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【短編集】現実だってファンタジー
高速道路最速奇譚! 後編
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れたのか、首から先が完全に消滅してらっしゃる。ハッキリ言わせてもらうと、結構怖い。

「というかバイクが空飛んでる!?とうとうホンダの技術力はそこまでいったか!!」
『阿呆いいなさんな!騒霊現象(ぽるたぁがいすと)で飛んどるだけや!』
「ご説明させていただきまSHOW!!ワタクシの『悪夢のパープルムーン』はなんとッ!」
「空飛べるんだろ?」
「あぁぁあぁぁあぁッ!!ワタクシのエレガァントゥな説明をこの上なく単純簡潔先手必勝で説明されてしまったぁ!?ひょっとしてワタクシより頭脳優秀ッ!?」
『ハナタレがぁ・・・わっちの()の上に乗ってええんはわっちの選んだ”おひと”だけや!』

心なしかコペンの声はかなりドスが効いている。朧車としての誇りに引っかかる行為らしい。しかし、空を飛ばれたら俺にはどうしようもないなぁ。窓にちょっと傷ついたしこれ以上のちょっかい出されて傷が増えるのは勘弁なのだが・・・・・・

「むむむ、ワタクシ仮にも騎士なので敵に背中は見せられん!でもなんか勝てそうにないので後ろに向かって前進することにし申した!!地球を一周すれば正面なので問題なしぃぃぃぃぃぃ!!!」
「おいてめー・・・当て逃げとはいい度胸じゃねえか・・・ッ!」

俺が車が好きだ。コペンも好きだ。ドライバーとして車を乗り回していられることに感謝しているし、そんな車を大切に扱わないやつには悲しみを越して怒りを覚える。あいつのバイクとて人を襲うために造られた訳では無いはずだ。運転手を楽しませ、楽をさせてやりたいと思って作られたはずだ。それを奴は踏みにじった。

車にそれがあるように、ドライバーの心にはエンジンがある。奴は俺の魂ともいえるそのエンジンに傷をつけた。だから、お前が何に傷をつけたか思い知らせてやろう。火のついたエンジンの前には、時代遅れの騎士道(スィバリィ)とやらも追いつけないことを思い知らせてやろう。

この大江戸粋刻様とコペンに喧嘩を売った代償は、お前の誇りで払ってもらう。

「コペン、空飛べない?」
『わっちは大妖・朧車!!あんな何処ん馬の骨とも知れんガキに後れを取るほど落ちぶれてまへん!!出でませい、煉獄大火輪!!!』
「・・・あ、これワタクシ死んだんじゃないですかね?」

コペンのタイヤが骨まで融解しそうな”濃密な炎”を纏い、次の瞬間俺たちは――空を飛んで
逃げようとするディックを轢いた。

「『往生しろやぁぁぁぁーーーーーッ!!!』」
「ぎょえええええええええええ!?!?」


都市伝説:燃え盛る追跡者(ブレイジングコペン)

高速移動系怪異に分類されるあらゆる都市伝説を統べる、伝説の中枢的存在。全ての高速移動系怪異はそのコペンから生まれており、高速道路を走る時のみコペンの周囲に怪異たちが集合する
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