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臥薪嘗胆
第三章
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第三章

 まずあるプロジェクトを考え出した。それを部長に提案した。
「おい、こんなことを考え出したのか」
「どうでしょうか」
「凄いことを考えたものだ」
 部長はファイルにしたそのプロジェクトを見ながら思わず唸っていた。
「これは実行に移したら凄いことになるぞ」
「やって宜しいでしょうか」
「ああ、是非やってくれ」
 彼はすぐに太鼓判を押した。
「いいな、すぐにだ」
「わかりました」
「責任はわしが持つ」
 部長はこうまで言った。
「我が社にとって大きなことになるぞ」
 こうして彼のプロジェクトは実行に移された。話はそのまま他社にも持ち掛けてそのうえで。今回はライバルである山川コーポレーションを見事出し抜いたのである。
 彼は見事雪辱を晴らした。大成功であった。
「上手くいったな」
「はい」
 八誠は部長に対して述べていた。
「今回は」
「君は見事雪辱を晴らしたわけだ」
 部長はにこにことして彼に話す。
「よくやったな」
「それで後は」
「君は少し休んでくれ」
 そうしてくれというのである。
「有給を取ってな。英気を養ってくれ」
「わかりました」
「ボーナスも出るぞ」
 このことも八誠に言ってきた。
「それではな」
「はい、それでは」
 こうして彼はボーナスと有給を手に入れて妻と楽しい旅行に出掛けた。妻と二人で熱海に出掛けそうして楽しい時間を過ごしたのだった。
 しかし有給が終わり会社に戻ってみると。彼にとってあまりよくないニュースが入って来ていた。
「山川コーポーレーションもやるものだ」
「まさか向こうも」
「やり返してきた」
 こう彼に告げてきたのだ。
「早いがな」
「まさか向こうもプロジェクトをですか」
「それで業績を伸ばしてきた。我が社とまた競り合ってきた」
「私が出したプロジェクトで負けてもですか」
「向こうもやられっぱなしではいられないというわけだ」
 そうだというのである。敵もさるものだ。
「つまりだ。向こうもだ」
「向こうも」
「臥薪嘗胆というわけだ」
 それだというのである。つまりはそういうことだった。
「それは君だけではなかったということだ」
「向こうも。では」
「また頑張るとしよう」
 八誠に対する言葉だった。
「それでいいな」
「わかりました。それでは」
「しかしな」
 ここで部長は少し溜息を吐き出した。それを一息にしてまた言うのだった。
「世の中とはこういうものかも知れないな」
「といいますと」
「悔しさをバネにして頑張るな」
「はい」
 それは彼もよくわかった。臥薪嘗胆である。
「皆同じということだ。ライバル会社もな」
「お互いにということですね」
「そうだ。そうしてお互い生きていくのだろうな」

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