」
「どういうって……ムギュムゴ――」
「……エルザって案外初心なんだ」
「「「……」」」
顔を真っ赤に染め、ハッピーの頬をこれでもかと伸ばして必死に誤魔化そうとするエルザだったが、恋に恋する――という年頃でもないが――ルーシィは、初々しいエルザの反応を意外に思いながらも頬を緩める。
リオンの元に行かせまいと妖精の尻尾の魔導士を妨害したが、一方的に降参させられた襲撃者たちは、いきなり目の前で始まったコントに目を点にして呆けていた。
ハッピーに私刑を決めたエルザは仕切り直し、改めて彼ら
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