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いかさまは知っていても
第二章
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「仕方ないな」
「はい、勿体ないですけれどね」
「まあ亭主の手術の金を稼ぐ為にうちに借金して、ですからね」
「借金はディーラーとして稼ぐ」
「そうした決まりですから」
「この世界もな」
 黒社会もだというのだ。
「こうした約束は守らないとな」
「はい、駄目ですからね」
「信頼第一ですからな」
「いざとなれば裏切りは確かにありますけれど」
「それでも」
「借金を払い終えたらな」
 それなら、というのだ。
「契約も終わりっていうこと位はな」
「守らないと」
「手下や他の組織にそうした奴等だって思われますし」
「だからですね」
「これ位は」
「次のディーラーはもう見付けてある」
 既に、というのだ。
「だから仕方ないがな」
「花蓮は契約終了と一緒に、ですね」
「この店を出るってことで」
「口止めはしてある」
 この闇の賭場のことに関する全てのことをというのだ。
「だからな」
「もうすぐですね」
「終わりってことで」
「しかもな、亭主の手術の金を稼ぐ為にやってるからな」
 ここで元締めは人情を見せた、こうした社会であるが多少ともこうしたことはあるらしい。
「泣かせるな」
「親分そういうのに弱いですからね」
「どうにも」
「まあな、そういうことならな」
 花蓮の様な事情を持っている相手には、というのだ。
「約束は守らないとな」
「俺達みたいな奴等でも」
「それでもですね」
「ああ、そういうことだ」
 こう話しながらだ、彼等は賭場の賑わいとそこからあがる儲けを見て楽しんでいた。そのうえで花蓮が動かしているルーレットも見ていた。
 ルーレットは見事なまでに賭場の利益になっていた、それは全てそこを仕切っている花蓮のお陰であった。
 だがその彼女にだ、一人の若い男が来た。手下達はその男を見て元締めに対してこう言った。
「またですね」
「またあの旦那ですね」
「今日も来ましたね」
「昨日も一昨日も」
「ああ、それでだな」
 元締めもやれやれといった顔で彼等に応えた。
「大負けするんだな」
「ですね」
「毎回毎回よく負けますよ」
「うちのルーレットはいかさまなのに」
「しかも仕切っているのが花蓮なのに」
 つまり万全だというのだ、彼等の利益になるには。
「まあいかさまがわからない様にしてますが」
「それでも毎日よく来ますよ」
「お金を貢いでくれる感じですね」
「本当に」
「ああ、ただな」
 ここでだ、元締めは手下達にこうも言った。
「あの旦那な」
「はい、今日も来てるあの旦那」
「親分はご存知ですか?」
「何処かで見たことありますか?」
「確か劉さんだ」
 この名前を出すのだった。
「最近ここに来たみたいだが台北じゃ有名な人だったな」
「劉さんで
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