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少年と女神の物語
第九十三話
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のことを見て、ボクの名前を当てて見せた。

 当然ながら、ボクは武双君のように様々な形で有名、というわけではない。せいぜいが、神代家の一員として呪術会で危険視されている程度だ。
 だから、神祖に知られている理由なんてない、はずなんだが・・・

「・・・はぁ、考えても無駄だな。どうしても知りたいのなら、直接グィネヴィアとやらに聞いてみるしかない」

 それに、この件は関係なく彼女には聞かないといけないことがある。
 ボクが記憶を失う前のこと、それを彼女は間違いなく知っているはずだ。
 元々ボクが拾われた施設では、ボクのことはただ捨てられていたとしか話してもらえていない。それでも、それだけではないのは明らかだ。

 まず、ボクは十一歳くらいの時に拾われてあの組織にいたらしいけど・・・そこで、もうすでに記憶がない。
 拾われた当初の記憶がないのだ。幼すぎて忘れた、ということはないはずなのに。だからこそ、そこには何かあったはずだ。ボクに話せない理由が。
 それが何なのかは、ボクには分からない。いや、もう誰にも知ることはできないだろう。推測することしかもうできない。

 だからこそ、あのボクの過去を知っているらしいグィネヴィアから直接聞くことができれば、その推測はより現実味を帯びてくる。
 そもそも、現実味を帯びるだけの推測すら、ボクの手元にはないのだが。

「・・・いや、待て。その前に・・・」

 ボクの名前・・・ナーシャという名前は、あの組織でつけられたもののはずだ。
 今ある一番古い記憶。それは、ボクが拾われた組織で目を覚ました時のことだ。

 目の前にボクの教育係を押しつけられた人がいて、その人にこう聞かれたんだ。

『なんていうんだ、お前?』

 それで、ボクは『分からない。何も覚えてない』と答えた。
 すると、あの人は困ったように頭を掻き毟って・・・『じゃあお前、今日からナーシャな』と言われた。
 そこで初めて、ボクの名前は『ナーシャ』になった。それなのに、あの神祖はこう聞いてきた。

『ええ。人違いでなければ、ナーシャであっているかしら?』

 間違いなく、そう聞いてきた。
 ということは、彼女とはボクが『ナーシャ』になってから出会っているということ。あの口ぶりからしても、彼女とは知り合いだったと考えてもいい。
 だが、ボクの記憶にそんなものはない。神祖とであったなんて、そうそう忘れるはずもないのに。

「なら、何で・・・ボクは存外忘れやすいのか・・・?」

 それはない・・・はずだ。事実、これまでのことは思い出せる。あそこで拾われてから今日まで、何でも覚えてるわけじゃないが衝撃的なことは全部覚えている。
 それでも、グィネヴィアのようなやつに出会った記憶はない・・・


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