第一部 刻の鼓動
第一章 カミーユ・ビダン
第四節 渓谷 第五話 (通算第20話)
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「そろそろの筈だ……」
一年戦争で実戦をかいくぐってきたフラガでも、既に戦火を見なくなって久しい。訓練をしてはいるものの、あの時の感覚が薄れているのは事実だった。マニピュレーターでランバンに待機の指示を出して、ダミーの位置を確認する。遠隔操作は上手く動いているようだった。
「サラートなら気づいてもスルーするな」
ダミーで攪乱する戦法は、モビルスーツのマニピュレーターにマルチランチャーユニットを装着させることが主流になってからの戦法であり、サラートにとっては馴染みがない。フウガはグラナダの戦力不足を鑑みるに重要な戦法になると考え、ダミーを使った作戦プランを常にシミュレートしていた。
「予測ではあと3000mといった所か…?」
操縦桿を握り直す。汗など掻いていない。だが、訓練であっても緊張する一瞬だった。タイミングを合わせて、二機の《ジムU》のメインノズルが火を噴いた。
センサーに反応!
「もらったっ!」思わずフウガが叫んだ。ランバンも右のショルダースラスターと脚部のブースブースターを吹かして飛び出した。
「なにっ!?」
ランバンとフウガが目にしたものは、サラートとカミーユが用意したダミーだった。
「しまったっ!?」
ダミーは動くものという常識がフウガにはあった。サラートはそれを逆手にとって、ダミーを岩場に挟んで固定し、ブラフにしたのだ。慌ててレーダーに映し出されたダミーを拡大する。同時にスラスターを噴かして機体を機動させ、上空からの射撃ラインから逃れようとした。
――ロックオン!〈レプラコーン〉撃墜。
「ちぃっ!」
構わずメインエンジンと全てのスラスターを全開にして機体を上空に踊らせる。機体を軋ませて、フラガの《ジムU》が、跳ねるかの様に舞い上がった。しかし……。
――ロックオン。〈ライトニング〉撃墜。
背後からのアラートが点いた。
「そんな……莫迦な?!背後だとっ?」
フラガが撃たれたのは地上からだった。しかも、ダミーから左程はなれていない距離。撃ったのは、カミーユだった。
「マジか……ョ……」
姿勢制御をオートに戻し、機体を着地させる。上空に浮かんでいるのは、ダミー。地上にはダミーを脱ぎかけているサラートの《ジムU》がいた。発想の転換とでも言おうか、サラートには敵わないな…と改めて思わさせられたフラガであった。
「サラート、やられたよ」
「隊長、褒めるんならカミーユを褒めてやってくださいな。隊長の作戦を見抜いたんですからね。ま、さすがに作戦提案はCランクでしたけど」
相変わらずの辛口である。しかし、カミーユの先見性は鋭い。ダミーにプレッシャーは存在しないが故に、感受性の高いパイロットはダミーを見抜くのだ。それは、もしかするとニュータイプへの足掛かりなのかもしれなかった。
「やはり、カミー
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ