暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
観測者たちの宴篇
24.救助の先
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世界有数の魔導産業複合体だ。

「ああ。奥の建物が来客用のゲストハウスになってる。こっちだ」

 眠っている優麻を彩斗は背中におぶり、古城の後ろをついて行く。その後ろに他の皆も続いて行く。

「どうして暁古城がそんなことを知ってるの?」

「……家に帰ってなければ、たぶんまだここにいるはずなんだよ」

 苦々しげに顔をしかめて、古城は言った。紗矢華はキョトンとしている。

「誰の話?」

 古城は少し困ったように頭を掻く。

「──暁深森。俺の母親だ」




 観光客があふれる夜の大通りを、無数の電球で装飾された台車と、踊り子たちが練り歩いていく。波朧院フェスタ初日の夜。名物のナイトパレードが始まった。
 その光景を大きな窓越しに眺めながら、藍羽浅葱は深々とため息をつく。
 ファミリーレストランの一席。浅葱の正面には、愛らしいドレス姿の幼女と人懐っこい少女が座っている。
 二人はどちらともパンケーキを切り分けて食べている。
 先ほど出会った前髪ぱっつんの大きなリボンがよく似合う幼女と彩斗の妹の緒河唯だ。

「浅葱さん、奢ってもらっちゃってすみません」

「いいのよ、別に。ね、なにか思い出せた。お名前とか」

 リボンの子と目線の高さを合わせながら、浅葱は優しく訊いてみる。
 しかし幼女は、黙って首を振るだけだ。
 ここに来るまでにも、何度か質問してみたが、この子は自分の名前や住所を答えることができなかった。

「じゃあ、お母さんのお名前は?」

 浅葱は粘り強く質問を続けてみる。すると今度は即座に返答があった。

「あいばあさぎ」

「なんでそうなるかな……」

 ぐったりと脱力しながら、浅葱はもそもそと料理を口に運んだ。

「浅葱さん。この子に見覚えとかないんですか?」

 唯はパンケーキを口に運びながら言う。

「見覚えね……」

 パンケーキを頬張る幼女を見つめて、浅葱はようやく、彼女の既視感に気がついた。この幼女は、南宮那月に似ているのだ。

「ね、南宮那月って名前に聞き覚えはない? もしかして本当のお母さんかも……」

 見た目はともあれ、那月は自称二十六歳だ。四、五歳前後の娘がいてもおかしくはない。
 それなら浅葱を母親だと言った理由が辛うじて説明がつく。

「みなみや……なつき……」

 たどたどしい口調でそう呟いて、リボンの幼女は食事に手を止めた。大きな瞳が揺れる。透明なしずくが溢れ出した。それを見て浅葱は慌てふためく。

「ちょ、ちょっと……どうしたのよ……」

「わからない」

 リボンの幼女はゆっくりと首を振る。

「浅葱さん、小さい女の子を泣かせちゃダメですよ」

「あたしのせいじゃ……」

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