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Ball Driver
第十話 雑用
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らしい。
権城を走らせる為に。

「しねぇええええ!」

もう隠すことなく声に出しながら、権城は再びファウルゾーンを駆けていった。


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「南十字ぃーーー??野球団??、ミーティングを始める。それでは主将の、みぃーーやびぃーーれぇーーいじ!」
「あ、ああ」

試合後のミーティングで、形代に水を向けられた礼二は円陣の中心にどっかと腰を下ろして話し始める。

「んー、野球はやっぱり、良いもんだねぇ。この夏の日差しの中、若い男女が一つの球を追いかけて汗を流す……」
「………」

部員一同、礼二の言うことを「何をまたしょうもない事を……」という感じで半目で聞いていた。試合後の反省ミーティングで、何で高校野球ファンのジジイのような感慨を語っているのか。

「……おっと」

礼二が円陣の外に目を向けた。そこには、彼がサカナちゃんと呼ぶ、あのモデルの少女が日傘を差して立っていた。

「諸君、すまないがサカナちゃんを待たしてるんでね。僕からは以上だよ。次も頑張ろう。」
「うむ」

形代が頷き、礼二は颯爽と立ち上がると、ツカツカとサカナちゃんの下へと行ってしまった。もう周りは何も言わない。しかし、礼二が遠くに行った後で、散々に言い散らかす。

「はぁ!?何しょーもない事だけ言ってバイバイしちゃうわけ!?」
「宿舎も俺らとは別々、球場入りも別々だし!」
「女侍らしてんじゃないわよ優男!」
「女といちゃこく暇あったらバットでも振ってろよボケ!」
「女相手にバットは振ってるでしょバットは」
「やかましいわ!」

同級生下級生を問わない散々な言われようだが、形代は聞こえない振りをしていた。

「…………」

最も礼二に不満があるはずの権城はというと、虚ろな目を泳がせるばかり。試合中のダッシュですっかり疲れ切っていた。



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宿舎に帰っても、1年生の仕事は終わらない。
先輩のユニフォームの洗濯などが待っている。

「ジャガー、洗濯機空いた?」
「いえ、まだですね。これくらいなら、部屋のお風呂場を使って手洗いしますよ」

洗濯カゴいっぱいの洗い物を両手に、権城とジャガーはホテルのロビーをウロウロしていた。
ジャガーはホテルの洗濯機を諦めて、自室で手洗いしようとする。さすがメイド、洗濯には慣れてるのだろう。これほどの洗い物を目の前にして頭がクラクラした権城とは違い、「これくらいならすぐできる」と言い切った猛者なのだ。

「!」

権城はふと、ホテルのロビーに来ている人に目を留めた。白のポロシャツに、ジャージの下。ポロシャツには「帝東」の文字。逞しい体。日焼けした顔。

「ジャガー、先に部屋
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