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魔法少女まどか☆マギカ 〜If it were not for QB〜
碌話 甘言
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 「……私、ずっと前から上条恭介くんの事をお慕いしてましたのよ」

 まどかが世界の現実を突き付けられた日の放課後、さやかは仁美に呼び出されて近所の喫茶店に来ていた。上品な風格の店で、さやかは全身がこそばゆかった。何と自分に場違いな事か、入店時は笑ってしまったものだったが。

 あまりに唐突で、ハンマーで頭を殴られるような衝撃。唐突過ぎて、口から出て来たのは笑い声。

 「……そ、そーなんだぁ! あはは、恭介のヤツも隅に置けないn」
 「さやかさん、上条くんとは幼馴染でしたわね?」
 「ん〜、まぁ腐れ縁って言うか、何と言うか……」

 「本当にそれだけ?」

 こんな表情をする仁美をさやかは知らない。おっとりとした普段の柔和な表情とも違うし怒った様子も無く、何だか妙な違和感を感じる。

 「私、もう自分に嘘はつかないって決めたんですの……貴方はどうですか?」
 「どうって……仁美、あんた、変だよ……」
 「本当の気持ちと向き合えますか?」

 核心を突いた一言。さやかは黙り込む。黙り込んで……両目から涙が流れる。

 「好き、なんでしょう?」
 「……………」
 「ずっと前から知っていました……貴方は大切なお友達ですもの、抜け駆けも横取りも出来はしない」

 一日だけ待ちます、私は明日の放課後に上条くんに告白します……

 それまでに、後悔なさらないよう決めて下さい……と、仁美はそれだけ言って席を立つ。二人が頼んだ分の代金を律儀に置いて。それは今にも泣き崩れるさやかへの配慮であった。

 「ううっ……ひ、ひとみっ……っ」

 恭介を選べば仁美を失う。いや、選んだ所で恭介が自分を選んでくれるとは限らないのだけれど。好きだったかどうかは分からない。いや、どう強がっても自分は彼を愛していた。彼がヴァイオリンを弾けなくなって、特に楽器に興味があるわけでもないのに彼の不幸を少なくとも彼の次には悲しんでいた。別に好きでも無いクラシック曲を彼が楽しそうに聞くのを見ると楽しくて、そんな彼が好きだった。

 自分はどうすればいいのだろう……答えは出さなければならない。此処で引いたら負けだ、仁美には運動では勝てる。勉強では負ける。それで一勝一敗。

 それでも、あいつの事を傍で支えてやれるのは自分しかいない、そう信じている。


 「お、さやかか」
 「兄さん……」

 一人とぼとぼと歩いていると、向かい側に見知った男が立っていた。

 さやかが『兄さん』と呼ぶ相手はさやかが普段よく利用する音楽ショップ(割と中規模の店だが吹奏楽やオーケストラの楽器や小物、楽譜も色々置いてありCDの種類も豊富なのだ)に大体半年前くらいにバイトで入った大学生の青年で、事あるごとにお勧めのCDを教えたりしてくれる相手
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