第一部 刻の鼓動
第二章 クワトロ・バジーナ
第二節 木馬 第二話 (通算第27話)
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
サラブレッド級攻撃機動母艦の後継艦である《アーガマ》はエゥーゴの最新鋭艦であり、それまでのサラブレッド級とは違い、オープンカタパルトデッキになっていた。ペガサス級、サラブレッド級ともにクローズドデッキスタイルを採用しており、アーガマ級ともいえる機動母艦だったが、実はアイリッシュ級のプロトタイプであり、アナハイムが実験艦としていたものを艤装し、戦闘用に改修したものである。設計思想はサラブレッド級の流れを汲んでいるが、実質的にはアイリッシュ級戦艦であった。
現在、《アーガマ》は《ラルカンシエル》にドッキングした状態で、艤装改修の最終段階になっており、ラビアンローズ級に備わっている十六本の工事用マニピュレータアームが忙しなく動いている。それは、まるで、食虫花が捉えた虫を触手で絡めとるのに似ていた。アーガマは艦体前部に接続されているため花芯のように見える。
シャトルが接舷したのは《ラルカンシエル》の艦体後部シャトル収容カタパルトである。通路での立ち話も、いつまでもできる訳ではない。ブレックスは真っすぐに進んでいく。中央シャフトに出ると、重力ブロックの警告表示があった。
「この先は重力ブロックになっていてな。この艦は月周回軌道上での作業期間が長いため、艦体を回転させ擬似重力をつくっている。人は重力なしでは生きられんことを、こういう時には不便と感じるな」
「はっ。生粋のスペースノイドには重力のありがたみはよくわかるつもりです」
生真面目に返す若者を好まし気にみやる視線が温かい。ブレックスはこのクワトロ・バジーナという若者がシャアであるかどうかよりも、この若者が好きだった。
エレベーターホールに入って着地する。微重力が発生しているものの、さして、体は重くなかった。エレベーターの扉が開く。ブレックスとシャアが同じタイミングで動いた。一瞬、躊躇し、ブレックスがシャアを行かせる。ここでは、シャアが部外者だった。
「我々ジオン軍人がこういう所に出入りしてしまって、よろしいのでしょうか」
「大尉、先ほどもいったが、最早時代はそういうことを言っていられない事態を迎えているのだ。バスクのような輩が我が物顔で宇宙を這いずり回っているような……な」
バスクという名前に呪詛の響きを感じさせる声を出す。忌々しさが滲んでいた。それだけ、ブレックスがシャアに気を許している証拠である。
「バスク・オム大佐には我々は随分と嫌われておりますから」
「レビル大将閣下がご存命ならば、この様な事態にはならなかったのだが……」
昔を懐かしむような表情をしたブレックスに、シャアは感傷を嫌うかのように黙った。その瞬間エレベーターのドアが開いた。三人の前に通路の向こうから喧噪が聞こえてくる。そこは、モビルスーツファクトリーであった。
ブレックスは提督と呼ばれる海軍閥である。宇
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ