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不思議な味
第六章
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第六章

「これから台所に入るからな。大人しくしておるのじゃよ」
「何か作ってくれるの?」
「御前達にはこれを買って来たわ」
 そう言って出してきたのは果物であった。よく熟れたマンゴーである。
「これでも食べておきなさい。よいな」
「わあ、マンゴーだ」
「じゃあ貰うね」
 孫達はそのマンゴーを受け取ると笑顔で家の外に行った。こうして彼等は二人となったのであった。
「時にはこうしてあしらうことも大事なのですじゃ」
「子供はですか」
「そうじゃないと身体がもたないのですじゃよ」
 老人は楽しげに笑いながらアッサムに説明する。しかしこれはアッサムにとってはあまりわからない話であった。彼は僧侶でありそれ程子供と接する機会がないからだ。
「そんなものですか」
「まあそれもおいおいわかりますじゃ」
「そうですか」
 首を傾げながら彼の話を聞くのであった。
「それでですな」
「ええ」
 老人はここまで話すと話題を変えてきた。
「うどんとそばのことですが」
「はい、それですね」
 話が戻ってきた。アッサムは無意識のうちに顔をあげていた。
「台所ですね」
「左様。まずはそこに行きましょう」
「ええ、それでは」
 老人について台所に入った。そこには竈があり炭が置かれている。ごく普通の有り触れた家の台所であった。アッサムのいた寺の調理場の方がずっと整っているように見えた。
 ここでそのうどんやそばを作るのかと思った。果たしてどんな麺かもわからずどうやって作るのかもわからない。とりあえずコエチャップと同じなのかと考えていた。
「まずはですじゃ」
「あっ、はい」
 考えているとそこで老人が声をかけてきた。
「麺ですぞ」
「麺ですか」
「こね方は同じですじゃ」
「あっ、そうなんですか」
 老人から話を聞いてそれは納得した。
「しかし細かいところがありましてな。それはこkをこうして」
「ふむ」
 老人の説明を聞く。それはタイでの麺と全く違っていた。話を聞けば聞く程興味深い。これが日本の麺なのかと思うのだった。
「それでこね方は」
「私は足でしていましたが」
 これは麺のこね方では非常によく使われる。アッサムもそうなのであった。
「それで宜しいでしょうか」
「大いに結構ですぞ」
 老人は彼の言葉を聞いて満足気な笑みを浮かべて頷いてきた。
「その方がコシも出ますでな」
「そうですね。それではそれで」
「はいですじゃ。麺はまあこれでいいですな」
「大体これでいいんですか」
「はい。大体は」
 タイでは多くのことがこの大体という感じで済む。タイ語でいうと『マイペンライ』となる。この言葉はタイではよく使われる。『大丈夫』という意味だ。これはアッサムもよく聞くしよく使う。タイ人の間では本当に馴染み
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