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最終回
第五章
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第五章

「絶対にだ」
「もう何もするな」
「さもなければ死ね」
「御前等何時までそんなこと言ってるんだ?」
「それに奇麗な最終回だっただろ」
「なあ」
 そんな彼等に対してもう一方は冷静さを保っていた。
「あれでな」
「よかったじゃないか」
「いや、駄目だ」
「あんなのは駄目だ」
 しかし予想通りと言うべきかもう一方はこうだった。
「あの作品の最終回じゃないんだよ」
「絶対にな」
「おい、じゃあどんなのがいいんだよ」
「どんな最終回だったらいいんだよ」
 一方は思わず問い返した。
「あれで駄目だったらな」
「どんなのがいいんだよ」
 しかしそう言われても具体的な返答はなかった。ただ感情的に滅茶苦茶な反論があるだけだった。この騒動が何年も続いたのだから恐ろしい。
 そしてだ。その騒動の元はだ。程なく左遷された。
 そうして社内の史料編纂質でだ。一人吼えていた。
「俺はこのままでは終わらないぞ!」
 こう叫んでいた。
「必ずだ!もう一度作品を!」
「じゃあそれでだね」
 同じ部屋の中にいた定年間際のベテラン社員が彼に問うた。この社員は長い間勤めていて定年前に最後の仕事をここでしているのだ。
「どんな作品を作るんだい?」
「決まってますよ」
 こう返す彼だった。
「あの作品よりもずっとですね」
「ずっと?」
「そう、ずっとです」
 まずはここからだった。
「ずっと素晴しい作品を作りますよ」
「その意気込みやよし」
 ベテラン社員もそれはよしとした。
 だが、だ。彼にさらに問うのだった。
「それでだけれど」
「はい、それで」
「予算や時間はどうするんだい?」
 作品を作るうえで最も根本的な問題点である。
「それは」
「そんなものですか」
 彼はいきなりこう返した。
「そんな些細なことですか」
「些細かい?」
「はい、些細です」
 その作品を作るうえで最も考えなくてはならないこの二つをばっさりと切り捨てる。その二つが彼のアキレス腱になっていてもである。
「何でもないじゃないですか」
「それじゃあ気にしないのかい」
「予算?時間?納期?」
 納期まで話に出す。
「そんなものはですね」
「うん、そんなものは」
「作品をつまらなくする為の縛りですよ」
 邪魔でしかないというのである。
「予算も時間もたっぷりかけてこそいい作品ができるんですよ」
「そう思うのかい」
「作品は芸術です」
 一理はあった。
「芸術にお金や時間を惜しんでは駄目ですよ」
「だからかい」
「完璧でないと駄目なんですよ。そしてその為にはです」
「予算や時間はどうでもいいんだね」
「そんなものにこだわっていたら何にもなりません」
 この考えを変えようともしない。
「だ
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