第一部 刻の鼓動
序章
プロローグ
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人類が増え過ぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに一世紀が過ぎた。
地球の周りには巨大なスペースコロニーが数百基浮かび、人々はその円筒形の内壁を人工の大地とした。
その人類の第二の故郷で人々は子を産み、育て、そして死んでいった……。
宇宙世紀〇一〇〇年三月十二日、この日宇宙世紀に吹き荒れた戦乱の火種であったジオン共和国が独立自治権を放棄し、地球連邦政府に復帰した。この一世紀あまりの間に、ラプラス事件、統合戦争、一年戦争、デラーズの乱、グリプス戦役、アクシズ戦役、シャアの叛乱、ラプラス紛争と続き、そのほとんどに「ジオン」という名が表れては消えて行った。
「もう、ジオンは二度と立たないのだな……」
老人は遠い目をして、流れるニュースクリップを眺めていた。そこには、かつてのムンゾ自治共和国からムンゾ共和国、ジオン公国、そしてジオン共和国への歴史が、国章とともに手短に描かれている。
彼の傍らには、彼よりも若い婦人が立っていた。
「あなた…まだ、そんなことをおっしゃっておいでですか?」
「あの頃、わしらがやってきたことを結局政府は何も解っちゃいなかったんだ」
ニュースクリップの映像はジオン共和国の国旗がポールから下されていく様子を写している。代わりにするすると連邦旗とムンゾ自治政府旗が掲げられていく。
「仕方ないじゃないですか。それが政府……いえ、官僚というものなのでしょう?」
テーブルにティーカップをおいて、婦人は台所へと去って行く。婦人はなにをいまさらとすこしだけ投げやりだ。
「そんなことは解っている。だが……」
老人は、眼鏡を取り目頭を押さえた。
「誰かに語り継ぐことはできる。いつの日か、ジオンの意志を継ぐ者たちが現れた時のために……」
そう独白すると、老人は筆を執った。
老人の名はランドリック・ギースという。
彼は宇宙世紀〇〇四七年十一月七日、オーストラリアに生まれ、三一歳で一年戦争を体験した。十八歳で軍人となって初めての戦争だった。
一兵卒から叩き上げで昇進し、曹長になり退役を考えていた所だった。だが、一週間戦争で宇宙軍が壊滅的打撃を受けたため、砲科下士官だったランドリックは陸軍から配置転換と短期養成によってで宇宙軍に移り、パイロットとして少尉に任官された。決して撃墜数は多くはないが、確実に生き残り、グリプス戦役、アクシズ戦役をくぐり抜け退役した。
退役後、ランドリックは実話を元に本を出した。本のタイトルは『ジオンの呪縛』。宇宙世紀の最初の百年はまさにジオン・ズム・ダイクンによって時が支配された時代だったといってよい。
この物語は、ランドリック・ギースが書いた『ジオンの呪縛』を元に当時の資料からまとめた戦争の実録である。
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