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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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――ああ……また、此処か。

 そんな悪態も漏れよう。三度、眼前に広がる窮極の宇宙。痴れ果てた異形の神々が躍り狂う、盲目白痴にして混沌の魔王が座する玉座に。
 前の狂躁は、もう忘れてしまったのか。神々はまたも、生け贄になど興味すら抱かずに。

『ヨ ウ コ ソ』
「――――――――!」

 それは、まさに爆音だった。直上で、気化爆弾か皇帝核爆弾(ツァーリ・ボンバ)が炸裂したかのような衝撃。
 酷く辿々しいが、それは存在を、事象を。躯を、精神を。霊魂を――――直接、揺らすような。暴力としか言いようのない衝撃だった。

『ヨ ウ コ ソ   ア ラ タ ナ ル  ワ ガ セ イ サ ン ヨ』

 『聖餐』だと。見なくても分かる程に下卑た表情を浮かべている筈の、魔王の声。心臓すら止まったのではないかと思うほどに硬直する生け贄の、頭の上……背後から。

『コ ノ ミ ギ ウ デ ハ  キ ニ イ ッ タ カ ?』

 ずるり、と。魔王の手が延びる。文字通りに。烏賊か、蛸か? 何を莫迦な、人間のものだ。形だけは。

――何だ、あれは。いや、覚えがある。あれは……!

 それは名状し難く、また、理解する事も出来ない。だからこそ、『生け贄』には馴染み深いだろう。
 笑っている。同時に、妬んでいる。『()()』が得る事も、窺い知る事すらも叶わなかった『魔王』の下賜を賜った『生け贄』に。嘲り、罵りながら――――暗愚のまま、躍っている。

『ワ ガ  ナ ヲ  ノ ゾ ム  オ ロ カ モ ノ ド モ ヨ』

――見える。確かに、見えてしまう。見たくもない、その有り様が。
 灰色の町、剥ぎ取られた幻想の彼方。唯一残った、その夢物語。誰しもに忘れられた、この世ならざる大洋(オケアノス)。異形の海豚達と、精霊(ニュムペー)達。優しくこの身を包み、彼方に誘う菫色のスンガクの芳香――――

――止めろ、止めろ止めろ止めろ! 行きたくない、行きたくない行きたくない行きたくない! 俺は、俺は、そんな所!

 その『魔王』の手が……沸き立つ禍々しい奇怪にも機械に似る、確固たる密集した鎧にも群を為した剣にも、唯一生まれ持った拳にも見える追加された複合装甲を纏う、右腕の鉤爪の拳が……

『ダ イ シ ョ ウ ノ ト キ ダ   キ サ マ ノ  タ マ シ イ ヲ  ヨ コ セ !』

 生け贄の、肩に触れた――――――――

――ああ、月が。あの、小さな窓の向こうの、狂い嗤う黄金の満月が……。


………………
…………
……


 静かに、目を開く。いつも通りの朝の風景、『錬金術』によって亜麻色に戻した髪までぐっしょりと濡れた程に、大量の寝汗……否、冷や汗か。
 それを拭おうと右手を
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