暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
終わりゆく陽だまりの日常
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「ん、レェジ、レィジ……」

 そんなに難しい発音でもないはずだが、この呼び慣れない名前を呼ぼうとしている様子が赤ん坊のようで可愛い。

「レイジ、ね。もし今後もこうして会うことがあれば、そう呼ぶわね」
「お、おう」

 名前で呼び合うようになったのはいいが、これは嫌われたわけではないと判断していいのか。
 今の話のせいで悪感情を持たれたならそれはそれで仕方ないと思っていたが、まさか好感を持たれたということもあるまい。

 この少女風に言えば、暇潰しの玩具が予想以上に興味を引いたといったあたりだろう。
 いつも通りの振る舞いに戻った彼女が立ち上がる。

「今日はこれでおしまい。私、帰らなくちゃ」
「そうか。少し名残惜しいが、お別れだな」

 以前よりは少し早目の時間で、今回はお開きになった。
 
 彼女に渡した大判焼きの包み紙を受け取り、出口へ向かう少女の背中を見送る。
 先程まで人生相談のような空気で話していたのが嘘のように、その足取りは軽かった。

 内心突っ込んでいい話踏み込んでいい領域なのか恐れていたが、別段気に障ったということもなさそうだ。

「さようなら、レイジ。次の貢物も期待しているわ」

 その言葉に、少なからず驚いたのは事実。
 いつの日か俺が再会の言葉を口にしたときとは逆の立ち位置で、今度は彼女がその意図を口にしたのだから。

 だから俺も以前と同じく、それに応える言葉で別れを告げた。

「ああ。またな、イリヤ」

 白い少女との別れを惜しみながら、俺も公園を跡にした。


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