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SAO 〜冷厳なる槍使い〜
第二章  曇天の霹靂
9.離別
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 駄目だ。もう駄目だよ。
 わからなくなっちゃったよ。
 自分が何を言っているのか。
 自分が何をしたいのか。
 キリュウさんに何をしてほしいのか。
 こんなことを言っちゃったあと、どうすればいいのか。
 わからない。わからないよ。

 ――でも。

 一つだけわかることは……。

「……ッ!!」
「あ! ネリー!?」
「ど、どこ行くッスか!?」

 今はもう、あの人を見ていることが辛い。

 それだけだった。



   ◆



 地面を打つ雨音が響く。
 視界の端、遠くの空で微かに光が走った。

「ネリー! 待って!」
「ちょ、何処に行く気なんスか!!」

 ルネリーが踵を返して走って行った。
 雨に濡れていたが、その瞳から涙が零れていた気がした。
 レイアとチマは何も言わず、気まずげにチラリとこちらを見た後、ルネリーを追っていった。

 ――ルネリーが、泣いていた。

 レイアもチマも、悲しげな顔をしていた。
 俺のせいで。

 どうしてこうなった……?
 ルネリーたちを守りたい一心で、強くなりたくて。
 昼間だけでは足りなくて、でも彼女たちに無理はさせたくなくて。
 深夜に一人レベル上げを行っていた。

 何がいけなかった?
 あの子たちに黙っていたことか?

 ――否。

 違う。本当は解っている。
 俺は、彼女たちを仲間と思っていながら……仲間として接していなかった。
『俺が守る』? それは《仲間としての発想》か?

 違うだろう。保護者視点ので発想だ。
 無意識に見下してしまったんだ。彼女たちのことを。
 守ってやるなんて、なんと上から目線なのだろうか。

 こんな俺に、彼女たちを追う資格などない。
 彼女たちの仲間でいる資格などない……!

「…………ッ」

 力が抜けた。
 立ち尽くす俺の手から槍が零れ、カランと音を立てて地面に落ちた。

 なんでだろう。

 何故、こんなにも辛いのか。
 俺はただ、みんなで居たかっただけなのに。
 三人の笑顔を、守りたかっただけなのに。
 何処で間違ってしまったんだろうか……?

「二木……」

 ふと、現実世界に残してきた友人の顔を思い出した。

「……俺は、どうしたら良かったんだ――――」

 しばらくの後、足元で、パリンと乾いた音がした。

 落とした槍が砕けたのだ。

 ルネリーたちと苦労して手に入れたあの槍が。

 ――彼女たちとの思いでが…………ひとつ、消えた。

 ゴロゴロと、雷鳴と激しい雨が、俺をずっと打ち付けていた。
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