暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
観測者たちの宴篇
23.囚人の狙い
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「先輩、友妃さん……!」

 雪菜が愕然としたように、聖堂が立っていた場所を見上げた。
 完全に崩れ落ちた聖堂の跡地に新たな建物が現れていた。
 分厚い鋼鉄の壁と有刺鉄線に覆われた軍事要塞──違う、監獄だ。

「これが……本当の監獄結界か……? じゃあ、さっきまでの建物はなんだったんだ!?」

 先ほどまでの聖堂とは違う雰囲気の要塞に一同が困惑する。
 いまだ出現した要塞は、半実体の姿を保って、揺らめいている。
 そして、困惑する友妃の耳に聞こえてきたのは、不気味な女の声だった。

「同じもの……だ……よ、第四真祖」

 声の主は、要塞の巨大な門の上に立っていた。
 足元まで届く、長い髪の女だ。身につけているのは、平安時代の十二単。華やかに重ね着した衣装だ。顔立ちは若く美しいが、緋色の瞳。その瞳はどこかこちらを不吉にさせる。

「──周と胡蝶とは、則ち必ず分有らん。此を之れ物化と謂う……あの空っぽの聖堂は、監獄結界が、南宮那月の夢の中にあるときの姿……だ」

 詠われる言葉の一つ一つが不吉さをより一層際立たせる。

「だが“空隙の魔女”は永劫の夢から醒め、監獄結界は現出した。同じ世界空間にあるのなら、そこから抜け出すのは造作もないこと……だ。この(ワタシ)にとってはな……」

 そう言って、緋色の瞳は嘲笑う。

「お母……様……?」

 鮮血に濡れた優麻にの唇が、か細く洩れる。

「あんたがユウマの母親だと……!?」

 バカな、と古城が低く叫んだ。
 優麻と緋色の瞳の女が血縁であることは、誰もがわかった。それはあまりにも似すぎていたからだ。

「ユウマちゃんと……同じ顔……」

「当然……だ。その娘は、我が単為生殖によって生み出したただのコピー。監獄結界の封印を破るためだけに造られた、我の影に過ぎないのだから」

 動揺する友妃たちを哀れむように、阿夜が傷ついた優麻を指さし告げる。

「我よその娘は、同一の存在──だからこそ、こういう真似もできる」

「う……あ…………あああああああああっ……!」

 そのとき優麻の喉から迸ったのは、絶叫だった。
 彼女の背後に、魔力によって実体化した人型の幻影が浮かび上がった。悪魔の眷属──すなわち魔女の“守護者”である。
 その蒼い騎士の全身が、黒い血管のような不気味な模様に侵食されていく。

「ユウマ!?」

「……まさか……そんな……魔女の“守護者”を奪うなんて……」

 魔女の“守護者”を奪うということなどその肉体へのダメージは途轍もないものとなる。

「いや……やめて……お母様……!」

 優麻が弱々しい声で叫ぶ。

「我が(オマエ)に貸し与えた力、返してもらうぞ──我が娘よ」

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