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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第一章 カミーユ・ビダン
第二節 配属 第四話 (通算第9話)
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ながらカミーユはその手を取って立ち上がった。ついた汚れを払う様にして、エントランスの近くにあるカフェテリアに黙って向かう。笑いを堪えたランバンが後に続いた。
「悪かったな」ぶっきらぼうに謝るランバン。
 カミーユは別に怒っている訳ではなかったが、不機嫌だった。
「別にっ。怒ってないよ!」
「何か別のこと考えてたんだろ?」
 ランバンはカミーユの様子から、そう判断していた。らしくない。カミーユはいつも周りに気を張っているように感じていたからだ。気分転換にと誘ったのだが、気分転換にならなかったのなら悪いと考えた。ランバンらしい気の回し方だった。
「いや、一年戦争って結局、スペースノイドのフラストレーションの捌け口だったんじゃなかいかって……さ」
「そうだろうな。オレだって、軍人やってなきゃ、連邦政府の批判ぐらいする」
「軍人か……あんまり、俺たちは軍人向きじゃなさそうだ」
 顔を見合わせて吹き出す。スペースノイド共通の認識とでも言おうか。スペースノイドにとってジオンは『敵』という感覚ではなかった。しかし、ザビ家は『敵』だった。ふと見ると、カフェテリアの壁は一年戦争の年表になっていた。
 宇宙世紀〇〇七九年一月三日。ジオン公国の宣戦布告によって一年戦争が勃発した。ジオン独立戦争の幕開けである。宣戦布告から三秒後、サイド6を除く各サイドおよび地球軌道パトロール艦隊に奇襲が仕掛けられたのだ。サイド5を除く各サイドの連邦宇宙軍派遣艦隊は潰滅、コロニー駐留軍は全滅した。そして、ジオン公国軍はGGガスによる大量虐殺を敢行した。これは、コロニーの基地化を恐れての軍事行動であると共に、既にジオニズムに賛同するスペースノイドはジオン公国への移民を済ませており、残存するスペースノイドは地球連邦政府の味方であるとの考えからだったと言われている。これによって、三十五億人もの人命が失われたのだった。
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