暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第五十四話
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
第五十四話


見上げるような長身は、均整のとれた体格、というのとはまた違う。長ーい手足。浅黒い肌。
口羽高校のエース、伊東正志はまだ線の細い大きな体でマウンドにそびえ立つ。

「一体何センチとか?」
「198らしいっすよ」

ベンチ前で素振りする小柄な一、二番コンビが、その威容に目を丸くしていた。


ーーーーーーーーーーーー


バシッ!
「ストライク!」

小さなステップ幅。マウンドの高さをそのまま生かすような高いリリースポイント。「下半身を使え」と口うるさい指導者は言うだろうが、このフォームはこのフォームでバランスが取れている。

(たっか!こんな角度今まで見た事ないわ!)

打席の渡辺が面食らう。さすがに高校生で、これほどの大型投手はそうそうお目にかかれるものではない。

ブンッ!
「ストライクアウト!」

球速自体は130キロ後半。まだまだエンジン全開といった風では無いが、角度のついたボールは単純な球速よりも“速く見える”。ボールを正面から見ているのではなく、脇から見ている感覚に陥る。

「球が二階から落ちてきよるぞ。外がくっそ遠く見える。」
「マジっすか。ま、確かに見た感じヤバそうっすね。」

三振に倒れた渡辺に続いて打席に入る枡田。
冬を越えても相変わらず、大声を上げて相手を威嚇する。

(上から投げてきちゃあるって事は、逆にゴロは叩きやすいやろ。鋭く転がして間抜いたるで。)

バットを短く持った枡田。
果敢に振っていくが、二階から投げ降ろされる伊東の球が、手元でグン、と沈む。

ブンッ!
「ストライク!」
(角度あるだけやなくて、くっそ落ちるやんけ!)

伊東自慢の縦スライダー。この落ちる球があるおかげで、角度を生かした高低差の揺さぶりが生きる。

ブンッ!
「ストライクアウト!」

枡田は高めのストレートを振らされて三振。
ボールの高さの感覚が麻痺してしまった。

「ボール球振んなや〜」
「いや、あれは振ってまうって」

すれ違いざま、ニヤニヤしながら嫌味を言う鷹合に枡田は顔をしかめた。

(渡辺と枡田が三振してくるなんてそうそうないで。やっぱしええピッチャーなんやろか。)

のっしのっしと打席に向かいながら、鷹合の目が光る。好投手との対戦に昂る気持ち。もう完全に“野手”の鷹合がそこに居る。

<3番センター鷹合君>

三龍打線の中で一際大柄な鷹合の登場に、口羽ナインも表情を引き締める。二死という事もあり、外野手が大きく後ろに下がる。

(……こいつ、やっぱりウバメタイガースの鷹合だよなァ。中学じゃピッチャーじゃなかったか?それが今は、聞いた事もない学校で野手なんてしてるのか)

怪訝そうなのはマウンド上の
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ