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【短編集】現実だってファンタジー
俺に可愛い幼馴染がいるとでも思っていたのか? 後編
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滞空時間は、早いようでゆっくりに思えた。体感時間というのは意識していない時に限ってスローモーションのように遅い。だが、落ちるだけの俺には・・・いや俺達にとっては、意味のないことだった。不思議と高所から落下するという恐怖も怪我に対する忌避も感じず、代わりに感じたのはたった今抱きしめている一人の少女の安否だけ。

そして、衝撃が襲う。

「かはッ!?」
「きゃっ・・・!」

体中に鈍い痛みが奔り、肺から空気が吐き出される。脳から内臓から、あらゆる体内の器官が重力落下に従う様に揺さぶられ、一瞬意識が遠くなる。続いて、衝撃を酸素不足と勘違いした脳が肺に酸素補給を促し、呼吸が激しく乱れる。
節々が痛い。骨は折れてないのだろうか?背中から落ちたらしいが、頭を強打することだけは避けられたようだ。ただ、背中を中心にじわり何かが俺を濡らしている。それだけが嫌にリアリティを持って感じられる。

いりこは―――

「・・・ひっく、ぐずっ・・・なんでっ・・・」

俺は綺麗に下敷きになったようだ。いりこはぐずっているが、それだけらしい。自分だけダメージを負ったという不条理も忘れ、ほっと息を吐く。そもそも、せっかく跳びだしてまで庇おうとしたんだ。これで怪我をさせては本格的に俺の行動が無意味になっている所だ。

いりこのしゃくりあげる震えが俺の身体を揺らす。何か言いたかったが、息切れがなかなか収まらなかった。体もふらふらいして力が入らない。暫く俺は、青い空だけを眺めた。余計な手間を取らせるなとここで吐き捨ててやるのが俺のキャラだが、今は素直にいりこが無事で良かったと思えてしまう。

―――それもいいか。俺が良かったと感じたんだ、それはきっと正しい。この得体のしれない自称幼馴染が無事であることを素直に祝福しよう。

俺の呼吸も大分納まってきた。漸く冷静さを取り戻して周りを見る。
俺達が落下した先には、偶然にも体育の授業で使う高跳びのマットがあったようだ。マットと言っても既に破れて廃棄する予定だったもので、雨ざらしにされていたため汚れていた。俺といりこを何とか受け止めるだけの弾力はあったようだが、上に溜まっていた雨水をまともに被って俺の制服は砂埃交じりの水に汚れてしまった。だが、怪我はない。運が良かったなと思う。

やがて、涙が納まったいりこのか細い声が耳に届いた。

「私・・・私、本当はずっと怖かった」
「・・・お前も怖がることがあんのか。新発見だ」
「怖いよ。本当は、ずっとさざめ君に鬱陶しい女だって思われてないか、不安だらけだった」
「・・・不安なのにあの活発さか。いや、空元気だったわけか?」
「うん・・・・・・だって、さざめ君に他に好きな子がいたら、私ってただ付き纏って邪魔してるだけじゃない。さざめ君と一緒に居たくていろい
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