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SAO−銀ノ月−
第六十六話
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クラッドと変わらず、渋いグレーの色をしたポンチョに、ところどころ音符のような模様が付いている服装だ。特定の種族カラーを持つことはなく、服に音符がデザインとして付いているのは、《音楽妖精〈プーカ〉》の特徴ではあるが、《幻惑魔法》でそう見せているならば、服装などどのような物でも分かりはしない。先に日本刀《銀ノ月》で攻撃して隙だらけだったにもかかわらず、PoHが攻撃してきたのは目の前の奴が幻惑だったから、とも考えられる。

「考え事か? 敵が目の前にいるってのに、余裕だな」

 そう聞こえてくるPoHの台詞にハッと意識を目の前に移すと、奴の包丁の射程まで接近されていたことに気づく。先程から凡ミスを繰り返してしまう、そんな自分自身に舌打ちをしつつ、型も何もないケンカキックと呼ばれる正面への蹴りを反射的に放つ。その蹴りはやはり、目の前のPoHに当たることはなく貫通し、やはり《幻惑魔法》かと――

「いい加減、コッチの番で良いよなぁ?」

 ――そう思っていると、俺の蹴りをすり抜けたPoHの包丁が、高速で俺の胸部を切り裂かんと接近する。日本刀《銀ノ月》を包丁が描く軌道上に置くようにして防御するが、やはり包丁はそのまま《銀ノ月》をすり抜け、俺の胸部へと向かっていき。

「ぐうっ……!?」

 一閃。包丁の傷が上に羽織っているコートと和服を切り裂き、俺の守られていない場所まで辿り着く。俺を驚かせたのは、その包丁にダメージがあったこと――つまり《幻惑魔法》ではない、もしくは俺の知っている《幻惑魔法》ではないということと、包丁に切り裂かれた胸部が、現実世界で本当に切り裂かれたように痛みが走っていること……!

「ショウキ!?」

 斬られたところを抑えてうずくまっている俺のただならぬ様子に、後ろにいるリズが悲鳴のような声をあげながら、こちらに向かって走ってこようとしているのが音で分かる。

「近づくな!」

「――――ッ!」

 俺が力の限り腹から声を出すと、息を飲む音とともに彼女をその場に留めることに成功する。斬られた胸部から手を離し、日本刀《銀ノ月》を構え直す。俺を斬った張本人である奴は目の前で、鼻歌を歌いながらポンチョの下で底意地の悪い笑みを浮かべていた。やはりこの謎の痛みは、ゲームのバグなどではなく奴の仕業……!

「痛いだろ? 本当のdamageがなきゃ、コロシアイとは言えないよなぁ!」

 その言葉とともに、またもや殺人鬼の包丁が俺に向かって振り下ろされる。何故、このVRMMOで現実のように痛みを感じるのか――などと考えている余裕はない。俺はバックステップで距離を取りながら、三本のクナイを発射するものの、やはり奴の身体からはすり抜けてしまう。

 クナイなどまるでこの世に存在しないかのように、奴はそのまま速度を
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