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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十八話 新秩序
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シュタインを第一艦隊に乗せてくれと頼みに来たというのが本心だった。俺はホアン委員長とも相談して交換してもらった。まあホアン委員長もヤンと話してみたいという思いが有るらしい。交換はスムーズに行った。

「大佐も御守りが大変だよな」
「ヤン提督と話したんですか?」
「話した。ミハマ大佐やグリーンヒル少佐とも話したから何が有ったかは知っている」
“そうですか”と言ってヴァレンシュタインが頷いた。

「ヤンの奴は大分気にしていたぞ、お前さんに理想に酔うと言われた事をな」
「……如何思いますか、ワイドボーン提督は。見当外れだと?」
「酔っているかどうかは分からんが考え過ぎる所は有るだろうな。でもそれはお前さんも同じだろう」
ヴァレンシュタインが首を傾げた。

「考えはしますけどね、あそこまで疑い深くは有りません。ヤン提督は悪い方へ悪い方へと取りますよ。痛くも無い腹を探られるのは面白くありません」
実際面白くなさそうな表情をしている。周囲の人間がこちらをチラチラと見ているのが分かった。俺とヴァレンシュタインの仲を心配しているのかもしれない。艦隊の中ではヴァレンシュタインとヤンが激しい口論をしたという噂が流れているらしい。教えてくれたスールズカリッター少佐を窘めておいたが……。

「不安なんだろう。奴にはお前さんが人間不信になっているように見えるんだ。そしてその原因が自分に有ると思っている。お前さんの影響力が強まるにつれ責任と不安を感じるのさ。もしかすると第二のルドルフになるのではないかとな」
「自分が怪物を生んでしまったと? まるでフランケンシュタインですね。私は彼が生み出した怪物ですか」
ヴァレンシュタインは薄い笑みを浮かべていた。今更何を言っているのか、そんな気持ちが有るのかもしれない。胸が痛んだ。

「そんな言い方をするな。奴はお前さんにルドルフになって欲しくないんだ。お前さんの力量を認めているからな。だから心配している」
「……」
「本当だぞ、今回の首脳会談が上手く行ったのもお前さんの力量によるものだ。ようやく戦争が終わる。ヤンはその事を喜んでいるよ」
納得した様な表情ではない、しかしさっきまで有った笑みは消えていた。多少は効果が有ったようだ。話を変えた方が良いだろう。

「それにしても帝国は良くこちらの言い分を受け入れたな」
「負けていませんからね、受け入れやすいんです」
妙な事を言うな、負けていない? 俺が疑問に思っているとヴァレンシュタインがクスッと笑った。

「どういう意味だ、帝国が負けていないとは。あの首脳会談は同盟の負けだとでも?」
「そうじゃありません。同盟も帝国も負けていないんです」
「……敗者は居なかった?」
「いいえ、居ますよ」
「……同盟も帝国も負けていない、敗者は居る……、フ
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