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Ball Driver
第十二話 好対照
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第十二話


紅緒の右腕が鋭く振られる。
指先がボールの縫い目をしっかりと引っ掻き、回転を与え、それが軌道を打者の手元で変化させる。

ブンッ!
「ストライクアウト!」

帝東の強打者連中のバットが空を切り、紅緒は小さな体で大きなガッツポーズを作りながらマウンドを降りていく。
回は3回。まだ紅緒は1人のランナーも許していない。力のあるストレートに、鋭く曲がるスライダー。パワーピッチングを披露していた。

「あのチビなピッチャー、中々やるぜ」
「あぁ、まだ2年らしいよ。将来楽しみだね」
「バッテリー両方女か。女だてらにって奴だな。帝東に強気で攻めてる」

観客席の高校野球ファンも、南十字学園の4点リードに驚きを隠せないが、一方で紅緒の実力に感嘆の声を上げていた。

カァーーーン!!

「うおーっ!」
「バッティングも怪物かこいつは!!」

3回の裏、またまた紅緒が魅せる。
二死で回ってきた打席で、帝東のエースが少し思い切った勝負に来た球をライトスタンドに叩き込み、二回以降立ち直りかけていた相手を一発で沈めた。

(勝負しちゃいけない……このチビとは……)

リードする大友もガックリ。5-0と、さらに南十字学園のリードが広がった。
帝東ベンチは、たまらずリリーフを送る。
ブルペンで投げていた背番号18の投手がマウンドに駆けていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「……恐れていた展開になったな……」
「まさか白崎がここまで打たれるとは…」

帝東ナインがマウンドに集まり、真っ青な顔を並べていた。ここまでのデータで南十字学園はバカにならない打力を備えているとは分かっていたが、しかしここまで自軍のエースまでもがタコられるとは思っていなかった。
こんな状況でマウンドにやってきた投手は左利きで、小柄で華奢だった。焦りを隠せない先輩とは違い、実に飄々としていた。

「先輩方も、サザンクロスと同じくらい、ここやまで点とってるじゃないですか。まだ5点ですよ?今まで平均10点とってますから、まだまだ大丈夫ですよ」

この投手は髪が短く刈られてはいたが、その顔つきは明らかに少女のそれだった。

「まぁ、それくらい開き直るしかないか」
「しっかり投げろよ。守ってやるからな!」

先輩達を元気付けた、この投手の名前は神島飛鳥という。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「飛鳥が出てきやがったか……」

南十字学園ベンチでは権城がつぶやいていた。
神島飛鳥は大会で何度も対戦した世田谷西シニアのエースで、権城の同級生だった。
そんな飛鳥が名門・帝東で1年から出場機会を得ているとなれば、権城としては唇を噛まざるを得ない。俺は南十字学園なんかに来ておきながら
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