暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン8 ノース校と選ばれし戦士(前)
[2/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
頑張ってみてもいまだに精霊召喚ができない。だから、直接声を聞くこともできないわけで。

「…………こうしててもしょうがないし、外行ってくる」

 結局どうすることもできず、またデッキの真ん中あたりに押し込んで家を出るのだった。まだ少し時間もあるし、軽く散歩でもしようかな。そう思い立ち、デュエルディスクだけ腕にはめて靴を履く。海岸に行けば、少しは気分も晴れるだろう。
 しばらく歩くと、見覚えのある人影が見えた。こんな朝早い時間に崖に向かって………なんだろう、デュエルディスクからひたすらカードを引いている。もう少し近づいてみると、何を話しているのかも聞こえてきた。

「アン、ドゥー、ドロー。アン、ドゥー、ドロー。アン、ドゥー、ドロー。む、誰かいるのか?」
「三沢!」

 そこにいたのは僕の友達の一人で、ちょっと前までラーイエローの秀才と呼ばれていた男、三沢。今ではすっかり白い服になってしまい、そのせいでイエロー改めホワイトの秀才とか何とか呼ばれてるらしい。

「えっと……」

 はて、何を話せばいいんだろうか。そもそも三沢とは、彼が光の結社に入ってから一度も話していない。常に白い制服の誰かに囲まれていて何となく近寄りがたかったのもあるが、それ以上に怖かったのだ。あの時一足先に光の結社に入っていた万丈目は、僕のことなんてまるで眼中にないようなそぶりを見せていた。あの時だって実は結構へこんだのに、また誰か、僕の友達にあんな態度をされたとしたら。立ち直るのにかなり時間がかかることが容易に想像できて、だから近づくのを避けていた。というか逃げた。いいことじゃないとは思うけど、こればっかりは勇気が出ない。
 だけど、三沢はそんな僕の心境なんてお構いなしに話しかけてくる。

「同じ学校にいながらこういうことを言うのも変な話だが………久しぶりだな、清明」
「え?ああ、うん」

 何一つおかしなところのない、ごく普通の挨拶。だというのに、とっさに反応できなかった。心のどこかでは、三沢も万丈目のようになってしまったと勝手に覚悟していたのかもしれない。

「そうだ。今日の代表メンバーだが、なかなかの人選じゃないか?俺が入らなかったのが少し残念だが、まあ事情が事情だししょうがないな」
「あ、あはは」

 さわやかに言って笑う三沢。その隣で、僕の笑いはさぞぎこちないものだったろう。そのまま何かを言おうとしたようだが、彼が口を開く前に聞き覚えのある声が近づいてきた。

「む。なんだ三沢、こんなところにいたのか。斎王様がお呼びだぞ」
「ああ、わかっているさ万丈目。今行く」

 これまでよりも当社比3割増しぐらいに偉そうにふんぞり返って歩いてくる万丈目……あー、ホワイトサンダー。まったく、と肩をすくめ、三沢とともに並んで離れていく。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ