暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
観測者たちの宴篇
23.囚人の狙い
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「あああ……つ……かれたあああ……」

 藍羽浅葱は力無く背伸びをした。
 彼女がいるのは、絃神島の中心。キーストーンゲートと呼ばれる逆ピラミッドの巨大な建物だ。

「ああもう、やってらんないわ。なにが哀しくて祭りの日まで、バイトしなきゃなんないのよ」

 右手に握ったスマートフォンに向かって、浅葱が不満をたれる。

『いやいや、今回はマジで感謝してるえ。嬢ちゃんのお陰で助かった』

 声の主は、むかつく人工知能だ。
 モグワイが、不意に声を潜めて浅葱に言う。

『感謝してるついでに、もうしばらく公社に残ってく気はねえか?』

「はあ?」

 浅葱は声を洩らした。思い返せば昨日の昼頃、友人たちとのんびり観光中だった彼女を人工島管理公社に呼びつけたのも、この性格の悪い人工知能だ。
 おかげで浅葱は、魔女たちによて捻じ曲げられた空間座標の逆算という、クソ面倒なプログラムを書き上げていた。途中で彩斗の母親が手助けしてくれたおかげで少しは休憩できた。
 だが、いつの間にかその姿もいなくなっていた。

「なんでよ? 」

 モグワイは、いつにもなく真面目な口調で警告してくる。

北地区(ノース)の沖に、未登録の増設人工島(サブフロート)が出現してやがる。“図書館”の連中の目的もわからないままだしな。やべー予感がするんだぜ』

「あんたね……曲がりなりにもコンピュータのアバターなんだからさ、いちおうとか予感とか、そういういい加減な情報で他人を振り回すのはやめなさいよね」

 浅葱は呆れたようにそう言って、スマートフォンの電源を切る。
 空はもう暗く、波朧院フェスタのイベントも、夜に突入したところだ。
 見物客の中にはカップルたちが仲睦まじく祭りを満喫していた微妙に浅葱を苛立たせる。
 今ごろ緒河彩斗はどうしているのであろうか。

「思い出したら普通に腹立ってきたわ……あたしがこんなに苦労してるときに……!」

 八つ当たり気味に呟きながら、モノレールの駅へと向かった。

「浅葱さーん!」

 浅葱を呼ぶ声に周囲を見渡す。
 すると少し、遠くの方でこちらに手を振る少女の姿が見える。近づいてみてようやくわかった。
 黒髪に茶髪が薄く混じっているショートの可愛らしい顔立ちの少女。白い中央に何かしらの柄が入ったTシャツに昨日と同じようなショートパンツを履いている彩斗の妹の唯だ。

「浅葱さんはこんなところでなにやってるんですか?」

「あたしはバイトの帰りよ。そういう唯ちゃんはどうしたの?」

「あたしは彩斗くんと美鈴ちゃんが全然帰ってこなくて暇だったからパレードでも見ようかと思って外に出てきたんだよ」

 人懐っこい印象の唯。

「それにしてもひどいよね。
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