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東方虚空伝
四十五話 月の軌跡 前編
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生の為には本人の遺体、もしくは一部が必要であったからだ。
 死者蘇生というだけでも一般人からすれば馬鹿げた研究だ。更には全く何も無い状況からの蘇生という馬鹿げた研究はもはや狂気の沙汰。しかし永琳はその馬鹿げた研究の成功に繋がる一つの結論に至る事になる。
 この『世界』にはこれまでの全ての出来事が記録されているはず。ならその情報の中からあの日の虚空の記録を抜き出し実体化させればいい、と。
 普通ならそんな結論に至っても辿り着ける訳が無いのだが稀代の天才はその世界の真理への道を見けた、否見つけてしまった。
 その世界の真理に永琳は実験として三人の男を挑ませた。永琳に色目を使い近寄ってきた男達であり彼女にとっては利用しやすく尚且つどんな結果になろうがどうでもいい人物達だった。
 結果は情報という暴力による消滅、例えるなら削岩機に木彫りの人形を放り込むようなものだった。その後も念の為三人使って検証したが真理の入り口で消し飛ばされるだけ。
 次に彼女が着手したのが不死身の肉体の生成。消し飛ばされても再生し続ける事が出来ればいい、と結論し様々な人体改造に取り組みだした。
 結果は六人は改造中の副作用で死亡し、成功したと思った三人は結局不完全な不死身であった為消滅した。

「……八意君、君の思いも理解は出来る、だがだからと言って他人を犠牲にしていい訳ではない!―――――本来ならば厳罰に処さねばならぬのだが……これまでの功績、そして未だにこの都は君の力を必要としている」

 永琳が平然としている訳はこれだった。例え彼女の行いが悪だとしても永琳の頭脳はこの月の発展には必要不可欠なのだ。

「君への処罰は不問とする―――――だが、『世界干渉』と『不死・不死身に関する全ての事柄』は今後禁忌として扱う。八意君、如何に君とて次は無いぞ……心せよ」

「……蓬莱山様の寛大な御慈悲しかと賜りました」

 厳しい視線でみつめる劉禅に永琳は立ち上がりそう言って優雅に一礼すると議場を後にする。しかしビルの廊下を歩きながら彼女の思考は次の実験を練り始めていた。

(さて次からは何を使おうかしら?流石に新しい行方不明者が出れば蓬莱山様は私を処罰するわね)

 指導者として永琳の存在を重要視してはいるが度を過ぎれば(既に過ぎているが)躊躇無く処断されるだろう。劉禅という男はそういう男だ。

(……あぁそういえば丁度いい子がいるじゃない)

 悩む永琳のに一人の少女が思い浮かぶ。永琳と同じ虚空と深い縁が出来てしまった記憶の虜囚――――輝夜。

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