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乱世の確率事象改変
囚われの姫は何想う
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 袁術軍には才豊かな者が少ない。理由としては大きく二つある。

 一つは袁家の権力争いに敗れた者達が寄り集まってくる掃き溜め扱い故に。飛び抜けた人材では無くともそこそこ優秀な者達が集う本拠地南皮では、蠱毒のように競わせ、選りすぐった者だけを登用している為に、負けた者達は黒い感情を携えつつ自分の才を評価してもらいやすいと考え、我欲を持って自然と集まる。

 一つは袁術の家系に所縁のある者達がいるから。家柄に対して忠義を貫く人というのはこの時代には溢れていた。ただ、有力な若者は南皮に行く、もしくは引き抜かれてしまうので年寄りばかりというのが頭を悩ませる問題。

 このように欲と忠義の混ざり合う袁術軍にて、美羽が全く仕事をしない為に、全てを纏める頂点に位置しているのはただ一人。張勲――――真名を七乃という年若い女性である。
 一日中でも美羽を甘やかしている姿が日常茶飯事であるのに、仕事を持って行けばいつの間にか終わっているという異常事態には誰しもが首を傾げていた。
 仕事をいつしてるのかと誰かが聞けば、

「え〜? あなたは乙女の秘密を聞いちゃうような人なんですかぁ?」

 と、なんとも間の抜けたニコニコ笑顔ではぐらかされ、一応終わらせているので深くは追及出来ず。
 もう一つ、彼女に深く聞けない事情もあった。
 彼女の部下である紀霊――――真名を利九(りく)は、仕事熱心にして真面目を絵に描いたような人物なのだが、その彼女が七乃には何も言わない。それが余計に、他の者に疑問を持たせつつも納得させる理由であった。
 加えて文官も武官も、美羽の元ではある程度自由に動けるので愚痴を零す事も無い。
 裏を返すと、袁術軍に於いて七乃の真価を知っている者はたった一人、利九だけであった。
 彼女は前述のどちらでも無く、普通に武官として志願した所を七乃が引き上げた唯一の将であり、美羽を除けば七乃に最も近しい存在。
 そんな利九は七乃に全幅の信を置いている。仕事でも、私事にしても、美羽の事にしても、全てに於いて、である。
 何故ならば、彼女は七乃と同じく……業深き女であったが故に。



「さあ、次はこの書簡を終わらせましょう」

 燦々と日輪が輝く日中、ビシリと張りのある声が城の一室によく響く。
 粟色に輝く色素の薄いほぼ茶髪の黒髪を流し、腰に手を当てて目の前の少女をじっと見据える、見た目が二十中頃を過ぎたくらいの女性。きつめの目鼻立ちから発せられる声は教育熱心な年若い母親のよう。
 彼女こそ、袁術軍の最優秀な将にして七乃と同じ業……幼女趣味を背負う紀霊である。
 目の前で泣きそうになりながら、桃色の髪を二つに括った少女は、机の上に差し出された書簡を叩きつけながら堪らず声を上げた。

「朝からずっと机に向かいっぱなしじゃない
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